プロ注目も海外志向「CLが目標」 欧州で実感した「通用しない」…”新たな武器“を手に入れた逸材FW

桐蔭横浜大FWンワディケ・ウチェ・ブライアン世羅
4月に開幕した大学サッカーリーグ戦。プロ内定選手、これからプロを目指す選手、そして大学という新たなステージに移行した選手たちが全国各地で激闘を繰り広げる。
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ここでは大学サッカーのステージで躍動する選手たちをピックアップしていく。今回は関東大学サッカーリーグ1部第6節・筑波大vs桐蔭横浜大の一戦から。190cmのプロ注目の大型ストライカーであるンワディケ・ウチェ・ブライアン世羅は、中2日の連戦で疲労の色が残るチームの中でも、昨年よりもスケールアップしたプレーを披露した。一体どこがスケールアップしたのか。それを紐解いていきたい。
190cmの圧倒的なサイズ、そしてバネとフィジカルの強さ。彼の武器はどんなラフなボールでも収めて、そこから鋭い反転と爆発的な初速で一気に相手を置き去りにしたり、周りを使ってからゴール前に飛び込んで行ったりと、最前線で起点となってフィニッシュも正確なストライカーであることだ。
その存在感は圧倒的。だが、今年に入ってから彼のプレーを見ると、相変わらずの力強い存在感に加え、非常にスマートさを感じるようになった。
もともとポストプレーからラインブレイクするランニングの質、スピードは非常に高い選手だとは思っていたが、これまではあまり1発で裏抜けをするシーンが少なかった。それが相手DFラインの間で半身で立ったり、少しポジションをずらしてDFの視野から外れたりと立ち位置、DFラインとのアプローチに変化が見えるようになった。
筑波大戦でもロングボールや縦パスに相手を剥がして抜け出すなど、引き出しの多い動き出しと相手と駆け引きしていた姿が印象的だったが、試合後に話を聞くと今年に入って考え方の変化があったと口にした。
「自分の武器を見直す機会があったんです。昨年まではポストプレーメインになっていたというか、サイズとフィジカルにモノを言わせて収めて、そこからスピードを生かすという感じだったのですが、1月のU-23アジアカップで年代が上のアジアの強豪と戦って、その後にデンマークのクラブ(オールボーBK)の練習参加をしてみて、『フィジカルが強いだけじゃマッチアップをした選手からすると、僕は簡単に対応できる選手なんじゃないか』と思うようになったんです。要するに相手からすると『フィジカル勝負で勝てばいい』となる。それじゃあ世界では通用しないと思って、別のアプローチを考えるようになりました。それが裏抜けでした」
収めると見せかけて背後を取る。相手の視野から一度消えてから背後を取る。帰国後にトライするようになると、もともと初速のスピード、加速力はかなり高いものがあっただけに、それを相手より一歩早く、タイミングよく1発で発揮するだけで、相手を置き去りにできるようになった。この発見により、フィジカルトレーニングにも変化が訪れた。
「これまではウェイト中心でとにかく身体を強くしようと思って、昨年末から年始にかけて体重を3、4kgくらい増やしたのですが、裏抜けをやればやるほど『重いな』と思うようになったので、ウェイトトレーニングを辞めて、身体の可動域を広げたり、スムーズに重心移動をしたりと身体操作のところを意識したトレーニングに変えました。3月に体調不良になったこともあって、体重も4kgほど落ちていくと、加速力やターンのスピードが格段に上がっていて、『もっと裏抜けのバリエーションが増やせる』と思いましたね」
ただ自分の身体を鍛え上げることはやめた。「多分、僕の中でもっと早く自分の身体を高いレベルに置きたい、もっとレベルアップさせたいと焦っていたんだと思います」と口にしたように、もっと強くなる、もっとボールを収められる選手になると思いこみすぎてしまった故に、少し視野が狭くなっていたのかもしれない。
U-23アジアカップをきっかけに視野が広がり、焦りを捨ててもう一度自分を見つめ直すという時間にした結果、「僕と言えばポストプレーだと思い込んでしまっていた」と、勝手に作ってしまっていた自分に対する固定概念を崩すことができた。
フィジカル強化より機動力の強化。裏抜けのタイミング、角度、その前の立ち位置と駆け引き。身につけるべきことが一気に増えたことで、日々の練習や試合が『新しい発見の場』になっていく。成長しないはずがなかった。
「裏抜けを第一優先にしてプレーすることで、相手が警戒したり、すぐに寄ってこなかったりするので、そこでいつも通りのポストプレーができたり、ボールが来たらそのままターンしてドリブルで仕掛けたりと、もともと得意としていたプレーの質も上がってきたと感じています。僕の選択肢が増えたことで、相手にとって少しずつ怖い選手になれているのかなと思っています」
プレーの変化、トレーニングアプローチの変化は数字でもはっきり効果が現れた。1試合の中での最高時速が毎試合コンスタントに34km/hを出せるようになり、時には35km/hを計測することも増えた。35km/hというのはかなり高い数字で、世界でもトップレベルのスプリント力と言われている。
「自分のフィジカルと感覚がフィットするようになってきました。34km/hはそんなに力を入れなくても出るようになってきましたし、もっとスピードは上げられると感じています」
着実に進化を遂げている期待の大型ストライカー。当然のように多くのJクラブが彼に強い興味を抱いているが、彼はJリーグよりも海外志向が昔から強い。もともとインターナショナルスクールに通っているなど英語を話すことに問題がなく、小さい頃からずっとプレミアリーグやチャンピオンズリーグを見て、憧れ続けてきた。
「今もずっとヨーロッパのサッカーを見ていますし、チャンピオンズリーグの舞台でプレーすることが目標であることに変わりはありません。今はそのために自分の力を磨き続ける、努力し続けるのみだと思っています」
野心に燃える男はより怖い選手となるために己の牙を研ぎ澄ませる。スケールアップを果たしつつある彼の今後の動向から目が離せない。
安藤隆人
あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』、新刊は『ともに歩き出す サッカーと家族と新しい日常』(ともに徳間書店)。講演家としても全国を回っている。





















