大学進学で離れた鹿島は「戻りたい場所」 律してくれる”古巣の存在”「それじゃ戻れないよと」

順天堂大学の3年生サイドアタッカー・今井啓太
順天堂大学の3年生サイドアタッカー・今井啓太が持つスピードと迫力はとてつもないものがあった。181センチのサイズと屈強なフィジカルを持ち、右サイドから相手を跳ね除けるような突破と破壊力抜群のクロスとシュートで攻撃を活性化させる。
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彼の理想とする選手は、ファイターであり、クラッシャーでありながら、周りとつながりを持ちながら前への推進力を発揮できるアタッカー。その力を磨くために、彼は鹿島アントラーズユースから順天堂大にやってきた。
「トップに昇格する選手は全体的なアスリート能力が高い選手。僕もユース時代にトップの練習参加をした時に、シンプルにフィジカルの部分で大きな課題を感じました。それに加えて思考力、判断力も足りなかった。だからこそ、大学で一から鍛え直そうと思いました」
ユース時代までは攻撃的なサイドバックとしてプレーしていた。フィジカルがないわけではなく、むしろ強みだった。それでもやっぱりプロは違った。守備面での身体の当て方、攻撃面での突破の際の出力。最大の武器である前への推進力をもう一度、意識的に向上させるべく、彼は生まれ育った鹿島の地を離れた。
「順天堂に来て思ったのは、個人のレベルアップはもちろん、周りとの連係面でもきちんと学んだり、整理できたりする場所だということです。ポジションも去年の夏の終わり頃にサイドバックからサイドハーフにコンバートしてもらったことで、よりゴールが近くなって本能というか、より突破に集中できるようになりました」
サイドバックとして何が足りなかったのか、何を期待されてサイドハーフになったのか。彼は自分なりに考えた。
「順大のサッカーの特徴の1つがサイドバックにあって、高い守備力と運動量を求められる。僕はまだその面で足りないからこそ、僕以上にふさわしい選手がいて、僕が1つ前に押し出される形になったことと、僕の攻撃力を評価されてのコンバートでもあると受け止めています。守備は引き続き意識的に取り組みながらも、武器をさらに伸ばすために今このポジションを全力で取り組んでいます」
今年、彼のサイドからの攻撃は増している。一度加速をしたらグングンと前に伸びるように加速し、逆サイドからのクロスに鋭く飛び込んだり、ワイドでボールを受けてから強烈なカットインでゴールに迫ったりと、右サイドから生み出される「圧」は凄まじいものがある。
「サイドバックの時は自分がどこに走ったら相手がついてくるのか、こないのか。ボールを引き出せるのかなどを考えながらタイミングを見計らっていましたが、サイドハーフはアクションのスピード感を大事にしています。相手を剥がせたらもうゴールなので、そこは思考しながらも本能を出すことを意識しています」
前述した通り、彼は鹿島のホームタウンである神栖市出身。幼い時から憧れを持ち、スクール、ジュニア、ジュニアユース、ユースとサッカー人生の大半を鹿島のエンブレムのもとで過ごした。
「アントラーズは技術、戦術はもちろん、献身性、熱量、力強さを大事にしているクラブ。今、着ているユニフォームは違いますが、クラブの誇りを持ってそれらをピッチ内で体現し続けたいと思っています。僕にとってアントラーズは『戻りたい場所』であり、『立ち返る場所』でもあるんです。大学に来て、自分の時間が多くできた中で、ちょっとサボろうかな、少し手を抜こうかなと思っても、僕に『それじゃ戻れないよ』と言ってくれるんです。自分を律してくれる場所でもあるんです」
目標はもちろんプロとして鹿島に入ること。まだまだ道のりは遠いが、自立と自律の両方のメンタリティーを持っている彼がぶれることはない。
「いま、アントラーズのサイドハーフとして出場している選手は個でも行けるけど、周りを生かすのがうまい選手ばかり。チャブリッチ選手はサイドで高い位置をとって強度の高い突破をできるし、右利きなので参考にしていますし、濃野(公人)選手と小池(龍太)選手はサイドバックもサイドハーフも両方できる能力を持っています。本当に凄い選手たちばかりなので、自分も目標に向かって、(大学生活の)残り1年半は自分ができることを増やして、コツコツと積み重ねていきたいと思います」
(安藤隆人 / Takahito Ando)
安藤隆人
あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』(共に徳間書店)、など15作を数える。名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクターも兼任。



















