プロ2年でW杯へ「10秒ぐらい止まった」 クラブで苦悩も…得点王目指す代表キャップ”1”の若武者

トレーニングを行った塩貝健人【写真:増田美咲】
トレーニングを行った塩貝健人【写真:増田美咲】

塩貝健人は本大会での活躍を見据える

 森保一監督率いる日本代表が5月29日、千葉県内で北中米ワールドカップ(W杯)と31日のアイスランド戦に向けてトレーニングを行った。久保建英や田中碧ら10選手が合流したなか、初のW杯に挑むことになった塩貝健人が本大会への決意を語った。

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 ここからがスタートだ。

 今冬、塩貝はオランダのNECナイメヘンからドイツのヴォルフスブルクへ移籍した。それはすべて「W杯のため」。より高いレベルのリーグに身を置くこと、そこで結果を残すことで、W杯のメンバーに入る確率を上げようと決断した。オランダで結果を残し続けてW杯入りを目指すパターンもあったはずだ。それでも、少しでも可能性を高めるためにあえて険しい道を選択するのは塩貝らしい。

 結局、その決断が功を奏して英国遠征で代表初選出。初出場となったスコットランド戦では、途中出場からアシストを記録して鮮烈なデビューを飾った。このまま波に乗ってW杯への道を切り開く。それが思い描いていたビジョンだろう。

 しかし、英国遠征後の状況は想像以上に難しかった。残留争いの渦中にあったヴォルフスブルクにおいて、まだチームのやり方に馴染めていない塩貝をそう簡単に起用することはなく、新監督が就任してからはよりその色が濃くなった。光り輝いていたW杯への道が、少しずつ暗くなっていくのを感じていた。

「すごく難しい状況でした。チームでただ出れないだけだったら、まだ心持ちが違うと思うけど、W杯の発表が近づいていく中で、試合に出れないとどこをモチベーションにしていいのかもわからなかった。W杯のメンバーに入るためだけに頑張ってきたんで。その中で試合に出られなかったのはかなりきつかったです」

 ただ、どんな時でも諦めないのが塩貝だ。

「最後まで何があるかわかんない。バイエルン戦で一発活躍して、出場機会はないけど、自分は準備できているというのを示してやろうと思っていた。それが招集の理由になったかはわからないですけど、そこでしっかりアピールできたことは良かったかなと思ってます」

 5月15日、北中米ワールドカップ(W杯)に挑む日本代表メンバーが発表され、ヴォルフスブルクに所属する塩貝の名前が読み上げられた。代表キャップはわずかに「1」。2025年が終わるタイミングでは代表にすら呼ばれたことがなかった男が、最後の最後に切符を掴んだ。

「本当に選ばれた瞬間は実感が湧かなかったというか、よっしゃーとかもなく、10秒ぐらい止まっていました」

 だが、夢の舞台に立つことが最終目的地ではない。今大会の目標に「得点王」を掲げた21歳のストライカーは、何よりもここからが重要であることを理解している。

「この大会のために集まったメンバーなので、しっかりここでアピールして試合に出なければいけない。W杯は練習試合ではなく本番の公式戦なので、そういった意味では前回こそチャンスがあったけど、今回はあるとは限らない。自分のコンディションが良くなかったらチャンスも回ってこないと思う。そこでしっかり機会をもらえるように練習から監督だけではなく、選手たちにも自分がどういう選手なのかアピールしていけたらなと思います」

 今回の日本代表では、初めて長友佑都や吉田麻也といったレジェンドたちと一緒の舞台でプレーすることになる。「長い間、最前線で活躍してきた選手」と称する二人にどんなことを学びたいかと聞かれ、塩貝は自身の思いを口にした。

「僕はまだ一年か二年しかプロでやってないので、そういう意味では僕とは全然違うレベルの存在。そういった選手になっていくのが僕の目指す場所だと思う。何年も活躍できた理由が絶対にあると思うので、プライベートや私生活だったり、そういうところを聞いていければなと思います」

 31日、日本代表はアイスランドと国際親善試合に臨む。その試合の個人のテーマとして「(チームを)勝たせる」と言い切った塩貝。諦めの悪い男は、夢の舞台にたどり着いただけでは終わらない。最前線のポジション争いに割って入り、得点王を狙う。ここからがスタートだ、と塩貝は信じている。

(林 遼平 / Ryohei Hayashi)



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林 遼平

はやし・りょうへい/1987年、埼玉県生まれ。東日本大震災を機に「あとで後悔するならやりたいことはやっておこう」と、憧れだったロンドンへ語学留学。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることになった。帰国後、サッカー専門新聞『EL GOLAZO』の川崎フロンターレ、湘南ベルマーレ、東京ヴェルディ担当を歴任。現在はフリーランスとして『Number Web』や『GOAL』などに寄稿している。

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