苦しむ独名門「メンタルの問題ではない」 対戦相手の日本人が口にした「やられる感じはなかった」

ブレーメンに所属する長田澪(左)と菅原由勢【写真:ロイター】
ブレーメンに所属する長田澪(左)と菅原由勢【写真:ロイター】

ブレーメンは15位で残留争い中

 ブンデスリーガ制覇4回、DFBカップ優勝6度のブレーメンが、残留争いに苦しんでいる。

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 勝てそうな試合で、勝てない。それは残留争いの中にいるチームにある共通の感覚かもしれない。全てがうまくいっていないわけではなくとも、主導権を握る時間帯はある。チャンスだって作れている。それでも結果に届かない。

 20節ホームのボルシアMG戦を1-1で引き分けた後、ホルスト・シュテファンが解任へ。ダニエル・トゥーンが新しい監督に就任したことで、なにかフレッシュな変化が生まれるかと期待されたが、それでも流れは大きく変わらない。就任後3戦で3敗という結果が、静かなプレッシャーとして残っていく。

 GK長田澪は1-2で敗れた21節フライブルク戦後、言葉を選びながら口にした。

「気合とかメンタルの問題ではないと思っています。結局は一つ一つの小さな判断や対応が、今の勝敗につながっている。細かい部分が勝負の分かれ目になっていると思います」

 この試合でもブレーメンはボールを保持し、押し込む時間帯を作った。しかし得点は奪えない。惜しいチャンスでゴールに迫りながら、その直後にカウンターを受け失点。長田はその場面をこう振り返る。

「人数は足りていたんですけど、大事な競り合いで負けて数的不利を作られて、最後はプレッシャーをかけ切れずにフリーで打たせてしまった。一連の流れが失点につながったと思います」

 完全に崩されたわけではない。だが失点をする。

 同じ構造は別の試合にも表れていた。ブンデスリーガ第18節、フランクフルト戦後の菅原由勢の言葉である。3-3の乱戦を終えたあと、彼が語ったのは守備の崩壊ではなかった。

「3失点とも完全に崩されたというよりは、1個のミスで弱くなってしまったり、寄せが遅れたり、そういうところが重なったのかなと思います。崩されているというより、自分たちで試合を落ち着かせられなかった」

 攻撃面に目を向けると、得点力のなさは大きな問題だ。23試合で23得点はリーグワースト2位。直近6試合ではわずかに2点。前述のフライブルク戦では、52分にフライブルクMFヨハン・マンザンビが一発レッドカードで退場したことで、40分近く数的有利な状況を手にしても、得点機を生み出せないまま試合が終わった。

 フライブルクの鈴木唯人が「コンパクトにして、あとはクロスの対応をしっかりすればやられる感じはなかった。最近はヨーロッパリーグなどでビハインドの状況を経験していたので、そういう部分が今日に生きたかなと思います」と振り返っていたコメントに、ブレーメンの問題点が集約されている。

「流れを切ったり、流れを作るプレーが必要だったと思います」

 そう語っていたのは菅原だ。ただ、リズムを作る存在として期待されている菅原は、直近2試合でスタメンを外れている。「サイドにスピードのある選手をいれたい」というのがトゥーン監督の理由。だが、どれだけ速い選手がいても、狙いを持った攻撃でなければ、シュートチャンスまでは持ち込めない。

 変化をもたらすには攻撃の設計図と、相手を驚かす意外性が必要だ。相手をずらす、ずらしたところを狙う。その役割を担っていた菅原がいない影響は小さくはない。

「右サイドからの崩しはバリエーションが上がったと思います。外で当てて、やり直してクロスもあるし、切り返して中で持ち直す形もある」と語る菅原を外してまで試した形は、ここまで願っていた効果はあげられていない。

 残留争いから抜け出すチームの特徴は明確だ。悪い試合運びでも、押し込まれても一丸となって守り、チャンスを粘り強く作り出す。勝ち点3をとれなくても、なんとか勝ち点1は手にする。ブレーメンにそうした《残留力》があるのかが、いま問われている。

 菅原はチームのまとまり自体に問題はないと語っていた。

「全員が集中していたか、勝ちたいと思っていたかと言われたら、全員集中していたと思うし、全員が勝ちたいと思っていたのは間違いない」

 長田はチームの状態についてフライブルク戦後にこう話していた。

「チームとしては一丸になっていると思います。10月、11月よりも団結している感覚はあります。みんなで『ここから抜け出そう』という気持ちは共有できています」

 状況打破をするのを誰かにゆだねてもうまくはいかない。みんなが「自分が何とかしよう」とばかりになっても、やはりうまくいかない。サッカーはチームスポーツだ。

 大事なヒントになることを、菅原がフランクフルト戦後に口にしていた。

「最近のチームの傾向として、『ダッシュして動くを繰り返す』というシンプルな作業があまりできていなかった。ボールを持って(味方を)探して、誰かに動いてもらうみたいな形になっていた。でも、やっぱり自分たちから主体的に動かないとスペースはできない」

 一時17位まで順位を落としたことでやるべきことははっきりしたはず。自分達の現在位置を受け止めて、気持ちを吹っ切って、サッカーに集中するのみ。

 流れを作る選手と、流れを止める選手。その両輪が揃ってはじめて、残留争いは抜け出せる。そのために大事な役割を菅原と長田が担う。

(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)



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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)取得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなクラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国で精力的に取材。著書に『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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