不滅の最多記録「1試合5得点」 異例のW杯得点王の伝説…まさかの結末「GL敗退」

ロシア代表のオレグ・サレンコ【写真:アフロ】
ロシア代表のオレグ・サレンコ【写真:アフロ】

覚醒したロシアの点取り屋 怒涛のゴールラッシュで新記録樹立

 1930年の創設から、これまで数々のドラマを生み出してきたFIFAワールドカップ(W杯)。4年に一度の祭典で起きた印象的な出来事を振り返る「W杯事件簿」。今回は、1994年米国大会で一人のロシア人ストライカーが打ち立てた、いまだ誰にも破られていない驚異のゴール記録と、それにまつわる知られざるエピソードにスポットライトを当てる。

 舞台となったのは、グループリーグB組最終戦のロシア対カメルーン。ともに2連敗を喫し、すでにグループ突破が絶望的となっていた“消化試合”の空気を一変させたのが、ロシア代表FWオレグ・サレンコだった。

 前半15分に先制点を奪うと、同41分に追加点、そして44分にはPKで立て続けにネットを揺らし、なんと前半だけでハットトリックを達成。しかし、サレンコのゴールショーはこれだけでは終わらない。後半27分、そして同30分にもカメルーン守備陣を打ち破り、なんと5ゴールの大爆発だった。

 一人の選手による1試合5得点は、W杯の長い歴史において他に類を見ない究極の固め打ちであり、現在に至るまで誰一人として到達していない不滅の最多記録となっている。

 第2戦のスウェーデン戦でも1ゴールを決めていたサレンコは、このカメルーン戦での大爆発により大会通算得点を「6」へと一気に伸ばした。しかし、ロシア代表自体は1勝2敗でGL敗退となり、早々に米国を去ることになる。

 通常、得点王(ゴールデンブーツ)のタイトルは、試合数の多い上位進出国のエースたちが争うもの。しかしこの大会では、ベスト4へ躍進したブルガリアの伝説的FWフリスト・ストイチコフが決勝トーナメントで怒涛の4ゴールを重ねたものの、サレンコの記録を追い抜くことはできず「6ゴール」で並んでフィニッシュ。

 その結果、サレンコはストイチコフと並んで大会得点王に輝き、「決勝トーナメントで1分もプレーせずに得点王を獲得したW杯史上唯一の選手」という、極めて異例の称号を手にしたのである。

 全く異なる軌跡を描いてゴールデンブーツを分け合った2人のストライカー。のちにサレンコは、当時のFIFAのインタビューなどで「あのような偉大な選手と賞を分かち合えたことは名誉だった」と語っている。

 大会後、ストイチコフは名門バルセロナで、サレンコはバレンシアでプレーし、スペインリーグの舞台で何度も顔を合わせることになる。その際、2人は互いの得点王記録について冗談交じりに“粋な煽り合い”を見せていたという。

 ストイチコフが「俺がもう1点取らなかったことに感謝しろよ」と笑いながらプレッシャーをかければ、サレンコも負けじと「カメルーン戦で俺が(味方の)ドミトリーにパスなんか出さず、自分で6点目を決めていなかったことに感謝するんだな!」とジョークで応戦していたのだ。

 早々に大会を去りながらも歴史に名を刻んだサレンコと、母国をベスト4へ導いたストイチコフ。W杯の舞台が結びつけた2人の点取り屋のエピソードは、不滅の記録とともに今も語り継がれている。

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