プロと会社員の二足の草鞋「オススメしない」 選手生活に幕…体重6キロ減の過酷環境「ギリギリだった」

現役を引退したペスカドーラ町田の原辰介
第31回全日本フットサル選手権の決勝が3月22日に行われ、ペスカドーラ町田がPK戦の末にバルドラール浦安を破り、10年ぶり3度目の優勝に輝いた。この試合で現役を引退することが決まっていたFP原辰介は、味の素株式会社の正社員として働きながらフットサル選手として日本の全国リーグであるFリーグを戦う選手として、7年間に渡ってデュアルキャリア歩んできた。この7年間を「本当に濃密で、幸せがいっぱいのご褒美タイム」と振り返る一方、過酷なデュアルキャリアは「オススメしない」と意外な言葉を語った。
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フットサル日本代表も多く名を連ねる一戦で、原は先発起用された。派手なプレーを連発するタイプの選手ではないが、攻守において必要不可欠な働きをしてチームを助ける。かつては自身も日本代表に選ばれていた。
そんないぶし銀の男はキャリアのラストプレーでヒーローになるはずだった。PK戦で町田の5番手として登場した原は、決めれば優勝が決まるというPKのキッカーを務めた。PK戦直前、町田のルーカス監督は4番目のキッカーまで指名したが、そこからは選手の自主性に任せたという。そこで原は「チャンスタイム! 5番目って一番おいしいじゃん」と、真っ先に手を挙げた。
そして3-3で自身のキックの順番を迎えた原は、かつて町田でチームメイトでもあったGKピレス・イゴールが守るゴールと正対する。助走を取ってゴール右上を狙って蹴ったボールは、まさかの正面に飛び、イゴールに防がれてしまった。「右上を狙ったのに、真ん中のゴロでしたからね。緊張もなかったのに…。3日間の疲れがでましたね」と、自身のキャリアラストプレーとなったPK失敗に苦笑した。
原の失敗はあったものの、その後、大会MVPに輝いたビゴージのセーブと、キャプテンのFP伊藤圭汰のPK成功もあって町田はタイトルを獲得。原も有終の美を2度目の全日本選手権制覇で終えることができた。
町田でフットサルのキャリアをスタートした原だが、この試合の対戦相手だった浦安に所属していたことがある。それは原の就職が決まってからの4シーズンだった。町田は午前中にチーム練習をしているが、会社員となった原は、その練習に参加することができなくなった。現役を引退するか岐路に立たされた中、救いの手を差し伸べたのが浦安だった。夜にチーム練習を行っている浦安は原の獲得に動き、原はフットサル選手としてのキャリアを継続できた。そして4シーズンを浦安で過ごし、ある程度自分で仕事の時間帯が組めるようになったタイミングで、再び町田へ復帰していたのだ。
「浦安と現役最後の日に戦って、PK戦で勝つことができた。自分がPKを止められたのも、これもまた人生だなって。僕が決めて勝っていたらできすぎだったと思うので、これもまたポジティブに捉えたいと思います」と、笑顔を見せた。
笑顔で現役を終えることができた原だが、会社員とフットサル選手の二足のわらじは、簡単ではなかったと明かす。「会社員になった頃はフットサル業界の状況を知っていたので、『僕がデュアルキャリアのロールモデルになれればいいな』という気概をもっていました。ただ、(若い選手に)オススメするかと言うと、やらなくていいと思います。仕事に専念するか、競技に専念できる環境を自分で勝ち取ることがベストだと思います」と言い、その真意を続けた。
「それくらい時間も、頭も、心も、体も、ギリギリだったので。いつ気持ちが切れて、『もう練習に行かないです』と言ってもおかしくないくらい、糸がピンと張り続けていたような状態だったので。なので、それをみんなにはオススメしないですね。幸い試合に出ることができていたので、表現できる舞台、発散できる舞台があったので、糸が切れることはありませんでしたが、試合に出られなくてコンディションが落ちたりしていたら、いつ辞めてもおかしくない。そんな7年でしたね」
この決勝翌日の23日にも朝から打ち合わせが入っているという原は、2019年に仕事を始めた直後は、練習の時に「体が動かなかった」と、彼が過ごした難しかったデュアルキャリアの様子を語った。
「試合の日にも、午前中に会議があって、そのまま新幹線に乗って名古屋でナイターの試合に出るとか。全然思っているプレーができないなかだったので、この7年間は常に『完全プロ』でフットサルをしている自分のプレーの幻想との戦いでした。プロだったら、もっと俺体が動くのに、もっと走れるのに、と本当に歯がゆさを感じながらの7年でした。1年目の時は体重も6キロ減って、寝る時間がないから筋力が落ちて。浦安の夜練習が終わると12時くらいに家について、アドレナリンも出てるから2時くらいまで寝られない。それでも7時には仕事に行って、18時くらいまで仕事をして、それから再び練習…。その生活で『これって両立できているんだっけ?』と思いながら、無理矢理やっている感じでしたね」
町田に復帰してからは、「仕事もコントロールできて、理想の自分にちょっとずつ近づいた形でした」と原は最後の3シーズンは、自身が描いていた「デュアルキャリア」を過ごせたと胸を張った。
今大会、味の素株式会社の上司や同僚も、原の現役最後の雄姿を見に来たという。「みんなに応援してもらえてありがたかった。幸せすぎる3日間でした」と破顔する。すでに試合を見に来た同僚と言葉を交わし、PK失敗をイジられたという原は「それも良いツマミになるのかなと思います。その十字架を背負って生きていきます」と、目を細めた。
しばらくはフットサルと距離を置くことになるが、「今後もペスカドーラに関われたらいいなと思っています。次はスポンサーとして関わりたいなと思っているので、のぼりつめたいと思います」と、これまでフットサルにも傾けていた情熱を仕事に注ぎ、別の形で将来的に町田を助けたいと未来を描いた。
(河合 拓 / Taku Kawai)

















