鹿島ユースに昇格できず「高校サッカーで巻き返そう」 オファー殺到…名門校に覚悟の進学

尚志の左利きセンターバック中村一平は引き出しの多さが光る
高円宮杯プレミアリーグは鹿島アントラーズユースの優勝、第104回全国高校サッカー選手権大会は神村学園の初優勝で幕を閉じた。
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2025年シーズンを終え、各クラブユース、高体連のチームは新チームをスタートさせ、新たな戦いに向けて準備を進めている。4月のリーグ本格開幕を前に虎視眈々と上を目指すチーム、選手にスポットを当てていきたい。
今回は1月31日から2月2日まで福島県のJヴィレッジで行われた東北新人サッカー大会を取材。昨年度の選手権でベスト4入りを果たした尚志の新DFリーダーのセンターバック・中村一平は、昨年の先輩の姿に刺激を受けて決意を語った。
「スタンドから見ていて本当に頼もしいなと思いました。チームの信頼を勝ち取ることの重要性を学びました」
昨年度のチームは西村圭人(新潟医療福祉大)と松澤琉真(立正大)のCBコンビが試合をこなすごとに成長し、チームに安定感をもたらしていた。西村は2年の時までトップチームに絡むことができず、松澤はわずかな時間ながらトップに絡むことができたが、3年春にはレギュラーを外される経験もした。
それでも2人は必死で努力を重ねて不動の存在へと成長を遂げて、国立競技場のピッチで見せる堂々たる姿に中村は自分の背中を押された気がした。
「僕も昨年3月くらいまでは、トップチームにいることができたのですが、そこから競争に勝てずにどんどん落ちて行ってしまいました。4月の後半にはセカンドチームのベンチまで落ちてしまって本当に悔しかった。でも、『自分ができることを精一杯やろう』と腐ることなく取り組んだことで、7月にセカンドのレギュラーに返り咲くことができた。トップには届かなかったのですが、僕自身も諦めない、目の前のことを全力でやることの大切さをわかった1年だったので、2人の姿はより刺激になりました」
中村は茨城県出身で、中学時代は鹿島アントラーズつくばジュニアユースでプレーした。当時からサイズがあり、左利きのCBとしてプレーをしていた。左足のフィードと対人能力を武器に中学3年でレギュラーを掴んだが、ユースに上がることができなかった。
「本家(鹿島アントラーズジュニアユース)にいい選手がいっぱいいたし、合同練習に行っても上のカテゴリーに呼ばれなかった。そこでなんとなく自分の立ち位置は分かっていました。ユースに上がれないかもしれないと薄々思っていたので、『高校サッカーで巻き返そう』と思っていました」
希少な183cmの左利きのCBを他のチームが放っておくはずもなく、多くの県外強豪校からオファーが届いた。
「最後は家から通える高校と尚志で悩みました。でも、親元で寮生活をすることで甘えをなくしたいと思ったし、ちょうどチェイス・アンリ(オーストリア1部RBザルツブルク)さんのプレーを見て憧れたのもあって尚志に決めました」
覚悟を決めて入部するも、前述した通り昨年まではトップになかなか絡めなかった。それでも「仲村(浩二)監督がずっと『アンリは1年の時は本当に下手だったけど、努力で這い上がっていった』と言っていて、その言葉が自分の中に響いた」と、今の自分の立場に一喜一憂せず黙々とやるべきことをやり続ける姿勢を貫いた。
自主トレではひたすら左足のキックを磨いた。ただ遠くに飛ばすだけではなく、低弾道で伸びるボールや対角、同サイドへのフィードと、実戦で有効活用出来るキックを徹底して蹴り込んだ。空中戦もグラウンドの隅の壁を使って黙々と競り合い、自分でボールを投げて壁に当ててからヘディングをしたりと、キック同様に常に実戦を想定してやり続けた。
その成果が最高学年を迎え、中村の絶対的な武器になりつつある。東北新人戦の初戦・聖和学園戦では、コンパクトに組み立ててくる相手の背後を徹底して狙った。前半24分には最終ラインのボール回しから正確なファーストタッチで持ち出して、左サイドでオーバーラップを仕掛けた左サイドバック・寺田悠真の動きを見逃さずに低弾道のロングフィードを送り込んだ。これを寺田がダイレクトで折り返すと、中央でFW京増倫泰がワントラップシュートを突き刺し、先制点の起点になった。
チームの成績はベスト4で終わったが、積極的なラインコントロール、対人能力と空中戦の強さ、そして左右中央に落とすボールやスペースを射抜くボールを巧みに蹴り分けるフィードと、「引き出しの多いCB」としての存在感を見せつけた。
「左利きのCBはこれから先、重宝されると思うので、もっと自分の特徴を磨いていきたいです。ボール出しは全部自分がやるという気持ちでプレーしていきたいです」
アントラーズつくばジュニアユースの先輩でもある町田浩樹(ホッフェンハイム)のように左足とサイズを生かしたCBになっていくために。中村は目の前のことに全力を尽くしながらその希少性を高めていく。
(安藤隆人 / Takahito Ando)
安藤隆人
あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』(共に徳間書店)、など15作を数える。名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクターも兼任。



















