横浜FMトップ昇格or筑波進学「かなり揺らいだ」 覚悟の決断も…「この選択でよかった」

トップ昇格を断り筑波大へ進んだMF加藤海輝
4月に開幕した大学サッカーリーグ戦。プロ内定選手、これからプロを目指す選手、そして大学という新たなステージに移行した選手たちが全国各地で激闘を繰り広げる。
【PR】ABEMA de DAZN、2/6開幕『明治安田Jリーグ百年構想リーグ』全試合生配信!毎節厳選6試合は無料!
ここでは大学サッカーのステージで躍動する選手たちをピックアップしていく。今回は関東大学サッカーリーグ1部第6節・筑波大vs桐蔭横浜大の一戦から。183cmの大型サイドハーフのルーキー・加藤海輝が目の覚めるようなミドルシュートを沈めて、関東大学サッカーリーグ1部初ゴールをマークした。
ゴールが生まれたのは1-0で迎えた後半37分のことだった。敵陣中盤での猛プレスでボールを奪ったこぼれ球に反応した加藤は、ペナルティーエリア外の位置から迷わず右足を一閃。地を這うような弾丸シュートがゴール右隅に突き刺さった。
「あの位置はいつもシュート練習で打っていた場所なんです。なので、自然と身体が動きました」
昨年の途中からずっと取り組んでいる自主トレでのシュート練習。ただシュートを打つだけではなく、ファーストタッチや角度、スイングのスピードやタイミングなどを常に考えながら、コツコツと打ち込んできたからこそ、咄嗟に身体が反応した。
「昨年の夏に自分の中で大きな気づきがあって、そこから考え方や意識が変わりました」
彼の言うこの時期は、将来の選択で大きく揺らいだ時期でもあった。横浜F・マリノスジュニアから横浜FMアカデミーで育ってきた彼は、高校3年生の時に大型ボランチとして期待をされていた。
6月の天皇杯2回戦のラインメール青森(JFL)戦で後半頭から投入されてトップデビューを飾ると、この試合でボランチの位置から積極的に前に出てワンタッチで攻撃に絡んだり、縦パスを通してからゴール前に入って行ったり、臆することなく思い切りの良いプレーを見せた。
このプレーを見ていた田島一樹コーチ(現・トップチームアシスタントコーチ)から、ユースに戻ってきた際に「物凄く良かった。どんどん前に出ることがチームのためになるのだから、もっと仕掛けろ。もっと自分自身に成長するんだという矢印を向けろ」と言われたという。
当時、加藤は中盤のバランサーとして深い位置でボールを受けて、散らしてリズムを作ることを武器にしていた。だが、「この一言でもっとボックスtoボックスを行き来するプレーが武器になるんじゃないかと気づくことができた」と口にしたように、そこから前に出てのスルーパスや、3人目の動きで飛び込んでのシュートなどを重点的に練習するようになった。
プレーの変化もあり、トップ昇格の可能性も膨らんでいく中で、「トップでやっていけるだけの力が自分にはあるのか」という疑問も同時に膨らんで行った。
7月の日本クラブユース選手権(以下・クラセン)。多くのJクラブユースの選手にとって、この大会の前がトップ昇格できるかどうかが決まる1つの『関門』となっていた。その時点でトップ昇格は告げられていなかったが故に、加藤は大学進学を視野に入れるようになった。クラセン前に複数の大学の練習に参加し、その中で筑波大に大きな魅力を感じた。
「選手全員の意識が高くて、かつレベルも高い。自分が求めたらあらゆる情報が得られて、選手としても、人間としても成長できる環境だと思ったんです。僕は性格的に自分から積極的に話に行くことが好きな人間なので、そう言う意味でも自分に適している環境だと思ったんです」
学群推薦の話が届いたことで、筑波大進学という道が開かれた。そして、クラセンの後にクラブスタッフに呼ばれると、そこでトップ昇格が告げられた。
「正直、上がれるとは思っていなかったので驚きました。やっぱりマリノスは僕にとって大事なクラブで、愛するクラブですし、ずっとトップ昇格を夢見てきていたので、それが現実になったことで、筑波大で固まっていた気持ちがかなり揺らぎました。クラセン前だったらトップ昇格を選んでいたと思うのですが、この時は筑波大にも凄く惹かれていたので、かなり迷いました」
悩んだ末に加藤が出した結論はトップ昇格せずに筑波大に進学することだった。
「両親は筑波大に行ってほしいという気持ちを持っていましたが、『最後は好きな方を選んでほしい』と言ってくれました。悩めば悩むほど、マリノスへの愛情が込み上げてくるのですが、最終的には自分の将来も考えて、筑波大学でしっかりと力を磨いて、即戦力で必要とされてマリノスに戻りたいという思いで決断を下しました」
苦しんだ夏を超えたことで、昨年は「一番成長できた1年」になった。そして覚悟を持って筑波大に進学すると、そのレベルの高さを肌で感じて、改めて「この選択でよかった」と思えたという。
「スピード感が一気に上がって、ボールを持ってからの余裕がなくなって焦ってしまうことが増えました。リーグ開幕直前の城西国際大(関東3部)との練習試合でボランチのスタメンで出場したのですが、そこでバックパスをトラップミスして相手にかっさらわれてピンチを招いてしまったんです。そこからかなり落ち込んでしまったのですが、周りの選手たちが励ましてくれたし、練習で『もう一度原点に戻ろう』とシュート練習を増やしたり、前に仕掛ける意識を高めたりしたことで、チャンスが巡ってきたんです」
関東1部・第3節の駒澤大学戦で途中出場からデビューを果たすと、桐蔭横浜大戦では右サイドハーフとして初スタメン。
「ボランチに限らず、どのポジションでもプレーしたいと思っていたので、サイドハーフと言われた時は『成長するチャンス』だと思えました」とポジティブに捉え、圧巻のゴールで期待に応えて見せた。
新天地で大きな一歩を踏み出した加藤に、改めて横浜FMへの想いを聞いた。
「マリノスは家みたいな感覚ですね。スタッフも熱くて、サポーターも本当に暖かくて、アカデミー出身者をいつまでも熱心に応援してくれる。高校時代もユースで点をとったりすると、下の年代のカテゴリーの指導者の人たちが『海輝、決めたな』と言っていたという話をよく聞きましたし、サポーターも活躍を見てくれている。本当に自分を気にかけてくれると思っているし、もうファミリーのような感覚なんです。だからこそ、筑波大に行ってもそう言ってもらえるように結果を出したいし、いろんなポジションを出来るようになって、『あいつをピッチに出しておけば大丈夫』と思われる選手になりたい。そして、マリノスから『戻って来ておいで』と言われる存在になりたい。それが大きなモチベーションです」
愛するファミリーの支えを受けて、スケールの大きなユーティリティーはコツコツと自分の土台を作り上げ始めている。この選択をより正解に変えていくために。
(安藤隆人 / Takahito Ando)
安藤隆人
あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』、新刊は『ともに歩き出す サッカーと家族と新しい日常』(ともに徳間書店)。講演家としても全国を回っている。





















