319日ぶり復帰も「100%に戻ると思ってない」 鹿島25歳の本音…監督から“粋な計らい”

鹿島の関川郁万【写真:徳原隆元】
鹿島の関川郁万【写真:徳原隆元】

鹿島の関川郁万「新たに自分の膝や体と向き合いながら、サッカーをしていけたら」

 左膝複合靱帯損傷の大怪我を負い、戦線離脱を強いられてきた鹿島アントラーズのDF関川郁万が、319日ぶりにピッチへ帰ってきた。昨年5月のFC町田ゼルビア戦で負傷し、18日の町田とのJ1百年構想リーグ地域リーグラウンドEASTグループ第7節で復帰した25歳が抱いた感謝の思いと覚悟を追った。(取材・文=藤江直人)

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 J1百年構想リーグ地域リーグラウンドEASTグループの全試合日程が発表された1月上旬の段階から、鹿島のセンターバック(CB)関川は「運命」の二文字を感じ続けてきた。

 開幕から順を追って対戦カードを追っていくと、5月3日の第13節にホームのメルカリスタジアムで町田戦が組まれている。思い返せば、2025年5月3日にもホームで町田と対戦していた。

 そしてCBで先発していた関川は左膝を痛め、前半20分にDFキム・テヒョンとの交代を告げられた。鹿島は同14日に診断の結果、左膝複合靱帯損傷の大怪我を負った発表。全治を含めて他の詳細は非公表とされた。

 関川が「運命」を感じたのは、もしかすると怪我からちょうど1年後の百年構想リーグの町田戦で復帰するかもしれない、という思いが脳裏をかすめたからだろう。しかし、予想はいい意味で裏切られた。

 町田のホーム扱いのMUFGスタジアム(国立競技場)に乗り込み、3-0で快勝した18日のEASTグループ第7節。後半アディショナルタイム3分に、関川は実に319日ぶりに公式戦のピッチへ帰還した。

「うれしかったですね。この10か月間、苦しいときとか辛いときとか、本当にいろいろとありましたし、本当に心が折れそうになったときもありましたけど、すべてが報われた瞬間だと本当に思いました」

 ピッチに立った瞬間に抱いた思いを明かした関川は、さらにこんな言葉を紡いでいる。

「百年構想リーグの日程が出たときから、5月3日にホームで、昨シーズンと同じようなシチュエーションで(町田と)試合ができるのを見た瞬間に運命を感じましたし、きょうの町田戦で復帰できたのもまた運命みたいな感じもあります。自分が出られるような状況を作ってくれたチームメイトたちと監督に感謝したいですね」

 自分が出られるような状況とは、イコール、勝利がほぼ確定していた展開を指している。関川がスタンバイした段階で2-0と鹿島がリードしていたスコアは、投入直前に3-0とさらに広がっていた。

 鹿島を率いる鬼木達監督も、試合後の公式会見で関川の投入に関してこう言及している。

「復帰してからもなかなか試合出場のチャンスがなかったですけど、いつかどこかで使いたいという思いがずっとありました。できればホームゲームで、とは思っていたんですけども、きょうこのような素晴らしい環境を選手たち、ファン・サポ―ターが作ってくれたので、自分も本当に自信をもって送り出すことができました」

 メルカリスタジアムで横浜F・マリノスを1-0で振り切った2月14日の第2節から、関川はリザーブに名を連ねてきた。しかし、拮抗した展開が続き、なかなか途中出場のカードを切る機会が訪れない。

 怪我からは復帰できた。しかし、実際に試合で使うとなると、プレー強度を含めて別の問題が頭をもたげてくる。鹿島などでプレーした自身の現役時代を例にあげながら、鬼木監督はさらにこう続けた。

「自分も選手のときは怪我が多かったなかで、選手は苦しい状況から復帰した後になかなかゲームに絡めない。そういう悔しさを含めた本当に難しいなかで、郁万もおそらく過ごしていると思うので」

 実際に関川に聞いてみた。いま現在の左膝の状態は何パーセントなのか、と。

「難しいですね。でも100パーセントの状態には、元のプレーには戻るとは思っていないので。また新たに自分の膝や体と向き合いながら、サッカーをしていけたらと思っています」

 身長182センチ、体重70キロの筋骨隆々のボディをフル稼働させた、ダイナミックかつパワフルなプレーはもうできない、という意味ではない。復帰してすぐには無理、というニュアンスで関川は「元のプレーには――」と言及したのだろう。個人としてどのような形でチームに貢献していくのか、と問われた関川はこう答えている。

「以前のプレーを100パーセントでできるか、と言われたら、そこまで自信をもって『いける』とは思っていないので。ただ、サッカーには先発、リザーブ、ベンチ外といろいろな立場があるなかで、先発の選手を気持ちよく送り出すとか、練習からバチバチやり合うとか、自分が置かれた立場でやっていきたい」

 決して焦らずに、再発との恐怖心とも戦いながら、少しずつ心身のコンディションをあげていく。同時に韓国代表に選出されたキム・テヒョンらにとってもっとも身近なライバルとなり、切磋琢磨しながらCB陣の現在地をあげていく。覚悟を決めた関川を後押しするように、町田戦で指揮官は粋な計らいを見せていた。

 関川をピッチへ送り出した直後。指揮官は両手を大きく振りあげてスタンドを赤く染めた鹿島のファン・サポーターを煽り、関川へエールを送ってほしいと訴えた。すぐに自身のチャントが響きわたってきた理由を、関川はピッチに入った後にボランチの三竿健斗から聞かされ、さらに気持ちを高ぶらせている。

「久々の試合すぎたし、加えて何回かしか途中出場の経験がないので、どのような試合への入り方をしたらいいのかがわからず、緊張もちょっとあったなかで(チャントは)聞こえていましたけど、健斗くんから『オニさんがちゃんと煽ってくれていたよ』と聞いて、もうひとつボルテージがあがったような感じがしました」

 ともに大怪我による長期戦線離脱からの復帰を目指してきた安西幸輝と師岡柊生を含めたチームメイト、スタッフ、ファン・サポ―ター、そして厳しさと優しさとを同居させる指揮官。ファミリーをほうふつとさせる鹿島の絆の強さにも後押しされながら、関川が完全復活への第一歩を踏み出した。

(藤江直人 / Fujie Naoto)



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藤江直人

ふじえ・なおと/1964年、東京都渋谷区生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後に産経新聞社に入社。サンケイスポーツでJリーグ発足前後のサッカー、バルセロナ及びアトランタ両夏季五輪特派員、米ニューヨーク駐在員、角川書店と共同編集で出版されたスポーツ雑誌「Sports Yeah!」編集部勤務などを経て07年からフリーに転身。サッカーを中心に幅広くスポーツの取材を行っている。サッカーのワールドカップは22年のカタール大会を含めて4大会を取材した。

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