J名門下部組織で「明確に指摘された」 ポテンシャル十分…大型レフティーDFが持つ強い覚悟

日大藤沢2年生DF菱沼優作
夏を超えて強くなる―。
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これから始まるリーグ後半戦、そしてその先の全国高校サッカー選手権予選、日本クラブユース選手権などを見据えて、各チームは遠征を繰り返しながらチームと個人の強化を行なっている。ここでは『成長の夏』を誓う高校生たちにスポットを当てていきたい。
今回は8月6日から10日にかけて石川県で開催された和倉ユースサッカー大会において準優勝を果たした日大藤沢の2年生サイドバック・菱沼優作について。183cmのサイズとスピード、対人の強さを活かした頭脳的な守備を持つポテンシャル十分のレフティーは、強い覚悟で和倉ユースのピッチに立っていた―。
和倉ユースにおいて、彼は左CBと左サイドバックのポジションでスタメンを掴んだ。特に決勝トーナメントに入ってからはサイドバックとして、残り20mでの守備強度と質の高さ、攻撃に切り替わった際の果敢な縦突破から正確な左足のクロスを見せ、攻守に大きなアクセントを生み出した。
「自分のところでは絶対にやらせない。チャンスをもらえているからこそ、その気持ちで守らないとスタメンは掴み取れないと思っています」
こう語るのには理由があった。菱沼はこの和倉ユースまでスタメンの座を掴みきれていなかった。インターハイ予選では出場機会が得られず、今季初昇格をしたプリンスリーグ関東2部においても第3節のFC町田ゼルビアユース戦でスタメン出場を果たすも、「何もできなかった」と悔やんだように、そこからはスタメンのチャンスは訪れなかった。
だが、大型のレフティーDFという希少価値を自身の努力でコツコツと磨き続けたことで、この和倉ユースからついにチャンスが巡ってきた。菱沼が日大藤沢に入って磨き続けてきたのは、ボールをもらう前のオフ・ザ・ボールの動きと、サイドから全体を見渡してどこにボールを運ぶべきか、どこにパスやクロスをつけるべきかを事前に把握しておくことだった。
「中学までの僕はボールをもらってからなんとかしようとしてしまっていました。準備も予測も不十分な状態でボールを受けるので、受けてからのプレーのスピード感が遅かったんです」
神奈川県出身で中学時代は横浜F・マリノスジュニアユース追浜でプレーをしていたが、その部分を指摘されて、中学3年生の夏前にスタメンの座を奪われ、結果としてユース昇格は叶わなかった。
「自分でも薄々感じていた部分を明確に指摘されて、悔しかったのですが、そこではっきりと自分の課題として気づくことができました。今思うと、本当に技術も足りなかったし、サイズがあったけど球際の競り合いも苦手だったし、課題に向き合う意識が足りなかった。だからこそ、高校でそこを改善してもっと成長しないといけないと思えたんです」
複数の高校の練習参加を経て、「周りの技術レベルが高くて、狭い局面を打開する力も身につくと思った」と一番フィーリングが合った日大藤沢に進学を決めた。さらに、「高校に入ってから意識を変えるでは遅いと思った」と追浜での半年間はパスコントロールやファーストタッチ、ヘディングや1対1など、居残り練習を通じて重点的に課題解消に取り組んだ。
高校に入ってからもその日常を続けた。ボールを受ける前に全体を見てポジション取りをし、ファーストタッチで選択肢を広げる。守備では一歩の速度と質を高め、時には身体を投げ出してでもブロックに入るなど、気迫で相手を圧倒するプレーにもこだわった。
自ら選んだ環境で、過去の評価をひっくり返す挑戦の日々の中で、2年目の夏についに巡ってきた大きなチャンス。彼は全身全霊でプレーし、結果と自信を掴み取った。
「掴んだポジションは絶対に離したくない。ここからがスタートだと思っています」
183cmの大型レフティーサイドバック・CBというとてつもなく大きなポテンシャルを持つ彼にとって、この夏は単なるひと夏ではない。今後の人生を大きく変えるターニングポイントとするべく、誰も奪えない強烈な握力で掴み続けるために更なる努力を続けることを誓った、決意の夏となる。
「ここからがスタートだと思います」
その言葉通り、まだ何かを成し遂げたわけではない。ただ、かつて自分の課題から目を背け、居場所を失った少年の姿はもうそこにはいない。ようやく掴みかけた自分の居場所を二度と手放さないために。菱沼にとって、自らの未来をその手で掴みにいく夏が始まりを迎えている。
(安藤隆人 / Takahito Ando)
安藤隆人
あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』、新刊は『ともに歩き出す サッカーと家族と新しい日常』(ともに徳間書店)。講演家としても全国を回っている。元・名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター(2022年〜2026年4月)、現・國學院大學体育連合会蹴球部コーチ。






















