祝日も観客912人…引退する元日本代表「不満はある」 人気低迷の現実「変えないと」

ペスカドーラ町田の森岡薫【写真:河合拓】
ペスカドーラ町田の森岡薫【写真:河合拓】

森岡薫「都心でやっているのに、どれだけの人がやっていることを知っているのか」

 フットサルのシーズンを締めくくるJFA全日本フットサル選手権大会が、いよいよ大詰めを迎えている。3月20日には駒沢オリンピック公園総合運動場体育館で準々決勝の4試合が行われ、ベスト4進出クラブが出そろった。今大会を最後に現役を退く選手は多いが、特に今シーズンはFP吉川智貴(名古屋オーシャンズ)、FP皆本晃(立川アスレティックFC)、FP星龍太(フウガドールすみだ)と、フットサル日本代表でも活躍した選手の引退が多い。

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 フットサルの全国リーグであるFリーグが創設された2007年から、「日本フットサルの顔」となってきたFP森岡薫(ペスカドーラ町田)も、その一人だ。絶対王者の名古屋オーシャンズで背番号9を付け、クラブのリーグ9連覇の立役者となった日系ペルー人3世は、2012年に帰化すると、同年にタイで開催されたフットサル・ワールドカップにも元サッカー日本代表FW三浦知良らと出場し、決勝ラウンド進出をはたした。

 キャリアの締めくくりに、自身通算5度目となる全日本フットサル選手権優勝を目指す森岡は「46歳になったら、そりゃプレースタイルも変わるでしょ!」と笑うが、かつてのように最前線で体を張り、問答無用の強烈なシュートを叩き込むプレーは、あまり見られなくなった。最後尾のフィクソで体を張って相手を抑える役割をしながらも、PKや第2PKといったセットプレーでは持ち前の強烈なシュート力を見せてゴールを挙げている。町田が5-3で勝利した準々決勝のバサジィ大分戦でも、長らくフットサル日本代表で10番を背負ってきたベテランのFP仁部屋和弘とバチバチとやり合うシーンが見られた。

 引退後には町田のゼネラルマネジャー(GM)に就任することが決定している森岡の現役ラストマッチは、21日の準決勝(vs湘南ベルマーレ)か、22日の決勝になった。

「できれば決勝でやりたいね。でも、ここからが難しい。今の試合みたいな打ち合いにはならないと思う。集中が切れた方が負ける」と言い、「つまらない失点だったけど、こんな感じじゃない? 全日本選手権って。ただ、これだと優勝を狙うチームの戦い方じゃないと思うから、しっかり休んで明日の準決勝を戦いたい。町田によくある悪いクセというか、ゲームコントロールすればいいけれど、コントロールできずに変な失点をして、また慌てる。個の力があるから、そこでまた点を取れるけど、点差が離れているうちに良い試合コントロールができた方がチームの成長につながると思う」と、ベスト4進出にもチームの課題を挙げた。

 森岡が全盛期を迎えていた頃、フットサルの熱は高かった。国立代々木第一体育館は多くの観客で埋まり、大きな発展が期待された。しかし、フットサル日本代表が直近のW杯予選(2016年、2024年)で2度、フットサルW杯の出場権を逃したこともあり、フットサル人気は低迷。祝日に行われたこの準々決勝でも、最多入場者数は912人だった。

 現実的に、かつてのように多くの人が訪れるなかで華やかな引退……というわけにはならなさそうだ。

「フットサル界の現状には、もちろん悔しさはある」と言う森岡は、「次のキャリアでフットサル界を、あの頃に戻したいと思います。肩書きはGMになるけれど、実際は何でも屋だと思う。チームの広告塔になったり、育成の方も見たりする。フットサル界を見ていて普段は口にしないけれど、不満はあるし、変えないといけないと思っています。自分一人で変えられることではないし、そういう思いをもった人がどれだけ今後、フットサルに関わっていくかだと思う。そういう人が多く関わるようになれば、間違いなく変えられると思うし、試合を見ていて楽しいと思う。この大会も、こんな都心でやっているのに、どれだけの人がやっていることを知っているのか。『今は良くない』『今はダメだ』と言うのは簡単だけど、言うだけで変えないのは一番ダメだと思うから、変えるためにはどうしたらいいかを考えて、取り組んでいきたい」と、1か月後に47歳となる森岡はセカンドキャリアでの目標を口にした。

 2人の息子は、東京ヴェルディのジュニアユースに入り、サッカー選手としても将来を期待されている。20歳を過ぎてからフットサルを始めたストライカーは、「今は子どもたちもサッカーを頑張っているけれど、この先いつかフットサルに戻ろうと思ったとき、彼らが『目指したい』と思える世界にしたい。フットサルをやってきた一人としても、親としてもそう思う。今、若い子たちはサッカーで生かすためにフットサルをやる子が多いと思うけれど、フットサルもしっかりトップが成り立ってほしいし、そこに向けて今後、裏方として頑張ります」と、決意を述べた。

 気持ち良く現役生活を終えるためにも、置き土産として町田にタイトルをもたらしたいところだ。「まだ試合にも出ているし、あと最大2試合で選手としてフットサル人生は終わるけれど、今はまったく寂しさや悲しいといった感情がない。そのときにならないと、そういう気持ちはわいてこないと思う。今あるのは『あと少し』という感情ではなく、『優勝したい』という思いと『この先、フットサルとどう関わって、どう良くしていけるか』という楽しみやワクワク感」と話す。

 もちろん、会場には多くの人が集まったほうが、この男は燃えるだろう。「たぶん『あの人まだやっているの?』っていう人は、たくさんいると思う(笑)。21日、22日と東京の都心部でフットサルの日本一を決めるフットサル全日本選手権がやっているから、見に来てくれたらなと思います」と呼びかけ、連戦に向けたケアをするために帰路へついた。

(河合 拓 / Taku Kawai)



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