異例の欠場直訴「W杯を中心に」  欧州飛躍の日本代表DF、夢舞台へ覚悟「やっと実感が」

日本代表の渡辺剛【写真:徳原隆元】
日本代表の渡辺剛【写真:徳原隆元】

フェイエノールトで手にした確信

 森保一監督率いる日本代表が5月26日、千葉県内で北中米ワールドカップ(W杯)に向けて31日のアイスランド戦に向けてトレーニングを行った。オランダ1部フェイエノールトで1年間主力として活躍したDF渡辺剛が代表への思いを語った。

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「やっと実感が湧いてきた」

 渡辺はそう言って、静かに表情を緩めた。1年前にはメンバー入りすら怪しい時期もあった。それがいま、W杯本大会のメンバーとして報道陣の前に立っている。「本当に夢のような舞台」という飾り気のない言葉にこそ、むしろそれほどの場所に自分がいることへの、素直な驚きが滲んでいた。

 5年間のヨーロッパ生活が、この機会を引き寄せた。コルトレイク、ヘントで土台を固め、昨夏にフェイエノールトへ移籍。その決断がなければ「このチャンスはなかった」と言い切る。ビルドアップの質、守備での対人の強さが評価されてスタメンを勝ち取り、ノンストップで出場機会をつかみ続けた。「大きな怪我なくやれたことに感謝したい」という言葉の奥には、5年分の地道な積み重ねが透けて見える。

 試合勘と自信を保ちながらW杯を迎えるために、今シーズンの最終戦は監督に自ら申し出て戦線を離れた。「W杯を中心に考えたいと伝えた」。ロビン・ファン・ペルシー監督は快く受け入れ、背中を押してくれた。自分の状態管理に向き合い、必要な言葉を自分の口から届ける。そういう選手になった、ということでもある。

 本大会への準備に関しては「大きく変えるつもりはない」と言い切る。直前になって新しいことに手を出すより、積み上げてきたものを愚直に続ける。コンディションを整え、メンタルを整える。「とんでもないプレッシャーだとは思う。でも、それに耐えられる自信を持ってここまでやってきた」。その自信を忘れないことが、もう一つの準備だという。

 緊張しないための秘訣を問われると、「深く考えないこと」という答えが返ってきた。ここまでの代表戦でも不思議と物怖じしなかったのは、余計なことに思考を向けなかったからだ。もう一つ加えるなら、「自分のタスクに集中すること」。代表でやるべきことはすでにはっきりしている。だから、余計なことは考えない。

 吉田麻也の合流を「本当にポジティブな存在」と語る目には、尊敬と刺激が入り交じっていた。技術の高さ、無駄のない動き、本大会に合わせて仕上げてくる体。「負けられないという気持ちもある」と言いながら、W杯への姿勢を先輩の背中から学ぼうとしている。

 大舞台に臨む緊張感を持ちながら、深く考えすぎず、しかしやるべきことへの解像度は高く保つ。それが渡辺のやり方なのだ。夢の舞台への実感は、もう十分に湧いてきた。あとは、やることをやるだけだ。

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林 遼平

はやし・りょうへい/1987年、埼玉県生まれ。東日本大震災を機に「あとで後悔するならやりたいことはやっておこう」と、憧れだったロンドンへ語学留学。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることになった。帰国後、サッカー専門新聞『EL GOLAZO』の川崎フロンターレ、湘南ベルマーレ、東京ヴェルディ担当を歴任。現在はフリーランスとして『Number Web』や『GOAL』などに寄稿している。

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