識者が選ぶ「J1WESTベスト11」 MVPは稼働率高かった守備リーダー 最終ラインに陣取る「安心感」

百年構想リーグWESTのベストイレブンを選出した
5月30日と6月6日にプレーオフラウンドが行われる2026年J1百年構想リーグ。鹿島アントラーズが独走したEASTとは異なり、WESTは最後の最後まで大混戦となった。
【PR】ABEMA de DAZN、2/6開幕『明治安田Jリーグ百年構想リーグ』全試合生配信!毎節厳選6試合は無料!
WESTは清水エスパルス、名古屋グランパス、ガンバ大阪、ヴィッセル神戸、サンフレッチェ広島、アビスパ福岡の6チームが今季開幕前に指揮官を交代。その影響もあって、開幕前から予想がつかない特別大会になるという見方が根強かった。
実際にシーズンが始まってみると、昨季J1・3位に大躍進した京都サンガFCが8位に低迷。逆に昨季苦戦を強いられたC大阪や名古屋が上位に浮上するなど、意外な展開となった。
こうした中、最終的には神戸が勝ち点35を確保して首位通過。ミヒャエル・スキッベ監督は当初、前体制の4バックを踏襲していたが、AFCチャンピオンズリーグ・エリート(ACLE)との掛け持ちの厳しさ、ケガ人の問題もあって、やや停滞を強いられた。そこで大型連休の黒星先行を機に3バックへ移行。その効果もあって京都、福岡から勝ち点3を奪うことができ、トップを死守することができた。
2位のセレッソは石渡ネルソン、横山夢樹ら若手の台頭が光った。それに加えて、昨季最大の課題だった失点数が大幅に減少。それは新守護神・中村航輔の加入、畠中槙之介ら最終ラインの踏ん張りによるところが大きかったと言っていい。
3位の名古屋は百戦錬磨の名将・ペトロヴィッチ監督の攻撃的スタイルが着実に浸透。J1全20チーム最多の総得点31を記録。山岸祐也が10点、木村勇大が8点と得点ランキング上位に躍進した。だが、リーグ終盤の大量失点負けが影響し、総失点は28。これは20チーム中、下から3番目タイ。この状況を改善しなければ、名古屋が26-27シーズンにタイトルを取りに行くのは難しいだろう。
一方、4位に位置した広島はバルトシュ・ガウル監督体制で目指したボールをつなぐスタイルの浸透に時間がかかり、この順位になってしまった。が、内容的には尻上がりによくなっている印象だ。鈴木章斗のような有望な選手も少なくないだけに、この先はもう少しいい結果が望めそうだ。ACLEもない分、リーグ戦に集中できるメリットもあるため、夏からの新シーズンに期待したい。
ガンバの5位は明らかにACL2との過密日程によるところが大きかった。イェンス・ヴィッシング監督は「もう少しいい順位で終わりたかった」と不完全燃焼感を吐露したが、来季もACLE参戦があるだけに、選手層をより厚くしていくことが課題になってくるだろう。
そして下位グループに目を向けると、京都の低迷は想定外。曺貴裁監督が途中辞任することになり、後任が決まっていないのが気がかり。しかも彼らは来季ACLEに参戦する。一足先に指揮官交代に踏み切ったチームが多い中、いかにしてここから新たな組織を構築していくのか。そこが大いに気になるところだ。
こうした状況を踏まえながら、ベストイレブンを選んでみた。まずGKだが、ウエスト最少失点を演出したセレッソの中村航輔で決まりだろう。1年間の空白期間を強いられたことで、どこまで実戦で力を発揮できるのかという不安交じりの見方が多かったが、「結果で証明します」という言葉通り、本人は非常にいいパフォーマンスを披露。セレッソの壁として君臨した。そこは高く評価すべきだ。
続いて最終ラインだが、神戸の守備リーダーのマテウス・トゥーレルを筆頭に、セレッソの畠中、広島の塩谷司を選んだ。
順位的には神戸の選手からもう1人選んでもよかったが、山川哲史にしても、カエターノ、ンドカ・ボニフェイスにしても、出場試合数が少し足りなかった。彼らに比べて塩谷は全18試合に先発。ガウル監督の戦術を理解し、実践するキーマンとして奮闘した。そういう貢献度も踏まえて、大ベテランを称えるべく、3バックの一角に据えた。
続いてボランチだが、2位・セレッソのキャプテン・田中駿汰と3位・名古屋のダイナモ・稲垣祥を選出した。
田中駿汰は全18試合に出場し、4ゴールと攻守両面でフル稼働した。彼がいたからこそ、若い石渡や横山は伸び伸びと躍動できたのではないか。
稲垣にしても、彼が負傷離脱した直後のセレッソ戦の1-6、広島戦の2-4という結果を見ても分かる通り、どれだけ重要な存在かがよく分かったはずだ。「年齢に関係なく成長し続けたい」と本人は口癖のよう話しているが、本当に有言実行の男である。26日に「左足関節捻挫、三角骨障害」という負傷が正式発表され、復帰がいつになるか分からないが、2026-27シーズンには間に合うのではないか。まずはしっかりと回復に努めてほしいものである。
次にシャドウだが、本来インサイドハーフの井手口陽介(神戸)と名古屋でブレイクした木村を選んだ。
井手口は17試合出場1ゴールと扇原貴宏ら不在の中盤をしっかりと支え、チームをけん引した。大迫勇也、武藤嘉紀らもなかなかコンスタントで出られない中、井手口がタフに戦える状態をキープしたのは、スキッベ監督にとって心強い材料だったに違いない。
そして木村の方はミシャ監督のシャドウ起用に応えた。本人も「シャドウでいい味を出せてます」と前向きにコメントしていたが、最前線よりも前向きにゴールに向かっていける一列下の方が得点確率が上がるのだろう。彼が新境地を開拓したのは、チームにとってもポジティブ要素と言えるだろう。
サイドについては、左は百年構想リーグアシスト王の中山克広で文句なし。17試合出場という、プレー時間1430分という貢献度も名古屋の中では上位。ミシャ監督との出会いで彼はもう一段階飛躍しそうだ。
右に関してはかなり悩んだが、首位の神戸から選ぶべきだと判断し、酒井高徳にした。35歳という年齢もあり、百年構想リーグは12試合出場2ゴールとフル稼働とはいかなかったが、シーズン終盤にはサイドやボランチで力強くチームを支えていた。彼がキャプテンマークを巻いて闘争心を注入したからこそ、神戸は最後の最後でトップに立てた。この勢いで鹿島にも勝ってタイトルを取れれば最高のシナリオ。酒井高徳の卓越したリーダーシップに期待したいところだ。
最後にFWだが、やはり得点ランキングトップの山岸に敬意を表して選出した。今季は山岸が名古屋の攻撃陣を力強くけん引したのは確か。もともとアビスパ福岡時代からポテンシャルの高い選手ではあったが、30代になってここから大いに才能を開花させてくれれば理想的。2026-27シーズンに真価が問われそうだ。
こうした面々の中、MVPを決めるなら、首位・神戸で稼働率の高かったマテウス・トゥーレルではないか。プレータイムは井手口がトップで、彼にすべきか迷ったが、守備陣の編成が目まぐるしく変わる中、トゥーレルが最終ラインに陣取る安心感を考えて抜擢した。いずれにしても、神戸が鹿島に勝とうと思うなら、トゥーレルがいい守備を見せて、レオ・セアラ、鈴木優磨を軸とした攻撃陣を封じなければならない。その一挙手一投足を楽しみに待ちたいものである。

元川悦子
もとかわ・えつこ/1967年、長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに転身。サッカーの取材を始める。日本代表は97年から本格的に追い始め、練習は非公開でも通って選手のコメントを取り、アウェー戦もほぼ現地取材。ワールドカップは94年アメリカ大会から8回連続で現地へ赴いた。近年はほかのスポーツや経済界などで活躍する人物のドキュメンタリー取材も手掛ける。著書に「僕らがサッカーボーイズだった頃1~4」(カンゼン)など。



















