佐野海舟に感じた”物足りなさ” チュニジア戦で本領発揮へ…攻略への鍵「厳しい部分がある」

日本代表の佐野海舟【写真:ロイター】
日本代表の佐野海舟【写真:ロイター】

チュニジア戦でポイントとなるダブルボランチ

 オランダ戦の佐野海舟はどこか大人しめに見えた。初戦となったオランダ戦、2-2の引き分けという結果の中で、中盤の底を担った佐野は鎌田大地とともに守備ブロックを維持しながら、大崩れしない安定感を示した。ただ、本人のパフォーマンス自体を考えると、決して満足できるものではなかった。それは「個人としてはもっとやれる感覚が強い」と本人も認めるところ。チームファーストを貫きながらも、自分の良さを出しきれなかったという物足りなさが、言葉の端に滲んだ。

 もちろんある程度、相手にボールを持たれることを前提とした守備ラインで対峙したことや、相手のラインデルスとフラーフェンベルフがボランチの脇の位置からあまり動かなかったことも要素として挙げられる。

 特に後者に関しては対戦相手の対策の一環として狙われた色が強く、「中途半端な位置を取られると行きづらい部分があるので、そこは相手の位置によって瞬時にコミュニケーションを取ってやらないといけない。はっきりさせないといけない場面もある」と振り返るように、佐野の得意とする前向きのボール奪取が表現される場面は少なかった。

 もともとビルドアップへの関与は鎌田が多めに担う役割分担の中で、佐野が持ち味とするのは前向きのボール奪取と潰しの鋭さだ。オランダ戦では安定感こそ示したが、その鋭さが表現される場面は少なく、前半に一度インターセプトのような形でボールを奪った場面があったが、貢献度は普段ほど絶大なものではなかった。

 オランダ戦を通して感じたのは、やはり今回のW杯において佐野のパフォーマンスが大きな意味を持つということ。遠藤航の離脱によってボランチの一角としての中心度は自ずと上がり、鎌田という絶対的な存在を支える役割はより重くなった。ブンデスリーガで見せているような鋭い出足と推進力を考えれば、オランダ戦はまだバランスを優先した大人しい印象が強く、本来の佐野はもっと前面に出てこられるはずだ。だからこそ、鎌田の存在感を生かしながら、攻守にその効力を倍増させるような佐野のプレーが必要になってくる。

 GS突破に向けて重要な第2戦のチュニジア戦も鎌田とのコンビが予想される中、佐野はオランダ戦とは全く違う展開になることを想定しながら、より意識すべきポイントを挙げた。

「セカンドボールを拾ったり、リスク管理のところでカウンターをさせなかったりは必要になってくるかなと思います。また、自分もボールを受けて、チームの流れを作っていければいいなと思います」

 その根底にあるのは、個の力よりも連動を重視する感覚だ。オランダ戦でも鎌田との関係が機能した場面はあり、試合を重ねるごとにその精度は上がっている。それでも「自分がもっとできることはたくさんあると思いますし、まだまだよくできると思っています」と言う。自己評価は常に厳しい。

「自分たちのいい部分というのは横とのつながりだと思っている。一人で対応できる力もありますけど、横の選手としっかりつながって、全員がつながっている状況が自分たちが一番いい時だと思う。それはどの試合になっても一緒かなと思います」

 その「つながり」が攻撃でどう機能するか。チュニジアがローブロックを敷いてくる可能性が高い中、佐野は「縦につけるパス」をスイッチとして強調した。

「横に揺さぶるだけだと厳しい部分があるので、やっぱり縦につけるパスがスイッチになると思います。そこはしっかりチームとして狙っていければいいかなと思います」

 引いた相手に対して横パスを回し続けるだけでは、そう簡単にブロックは崩れない。オランダ戦の経験を踏まえながら、より鎌田との関係でテンポを作っていく。監督交代というイレギュラーが生じたチュニジアに対しても、「今まで自分たちがやってきたことはブレないと思いますし、それをしっかり出すだけ」だ。

 W杯デビューとなる初戦を経て、「ワクワクもあるし、責任感などいろいろなものを感じている」と言葉にした佐野。チュニジア戦、佐野海舟がさらなる鋭さを発揮する舞台となるのはここだ。

(林 遼平 / Ryohei Hayashi)



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林 遼平

はやし・りょうへい/1987年、埼玉県生まれ。東日本大震災を機に「あとで後悔するならやりたいことはやっておこう」と、憧れだったロンドンへ語学留学。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることになった。帰国後、サッカー専門新聞『EL GOLAZO』の川崎フロンターレ、湘南ベルマーレ、東京ヴェルディ担当を歴任。現在はフリーランスとして『Number Web』や『GOAL』などに寄稿している。

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