鎖骨骨折も「間に合いそう」 日本代表に朗報も…鈴木唯人が語った「そんなことより…」

フライブルクの鈴木唯人【写真:アフロ】
フライブルクの鈴木唯人【写真:アフロ】

フライブルク所属の鈴木唯人「きょうはもう、チームが勝ったんで。そっちですよ」

 負傷離脱中の日本代表MF鈴木唯人が試合会場で元気な姿を見せて、チームメイトと一緒に喜び合っている。その姿がとても素敵だった。

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 所属するフライブルクがヨーロッパリーグ準決勝で対戦したポルトガルのブラガを2戦合計4-3で下した試合での話だ。クラブ史上初となる決勝進出を決めただけに試合終了のホイッスルが鳴った瞬間、スタジアムはお祭り騒ぎ。ゴール裏のファンもグラウンドに流れ込み、選手もスタッフも飛び跳ねて、抱き合って喜び、みんなで祝い合った。そのなかに笑顔で喜ぶ鈴木の姿もあったのだ。

 ミックスゾーンを通った鈴木に声をかけるとすぐに対応してくれた。負傷具合を尋ねると順調であることを明かし、「ワールドカップには間に合いそうです」ときっぱり。表情はとても明るい。回復の目処が立ってることをこちらが喜んでいると、鈴木はうなづいた後、「そんなことより……」と言って、こう語った。

「きょうはもう、チームが勝ったんで。そっちですよ」

 その言葉から、鈴木がどれほどフライブルクというクラブに溶け込んでいて、クラブを愛し、クラブに愛される存在になっていたかがとてもよくうかがえる。きょうの試合をどのように見ていたのだろう。そしてクラブが決勝進出を果たしたことをどう感じていたのかを尋ねると、明朗なトーンでこのように話し出す。

「久しぶりにスタンドから試合を見たんですけど、なんか色々感慨深いものがありましたね。やっぱり、戦ってる選手ってかっこいいんだなってシンプルに思った。あれだけ頑張れるチームメイトといつも日々やってることは本当に心強いなと思いました」

 この日、鈴木が欠場した穴を埋めたのは36歳ベテランのニコラス・へーフラーだった。実はこの試合が今季初スタメン。だが、全盛期を彷彿とさせる冷静さと高い戦術眼で試合の流れを読み、ゲームを見事にコントロールしてみせた。そして試合を決める2得点を挙げたのは33歳右SBのルーカス・キューブラー。気持ちをコントロールしながら激しく競り合いにいける特徴を期待してピッチに送られたベテランが、守備で相手を圧倒し、気迫のゴールでチームを決勝進出に導いた。

 2人とも10年以上クラブにいる選手だ。2部降格も経験している。歴史を築いてきた彼らが、若手選手とのポジション争いに真っ向勝負を挑み続け、出場機会がなくても文句を言うこともなく、虎視眈々と準備を続けてきた。そしてこの大舞台で最高のパフォーマンスでクラブを助けたのが素晴らしい。

 鈴木はそうしたクラブに来られたことを心から喜んでいた。

「出れなかったもどかしさは間違いなくあるんですけど、でもチームメイトを信じながら、僕は何も疑うことなく、きょうを迎えられた。勝つだろうなとも思ってました。すごいいいクラブに来れたなってもうすでに思えた1シーズンでした」

 そんなクラブで、そうしたチームメイトとともにプレーができているから、鈴木はどんな試合でも全力でチームのために戦い、走り、鼓舞して、ピッチに立ち続けていたのだ。

 チームタスクを遵守すること、どんなときでも気持ちを切らさずにハードワークをすること、そのための準備をいつも最大限しておくこと。ユリアン・シュースター監督はどんな選手にもそれを求めたし、そこに本気で取り組める選手が集まっているからフライブルクは強く、だからここで様々な選手が成長していく。堂安律もそうだった。

「コーチ陣も自分がそれをできると信頼して指導してくれていますし、自分もそれに応えたいと思っています。いい関係性でやれていると思います。チームと別に個人の成長も、レベルアップできているかな」

 そのように語っていたことがある。信頼で結ばれ、お互いに高めあう関係性。そのなかで鈴木は日々、取り組み続けている。シーズンが終盤に近付き、少しずつW杯のことが頭の中を占める割合が増えてくることがあったとしても、怪我をしないために少しセーブしようという気持ちは、鈴木のなかに全くなかった。

「怪我は不運で起きることもある。絶対はないですが、怪我をしないようなトレーニングは積み重ねているので、怪我に対して特別怖いという気持ちはないです」

 どんなに苦しい状況でも、足が重くなっても、鈴木は足を止めずに走りだす。その姿勢をシュースター監督は誰よりも高く評価している。

「疲れている状況でもあと一歩走って戦ってくれる。取り組み続けたことが成長につながっている。ゴールを狙う力もあるし、チームの大きな助けになっている」

 果たした移籍初年度でのヨーロッパリーグ決勝進出。移籍前に、そんな姿をイメージしていたのだろうか? ちょっと考えてからこう答えてくれた。

「積み重ねていけばそういうことも叶えられる可能性は僕たちにもあると思っていました。ただ思っていても叶えるのは相当難しいこと。だから僕たち選手たち(のがんばり)もそうですけど、今までクラブがどれだけ積み上げてきたかのほうが大きいのかなと思っています。みんなに本当におめでとうって言いたいですね」

 このクラブに来られたことを心から喜び、仲間とともに成長できたシーズンに感謝している。だからこそ、北アメリカの舞台に自分が立つことが、今自分がすべき最大のことだと思っている。

「ワールドカップで活躍してる姿を見せることがみんなへの恩返しになると思う」

 前回大会で堂安律がドイツ撃破のゴールを決めても、フライブルクのファンは我がクラブのエースを讃えていた。今大会でも鈴木が決定的なプレーで世界の舞台にその名を轟かすことを、フライブルクのファンは信じているのだ。

「戦ってる選手ってかっこいいんだなってシンプルに思った」

 鈴木はそう言っていた。ファンの思いも一緒だ。どんなときでも諦めずに戦う姿を見せる鈴木をみんな愛している。だから、負傷をしても諦めるはずがない。代表発表はまだだ。最後まで誰が選ばれるかはわからないだろう。でも数多くのファンが、その姿を日本代表でも披露してくれることを楽しみにしている。

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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)取得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなクラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国で精力的に取材。著書に『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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