現地解説者も大絶賛「背中で引っ張るリーダー」 史上初の“立役者”へ…鎌田大地が愛される理由

ECL決勝進出に大きく貢献した鎌田大地【写真:REX/アフロ】
ECL決勝進出に大きく貢献した鎌田大地【写真:REX/アフロ】

鎌田大地がクリスタル・パレスのECL決勝進出に貢献した

 5月7日、クリスタル・パレスに歴史的な一夜が訪れた。ホームでの準決勝2ndレグでシャフタール・ドネツクから勝利を収め(2—1)、ウクライナの強豪を退けて手にした、UEFAカンファレンスリーグ(ECL)決勝への切符(計5—2)。欧州主要大会での決勝進出は、120年に及ぶクラブ史上で初の出来事だ。

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 言わば、1924年からホームと呼ぶ、セルハースト・パーク史上最大のビッグゲームだった。敵のオウンゴールによる先制点は、相手GKにセーブを強いた、アダム・ウォートンのミドルがきっかけ。『BBCスポーツ』などの国内メディアでは、「ウォートンがいればこそ」とイングランド代表MFが称えられた。勝ち越しゴールを決めたのは、イスマイラ・サール。セネガル代表FWは、今季ECL決勝トーナメントで、5試合続けてネットを揺らしたことになる。

 しかしながら、前半25分の先制シーンは、鎌田大地による自陣内でのボール奪取に端を発している。日本代表MFは、後半7分の得点シーンにも絡んだ。自らボールを持って上がると、手も足もかけてきた相手選手に倒されながらもボールは奪われず、左ウイングバックのタイリック・ミッチェルによるアシストを可能にした。試合後のオリバー・グラスナー監督が、「ダブルボランチの2人は素晴らしい出来だった」と語ったように、スタメンでウォートンとコンビを組んだ鎌田の貢献度も高かった。

 指揮官は「2試合とも」と付け加えることも忘れていない。欧州での格で上回るシャフタールとのリターンマッチで、パレス・サポーターたちが、開始早々から「行くぞ、(決勝開催地)ライプツィヒに行くぞ」と歌うことができたのは、鎌田が敵地での1stレグ(3—1)でも仕事をしていればこそだった。

 2ndレグのキックオフ30分ほど前、スタジアムにはボン・ジョヴィの『Living on a Prayer』が流れた。サビの歌詞に「到達できるまで、あと半分」とある80年代のヒット曲は、意図的な選曲だったのだろう。「祈るような気持ちで希望を失わずに」と続くのだが、鎌田による1ゴール1アシストを含む初戦での活躍が、“後半戦”の90分間を前に、それこそ「胸いっぱいの希望」をパレス陣営に与えていたと言える。

 初戦でのパフォーマンスが、プレーヤー・オブ・ザ・マッチに相応しかったとすれば、この日の鎌田には「影の立役者」という表現が似合う。

「相手も本当に良い選手がいて、本当に良いチームだったので、ボールを持たれることは予想していた。そのなかで耐えて自分たちがチャンスに持っていけるシーンも多かったと思うので、狙ったことをしっかりできた試合だったと思う」

 そう試合を振り返った鎌田は、中盤中央に定着した今季、相手ディフェンスライン手前の“ポケット”に目敏くポジションを取り、ゴールを脅かそうとする姿を見せてきた。ECLプレーオフでズリニスキ・モスタル(ボスニア・ヘルツェゴビナ)を下した後には、自ら「チームとして、ボール持てる時は、そこに入っていってほしいという感じなので」と話していた。

 だが、先発メンバー中7人がブラジル人でもあるシャフタールは、ポゼッションにも長けた攻撃集団。必然的に、後方でのリスク管理に主眼を置く鎌田が、最初に身体を張ってボールを奪いにいくまでには、キックオフから30秒ほどしかかからなかった。

 同時に「チャンスがあるタイミングでは、前に入っていこうと思っていた」とも言う鎌田は、前半5分には、ルーズボールを拾ってドリブルで上がり、味方に預けた後も相手ボックス内へと足を進めていた。敵が立て続けに2本、シュートを放った直後、いきなりの劣勢を回避するプレーでもあった。続く3、4分の間に、カウンターで自陣深くからアタッキングサードまでドリブルで上がったかと思えば、中盤で敵を止めて起点になったパレスの18番は、ホーム観衆から拍手で称えられた。

 展開を読み、敵の動きを予期して守備に動く6番役は、お役御免でベンチに下がる後半43分まで、パスカットやインターセプトを繰り返した。交代4分前、センターサークル内から持ち上がり、一旦左サイドにはたいてのリターンから、相手ボックス内の逆サイドにクロスを届けた姿は、決勝進出への残り数分間を戦い抜くために、改めて気合いを入れろとチームに伝えるかのようでもあった。

現地解説者も「背中で引っ張るリーダー」と絶賛

 同夜の国内ではアストン・ビラがUEFAヨーロッパリーグ(EL)で、前日にはアーセナルがチャンピオンズリーグ(CL)で決勝進出を決めたように、ECLは欧州3番手の大会ではある。鎌田はすでにELとCLのピッチも経験済み。前者では、やはりグラスナー体制下だったフランクフルトでの4年前に、優勝トロフィーも手にしている。事実、ECL16強のAEKラルナカ(キプロス)戦1stレグ後には、「正直、個人的にはカンファレンスリーグに対してあまり魅力は感じない」と話していた。

 ただし、その場で「ファンにとっては凄く大事だと思いますし、実力的には勝っていかないとダメなチームだと思うので、しっかりやっていきたい」とも言った。ECLを戦う決意は、その前月に決勝トーナメント進出を決めた時点から、こう口にしていた。

「俗に格下と言われるようなチームとの対戦で、多くの人は勝って当たり前だとか、圧勝できるようなイメージがあると思いますけど、凄く難しい大会だなと思います。自分たちの目標は、優勝すること。パレスのファンは、いつも本当に良いサポートをしてくれているので、選手たちはプレーで、結果で返していかないといけない。本当に今年もタイトル獲得を狙えたらいい」

 ECLでの決勝進出だけでも有言実行と言えるのだから、鎌田は胸を張ってもよい。もちろん本人は、準決勝の2ndレグ終了直後、ベンチから、ダウンジャケットのポケットに手を入れてピッチ上へと歩き出していたように、相変わらず淡々としていた。それでも、日本の記者陣からタイトル獲得の意義を問われると、やはり自身も貢献した昨季のFAカップ初優勝に続き、それまでは主要タイトルとは縁がなかったパレスに、欧州でのトロフィーをもたらす機会を前に言っている。

「タイトルは選手にとって凄く大事だと思うし、特に、普段は獲れないようなチームで獲れれば、ファンの人たちからもより愛されると思うし、覚えてもらえると思うし、そういう面でも凄く大事なんじゃないかと思う」

 そんなパレス移籍2年目の鎌田は、シャフタール戦の記者席で目の前にいたラジオ局『トークスポーツ』の解説者に、「ファンの心を掴んでいる」と言われるまでになった。前半30分過ぎ、自らボールを運んでのカウンターが、ジャン=フィリップ・マテタのシュートで終わった後の解説だった。五分五分の競合いでボールをものにした後半15分過ぎには「背中で引っ張るリーダー」とも評された。

 パレスの今季は、国内外で5試合を残すのみ。残留がほぼ間違いないプレミアリーグでの4試合では、ことさらに欧州注力の度合いを強めるチームの主軸として、休養代わりのベンチスタートが増えても不思議ではない。

 シーズン最後の一戦となる5月27日のECL決勝は、今季限りの退任を決めているグラスナー監督のラストゲーム。そして、その指揮官に請われて移籍したクラブで、同じく契約満了の夏となる鎌田も同様との見方が強い。監督から「12人目」の同志まで、パレスの誰もが頼りにする中盤深部のプレーメイカーは、偉大な「ヒストリー・メイカー」の1人となって自らも有終の美を飾るべく、クラブ史上最大のビッグゲームに臨む。

(山中 忍 / Shinobu Yamanaka)



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山中 忍

やまなか・しのぶ/1966年生まれ。青山学院大学卒。94年に渡欧し、駐在員からフリーライターとなる。第二の故郷である西ロンドンのチェルシーをはじめ、サッカーの母国におけるピッチ内外での関心事を、時には自らの言葉で、時には訳文として綴る。英国スポーツ記者協会およびフットボールライター協会会員。著書に『川口能活 証』(文藝春秋)、『勝ち続ける男モウリーニョ』(カンゼン)、訳書に『夢と失望のスリーライオンズ』、『バルサ・コンプレックス』(ソル・メディア)などがある。

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