高1で出会い→理想像に「僕もそうなりたい」 背中を追う日本代表の存在…心に刻まれた基準

桐蔭横浜大の神保颯汰【写真:安藤隆人】
桐蔭横浜大の神保颯汰【写真:安藤隆人】

桐蔭横浜大2年のGK神保颯汰が追い続ける背中

 第74回全日本大学サッカー選手権大会(インカレ)が閉幕した。昨年度は全国7地域のリーグ戦で上位となったチームが12月8日に一発勝負のプレーオフを戦い、勝者が関東王者の筑波大学、九州王者の福岡大学、関西王者の関西学院大学、東海王者の東海学園大学がいるそれぞれのリーグに入って決勝ラウンドへ。敗者が強化ラウンドとなるリーグ戦に移行するという方式で覇権を争った。

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 ここではインカレで輝いた選手たちの物語を描いていく。第26回は桐蔭横浜大学の2年生GK神保颯汰について。インカレ強化ラウンド2日目の桃山学院大戦でトップチームデビュー戦を飾った2年生守護神には、ロールモデルとなっている偉大な先輩の存在あった。

「(強化ラウンドの)準決勝に進むためには絶対に勝たないといけない場面で待ち望んだチャンスがやってきた。この試合は来年にもつながる重要な一戦だと思ったので、全てを懸ける気持ちで臨みました」

 今年1年間、正GKとしてトップチームのゴールを守ったのは、4年生の高橋一平だった。J2・ベガルタ仙台への加入が内定している191cmのGKが躍動する姿をずっと外から見ていた。

「大学に入って感じたのは、周りのGKの選手のレベルの高さ。昨年の西澤翼(ジュビロ磐田)さん、今年の高橋さんを見て、プロに行く先輩GKたちと自分との明確な差というのをすごく痛感しました。高校時代はキックだったり、シュートストップだったり、全体的な平均値はあると思っていたのですが、それくらいのアベレージはみんなもう持っていて、その中で個性を出して競争を勝ち抜いていかないといけないと感じました」

 昨年は高橋とセカンドチームにあたる社会人チーム(関東サッカーリーグ1部所属)で凌ぎを削っていた。前回のインカレでは2人の4年生GKに次いで、第3GKとして1年生ながらメンバー入りを果たすなど、厳しい競争の中で着実に成長を遂げてきたからこそ、訪れたチャンスだった。

 しかし、試合は2失点を喫して2-2のドロー。抜擢を結果で示すことができなかった。

「チャンスをもらった試合で結果を残せなかったというか、チームを勝たせるキーパーを目指している中でチームを勝たせられなかったっていうのは本当に悔しいです」

 試合後、こう唇を噛んだが、試合を通してもキックやDFラインのコーチング、セービングなど質の高いプレーを見せていた。特にカウンターの際のステップワークとポジショニング、シュートに対する構えや重心移動は能力の高さを感じた。結果は望んだものではなかったが、この経験が大きな第一歩になったことは間違いなかった。

「僕には理想像があって、『チームを勝たせるGK』になることなんです。今日の試合でそれが出来なかったのは自分の未熟さだし、桐蔭横浜大に来たのも、ここでチームを勝たせるための特出した武器を身につけたいと思ったからなので、そこに向かって積み上げているところです」

神保の理想像に大きく影響を与えたのは、桐蔭学園高の先輩にあたる日本代表GKの早川友基だった。神保が高校1年生の時の冬に当時、明治大の4年生で鹿島アントラーズ入りが決まっていた早川がオフを利用して練習に参加をしたのだった。

「その時に初めて桐蔭学園の先輩がプロに進むことを知りました。早川選手は身長が僕と同じぐらいなのですが、足元の技術が凄く長けていて、シュートストップも独自の『色』があることに大きな衝撃を受けました。早川選手のシュートストップはただうまいだけではなく、迫力があるというか、力強さ、ダイナミックさを感じたんです。詳しくは知らなかったのですが、本当にすごい選手だと思いましたし、もっと自分も真似をしないといけないと感じました」

 高校の3年間、あの日受けた衝撃を忘れないようにコツコツと基礎も怠らずに土台を作った。大学進学時も、「高校3年間指導していただいた島崎恭平GKコーチは、(桐蔭横浜)大学も指導しているので、多くのことを学んだ恭平さんの下で、もう4年間過ごして成長したいと思った」と、将来の自分を考えて決断をした。

 そして、明確な目標を持って取り組み、1つのきっかけをこのインカレで得ることができた。

「こうしてトップの試合に出場をして、改めて『試合を勝たせられるGK』である早川選手の凄さを感じました。この間のフロンターレ戦で見せたスーパーセーブもそうですが、『ここぞ』という場面でビッグセーブを見せる。ただシュートを止めるだけでなくて、相手の勢いを止める、流れを断ち切るシュートストップをするのが本当に凄い。それは大事な場面で自分の能力をフルに発揮できるという力だと思うので、僕もそうなりたいですし、改めて僕の理想だなと思いました」

 あの日以来、偉大な先輩とは会っていない。だが、心に刻まれた衝撃と基準は間違いなく重要なモチベーションとなっている。

「来年のトップの試合は自分が1年間通して出たいという思いが強くありますし、来年プロを決める覚悟で戦っていきたいなと思います」

 より闘志と向上心を燃やして。期待の2年生GKは、1つしかないポジションを誰にも渡さない気概とより強くなった理想像を抱えて、最終学年に向けて突き進んで行く。

(安藤隆人 / Takahito Ando)

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安藤隆人

あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』(共に徳間書店)、など15作を数える。名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクターも兼任。

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