サウジ決戦の裏で…日本に「2週間、4人だけ」 チリ出身25歳が見た「嘘みたいな光景」

横浜FM戦に出場した町田のバスケス・バイロン【写真:Getty Images】
横浜FM戦に出場した町田のバスケス・バイロン【写真:Getty Images】

町田のバスケス・バイロン「この景色を見るために、また頑張りたいです」

 FC町田ゼルビアは5月6日、J1百年構想リーグ第15節で横浜F・マリノスに2-0で勝利した。2点リードの後半アディショナルタイムには、栃木シティFCへの期限付き移籍から復帰したMFバスケス・バイロンが今シーズン初出場。割れんばかりの大歓声で迎えられ、「嘘みたいな光景でした」とピッチを踏みしめた。

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「怪我して1年ぶりくらいに帰ってきたくらいの歓声でしたね。ビックリしました。嬉しかったです、とにかくもう。あとはピッチに立ったら、ボールを触って、自分のプレーを見せたいな、みたいな。そういうワクワクもありましたし、ギラギラした気持ちがありました」

 2023年7月に東京ヴェルディから町田へと加入すると、同年のJ2優勝とJ1昇格に貢献。しかし、2024年は13試合の出場に終わると、昨シーズンはリーグ戦の出場がないまま、8月に栃木Cへと期限付き移籍。J3では14試合に出場して6ゴールと格の違いを見せ、今年1月には「覚悟を持って」町田へと帰ってきた。

「メンバー外でこの4か月ずっとやってきて。外国人枠もありながら、そこの争いもしているなかで。でも、それは言い訳にできないですし。きょうちょっと出場させてもらって、やっぱり試合に出てなんぼだなと思いましたし、みんなの歓声を聞いたときに、なんかすごく感じるものがありました」

 町田に復帰してからこの試合まで、リーグ戦のベンチ入りはゼロ。熾烈な外国人枠の争いもあったが、「出られなかったのは、自分の実力不足。そこを掴み取らないと生きていけない」ともがいた。4月にはAFCチャンピオンズリーグエリートに臨むメンバーから外れ、サウジアラビアへ行くことも叶わなかった。

「町田の今年のユニフォームも初めて着ましたし、ロッカーで。このユニフォームを着る意味を、改めて感じられたというか。だからこそ、これで終わるのではなくて、出て満足は絶対にしないですし、出て活躍したいですし。残り、今年あと4試合ですかね。やっぱり何かを残して終わりたいなと思いますね」

 チームがACLEを戦っている間、日本にはバイロン、DF今井智基、DFキム・ミンテ、GKカウン・ゼン・マラの4選手が居残り。「2週間以上、ずっと4人だけで練習していたんです。みんなの戦いを見て悔しかった」というが、今井とキム・ミンテからは「やり続けろ、大丈夫」と言葉をかけられ、体を追い込んだ。

「もう、すごいです。高校生を思い出しました。(青森)山田ですね。歳は関係ないです。ミンテさんは32、めろくん(今井)も35ですけど、それでもやります。僕もその背中を見て、奮起できました。みんながACLEに行って悔しい思いはあるけど、僕はここで貢献したいという気持ちでずっとやってきました」

 そんなバイロンのひたむきな姿を、もちろんチームメイトも見ていた。キャプテンのDF昌子源やプライベートでも親しいというMF仙頭啓矢からかけられた言葉は、「厳しい状況かもしれないけど、外国人枠とか関係なく、お前の実力でもぎ取れ」。愛のこもった力強いメッセージに、折れそうな心を支えられた。

 だからこそ、FWエリキとの交代でピッチに入った瞬間、込み上げてくるものがあった。町田で最後にリーグ戦に出場したのは、2024年10月19日のアウェー柏レイソル戦。ホームとなると同年8月17日のジュビロ磐田戦まで遡る。約1年9か月ぶりとなるバイロンの勇姿を、サポーターも今か今かと待っていたのだ。

「いやあ、ビックリしましたね。本当に嬉しかったです。試合に入ったとき、なんか嘘みたいな光景でした。ちゃんとピッチに立ってるわ、みたいな。感じるものがありましたね。しかも、町田のユニフォームを背負って。マジで久しぶりだったので。この景色を見るために、また頑張りたいです。もう本当に」

 9歳でチリから来日し、その後は日本で育ったバイロン。日本国籍の取得を目指しているが、困難に直面している。2020年1月から9か月間、チリでプレーしたため、2022年に申請したものの最低居住5年以上を満たさず却下。5年が経過した後に再び申請したが、審査待ちの間に居住10年以上へ厳格化されたのだ。

「僕も法務局に連絡したんですけど、言われるのは4月から制度は変わったというだけで。それまでに申請した人たちが全員適用されるとしか。それ以上は僕も言われていないです。だから、それは待ちですね。嫌でもたぶん1、2月には結果が来るので。わからないです。とにかく、祈ってという感じですかね」

 頭を悩ませる問題ではあるが、今はピッチで実力を証明するしかない。試合に出られない期間も、SNSには「早く試合で見たい!」といった多くの応援メッセージが届いていたという。「そういう人たちに、ちょっとでも応えられて嬉しいなとは思いました」。次はもっと多くのプレーで恩返ししたいところだ。

(FOOTBALL ZONE編集部・工藤慶大 / Keita Kudo)



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