本田圭佑に「僕が出る試合の解説を」 9年前にミランで”対決”…19歳Jリーガーの意外な接点

仙台の南創太【写真:Getty Images】
仙台の南創太【写真:Getty Images】

仙台の19歳MF南創太

 ベガルタ仙台がJ2およびJ3の計40チームの頂点に立った。カターレ富山をPK戦の末に破った6日の百年構想リーグ・プレーオフラウンド第2戦。5番手の大役を担い、勝利を決めるPKを豪快に決めた19歳、MF南創太は地上波で生放送される日本代表戦で解説を務める本田圭佑へ特別な思いを抱いている。(取材・文=藤江直人)

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 4年に一度開催されるサッカーのワールドカップへ。4か月あまりにおよんだ百年構想リーグを戦い終えたJリーガーたちも一ファンに戻って、アメリカ、カナダ、メキシコで繰り広げられる戦いを楽しんでいる。

 日本代表が臨むオランダ代表とのグループステージ初戦、そしてスウェーデン代表との同最終戦は地上波のNHK総合で生中継。約3年半ぶりに解説を務める元日本代表の本田圭佑が大きな注目を集めている。

 本田はさらにチュニジア代表との第2戦を生中継する、同じく地上波の日本テレビで「日本戦スペシャルアンバサダー」も拝命。インターネットテレビ「ABEMA」の解説を務めた前回カタール大会で大きな人気を呼んだ、関西弁で繰り出される率直かつ鋭い“本田節”へ、憧憬の思いを募らせる19歳のJリーガーがいる。

「ワールドカップの解説も務めるので、いつか僕が出る試合の解説もしていただけるような選手になります」

 声を弾ませたのは、宮崎県の強豪・日章学園高校からベガルタ仙台に加入して2年目の南創太。身長171cm・体重62kgの左利きのアタッカーは、小学校4年生だった9年前に本田と意外な接点をもっている。

 舞台は2017年3月にBS朝日で放送された「じゅんいちダビッドソンの世界ドリームツアーズ」。視聴者からかなえたい夢が募集されたなかで、当時は生まれ育った大分市のブルーウイングFCでプレーしていた南は「ACミランのユニフォームを着て、選手とドリブル対決がしたい」と応募。高倍率のオーディションを突破した。

 そして、じゅんいちダビッドソンのエスコートでミランの練習場ミラネッロを訪ねる。背中に「SOTA」の名前と本田と同じ「10番」が記されたミランのユニフォームをチームから贈られ、アップをしているときだった。

 おもむろに姿を現した憧れの本田に自己紹介した南は、さらに臆さずに「ドリブル対決がしたい」と切り出す。本田も「俺と?じゃあ、さっそくやろう」と快諾し、攻守を入れ替えての勝負がはじまった。

 攻めてはさすがに本田を抜けず、守っては止められない南に対して、本田は「できるだけスピードを上げて(相手と)入れ違うように」や「ディフェンダーの重心を見ながら」とさまざまなアドバイスを送ってくれた。

 日本代表でも主軸を担っていた、同じ左利きのレジェンドの金言はいまも南のなかで強く脈打っている。右サイドから得意のドリブルでカットインし、得意の左足から先制ゴールとなるゴラッソを決めて仙台を勝利に導いた5月16日の湘南ベルマーレ戦後。本気で1対1に挑んでくれた本田へ、こんな言葉を介して感謝している。

「今日だけじゃなくて、自分のサッカー人生のなかで少しずつ糧になっていると思っています」

 ルーキーイヤーだった昨シーズンの南は出場わずか1試合。途中出場の9分間に終わった。迎えたJ2・J3百年構想リーグでは地域リーグラウンドとプレーオフラウンドで計14試合、414分のプレーで2ゴールをあげた。

 仙台もEAST-Aグループを首位で通過。EAST-Bグループ首位のヴァンフォーレ甲府とのプレーオフラウンド第1戦を1-0で制し、6日には優勝をかけてWEST-Aグループ首位のカターレ富山と対峙した。

 前半30分に仙台が中田有祐のゴールで先制。ホームのユアテックスタジアム仙台を熱狂させた一戦は、終了間際の後半アディショナルタイム4分に、退場者を出して数的不利に陥っていた富山が同点に追いつく。

 延長戦でも決着がつかず、雌雄を決するPK戦へ突入する直前。南の成長を示す場面が最後に訪れた。挙手でキッカーを募った森山佳郎監督に対して、無言の状況が続いたなかで1番手に立候補したのが南だった。

「僕はちょっと離れたところで水を飲んでいて、円陣のなかに入ったのが遅かったんですけど、みんな無言だったので『はいっ』と手を挙げました。監督から『自信があるやつから』と言われていたので」

 このとき、過去5度のPK戦ですべて1番手を務めてきたキャプテンの菅田真啓が、PK戦のエンドなどを決めるコイントスに臨んでいたために円陣にいなかった。そして、戻ってくるや定位置の1番手に決まった。

 しかも2番手に同期入団した20歳の安野匠が、3番手に五十嵐聖己(せな)が、4番手にはアカデミー出身のルーキー、19歳の古屋歩夢が立候補してすでに決まっていた。その後の展開を南が打ち明ける。

「蹴りたい順番がなかったので『もうどこでもいいです』と言ったら、自動的に5番になりました」

 しかも仙台の先蹴りではじまったPK戦は、天国と地獄を隔てる状況で5番手に回ってきた。

 2番手の安野のPKが止められ、富山の3番手・松岡大智のPKを守護神・林彰洋がスーパーセーブで止め返す。これでプレッシャーがかかったのか。富山の4番手・實藤友紀のPKはゴールの枠を外れてしまった。

「緊張した分だけ記憶が飛んでしまったというか。自分がどのコースへ蹴ったのかも、相手のゴールキーパーがどちらへ飛んだのかもまったく覚えていなくて。それくらいアドレナリンが出ていたんだと思います。サッカー人生でこれ以上はないプレッシャーのなかで自分自身に勝てたので、いまも最高に気持ちがいいです」

 苦笑いしながら振り返った南の左足から放たれた一撃は、自身から見て右隅へ、しかも一番上へ突き刺さった。コースに反応した富山の守護神・平尾駿輝もなす術がなかった。仙台の優勝を決めた南が続ける。

「もっといい選手になれる、というのは自分自身が一番よくわかっています。リーグ戦で2ゴールを決めましたけど、もっとゴールを決められると思っていたし、常に満足しない自分になっていたのが本当にうれしかった。新シーズンの開幕は8月になりますけど、もっともっとレベルアップした姿をファン・サポーターに見せたい」

 本田を前にして「将来はミランでプレーしたいです」と宣言した10歳の南は、本田が解説を務めるオランダ戦が米テキサス州ダラスで行われる日本時間15日に20歳になる。そしていまではごく近い将来に日本代表入りを果たして、本田が解説する目の前で、ワールドカップの舞台で活躍する夢を膨らませている。

(藤江直人 / Fujie Naoto)



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藤江直人

ふじえ・なおと/1964年、東京都渋谷区生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後に産経新聞社に入社。サンケイスポーツでJリーグ発足前後のサッカー、バルセロナ及びアトランタ両夏季五輪特派員、米ニューヨーク駐在員、角川書店と共同編集で出版されたスポーツ雑誌「Sports Yeah!」編集部勤務などを経て07年からフリーに転身。サッカーを中心に幅広くスポーツの取材を行っている。サッカーのワールドカップは22年のカタール大会を含めて4大会を取材した。

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