沖縄に現れた16歳の新星「やらなければ意味がない」 今月プロ契約…浦和を包む「フレッシュな空気」

16歳のMF和田武士は浦和とプロ契約を結んだ
Jリーグの各クラブは百年構想リーグに向けて、プレシーズンの強化を行っている。浦和レッズは恒例の沖縄キャンプで新たな戦術に取り組んでおり、試行錯誤している段階だ。細かいことは書けないが、前からボールを奪いに行くためのハイプレス、ミドルゾーンの守り方を変えることにより、ローブロックで固める時間帯を減らして、よりアグレッシブに、攻撃的に試合を進めていきたいという意図が表れている。
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マチェイ・スコルジャ監督が3年目、2023年を含めると実質4年目となり、メンバーも昨年と大きくは変わっていない。それでも新たなトライによって、キャンプの現場にはフレッシュな空気が流れ込んでいるが、未だ選手間での戦術的な共有が整理されているとは言い難く、さらに練習とトレーニングマッチを積み重ねていく中で、精度を高めていくしかないだろう。一方の攻撃面ではビルドアップのやり方、サイドバックの関わり方などにバリエーションを増やそうという意向は見られる。ただ、現時点では守備面のベース作りが第一で、攻撃面は沖縄キャンプの終盤に仕込んでいくことが見込まれる。
「自分の本来のポジションではないですけど、別のポジションでまず結果を残して、自分のポジションをやるのか、新しいポジションをさらにできるようにするのか、競争に食い込むための練習はできているかなと思います」
そう語るのは昇格2年目のFW照内利和だ。16日に行われた北海道コンサドーレ札幌とのトレーニングマッチにおいて、早川隼平のパスからゴールに流し込んで、これが45×2本マッチの決勝点となった。ハイプレスに関しては「試合が進むにつれて回数が減ったり、付きに行けない部分はあった」と課題も口にするが、練習から本職のFWだけでなく、左右のサイドアタッカーとしてもテストされている。ルーキーだった昨年よりも明らかに存在感があり、開幕ベンチ入りも期待できる状況にある。
また昨年の終盤に特別指定選手としてデビュー戦ゴールを記録した大卒ルーキーのFW肥田野蓮治は、チームメートと共に守備面の試行錯誤をしながらも、攻撃では個のタレントとして早くも非凡なプレーを披露している。12日のトレーニングマッチ3本目として行われた沖縄SVとの試合で決めたゴールはインパクト十分だった。肥田野本人も「開幕スタメンを目指しています。キャンプでしっかりアピールして、結果でチームの勝利に貢献できれば」と前向きに語る。
昨年12月に左肩を手術した小森飛絢(ひいろ)が復帰まで5か月かかると見込まれる中で、肥田野は得意の右サイドに加えて、前線でもテストされている。「右の方が前を向きやすいですね。ただ、フォワードは後ろ向きで収めたり、斜めに走ったりとやることが多いので。そこは他の選手を見ながら徐々に学んでいきたい」。大型FWのイサーク・キーセ・テリンとタイプは異なるが、取り組んでいる守備と攻撃のベースを引き上げるほど、前線でも得点力を発揮できそうだ。
中盤では16歳ながら今月にプロ契約をしたMF和田武士が良いアピールを続けており、ボールを奪う守備に加えて、アグレッシブな飛び出しも目立っている。昨年U-17W杯も経験した和田は経験豊富な柴戸海とのコンビに関して「どちらかというと、自分は前でプレーしようかなというのがありましたし、今日は思った以上に長い時間、試合に出ることができた。その中でも柴戸選手と試合中に声をかけ合って、守備のところはある程度いい関係性だったと思います」と意欲的だ。
今年の夏には26-27シーズンの開幕に合わせて、ポストユース年代の試合経験を目的としたU-21リーグがスタートする。浦和も第1回から参加する予定だが、和田は「このタイミングでプロ契約をして、キャンプに参加させてもらっているのは、U-21リーグに向けてというより、百年構想リーグに向けてという意味合いもあると思っています。そこに向けてやっていかなければ意味がない」と主張する。U-21リーグの存在意義はともかく、そうした環境に甘えることなく、トップチームでの出場を目指していくという心がけは若い選手にとって大事な要素だろう。
スコルジャ監督にも、若手や新戦力にチャンスを与える姿勢はこれまでより感じられることが多い。例えばビルドアップの構築を目的としたメニューにおいて、従来の主力が多いグループにはコーチが指示を出し、もう一つのグループをスコルジャ監督が直接指導する場面が見られた。練習試合のメンバーにしても、1本目と2本目で、明らかにスタメン組とサブ組を分けている様子もなく、キャンプの段階で選手の競争意識を促していることはポジティブなポイントだ。百年構想リーグは浦和にとって、ACLエリートの出場権を獲得するための大事な大会ではあるが、それによって戦術選択や選手起用が消極的になるのではなく、アグレッシブにトライしていくことが結果につながれば、来たる26-27シーズンに向けても、前向きな流れを作っていけるだろう。
大半のJ1クラブはここからの半年間といわゆる“秋春制”スタートとなる26-27シーズンを一つなぎとして、チームを率いる監督も継続を前提に戦略を立てている様子が見られる。浦和に関してはスコルジャ監督の夏以降の去就は不透明だが、良くも悪くも安定思考の強い体質から、良い意味でブレイクスルーを果たしていけるか。チャレンジにはリスクが伴うが、まずは百年構想リーグの開幕まで、前向きなトライを続けていくことが期待される。
(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)

河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。


















