「律、そのまま」に思わず「すげぇ」 選手が驚愕した逆転の“一手”…森保監督の必勝プラン

伊東純也をシャドーの位置で投入
森保一監督率いる日本代表(FIFAランク19位)が10月14日、歴史に残る1勝を挙げた。東京スタジアムで行われたブラジル代表(同6位)戦で2点差をひっくり返す3-2の勝利。カタール・ワールドカップ(W杯)で倒したドイツ、スペインに続いてブラジル相手にも逆転勝利をやって退けた。サッカー王国相手にガチンコで勝負して奪った3ゴール。ポイントは選手が思わず「すげぇ」と感嘆の声を漏らす1つの交代カードにあった。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小杉舞)
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まさかじゃない。必然だった。前半に2失点。このままいけば完敗モード。だが、後半からの森保ジャパンは別チームになっていた。ホイッスルがなると一気にギアを上げて、前線からプレスをかける。3-6-1システムが織りなす圧力にブラジルまでもを困惑させ、同7分にMF南野拓実が相手のミスを逃さずゴール。同17分にはMF中村敬斗が決め、同26分にはFW上田綺世が勝ち越しゴールを頭で押し込んだ。
逆転勝利は2022年カタールW杯のグループステージ第3戦、伝説のスペイン戦(2-1)以来だった。同じく逆転で世界を驚かせたドイツ戦(2-1)と合わせてブラジル戦でも試合をひっくり返した。だが一方で2023年の森保ジャパン第2次政権下では初の逆転勝利。6度先制された試合があったものの、勝ち切ることはできずにいた。ブラジル相手に逆転できたのは訳があった。
「戦術的に、今日は(前半)少し引いたミドルブロックでやったので、後半に体力は温存できていたから、逆転できたと思います。今までの第2次政権はやっぱり主体的にという中で前半からガンプレ(ガンガンプレス)していたので、相手が慣れてくると後半エネルギー不足になった。どちらかというと今日は後半からエネルギーを入れた感じやった」(堂安律)
ハーフタイムの戦術変更は功を奏した。2点ビハインドを負ったロッカールーム。南野主将が声を張った。「まだこのゲームは死んでないよ!」。森保一監督とともに堂安ら経験値の高い選手が戦術だけでなくメンタルの切り替えを図った。MF遠藤航やDF板倉滉、MF三笘薫ら牽引する主力が負傷により不在だったが、それぞれがわずかなハーフタイムの時間を有意義に使って打倒ブラジルのプランを立てた。
「戦術的なこととか、試合の中身はいっぱい詰まっていますが、選手たちは前半厳しい戦いのところを、切れずに戦い続けてくれた。ハーフタイムに戻ってきた時も建設的に後半どう修正したらいいか冷静にコミュニケーションをとってくれた中、コーチ陣が選手たちに後半より明確な役割を伝えてくれてチームが集中力を切らさずに、かつ前半から修正してたたかえたことが試合をひっくり返せたことにつながった」(森保監督)
逆転の一手となったのはMF伊東純也の投入だった。この日、中村&上田のゴールをお膳立てして2アシスト。MF久保建英が足首負傷の影響もあり、出場時間が限定されていたため伊東が切り札になった。この時、ウイングバックに入っていた堂安はそのまま、伊東は久保がいたシャドーの位置に入った。「律、そのまま」。伊東にそう伝えられた堂安はその作戦に思わず「すげぇな」と驚いたという。
「僕をウイングバックに置いたのも意図を感じました。純也くんを走らせたいのかな、と。僕は外で起点になれていたので、中でやるよりも(良いと思ったのか)その辺もすごいな、と。本来なら僕がシャドーをして純也くんがワイド(ウイングバック)でも良いのに、そのままと言われて、すげぇなって」(堂安)
カタールW杯の経験が間違いなく生きた一戦。堂安は「冗談ですけど僕たちは『戦術カタール』と言っていて、ハマったんですけどね」。南野も「この戦い方のオプションはW杯で格上相手に絶対必要になる」。ただ課題は前半の2失点。8か月後の北中米W杯本番を想定すると、2点ビハインドをひっくり返すのは現実的に厳しい。だからこそ、選手からは「前半は0-0で終えないといけない」と反省の弁が次々に聞こえた。
何より奮闘したのが最終ライン。谷口彰悟、渡辺剛、鈴木淳之介の3バックが90分間集中を切らさず、中盤、サイドと連係を取って耐え続けた。2失点したものの、冨安健洋、伊藤洋輝、町田浩樹、高井幸大らがコンディション不良で、三笘や遠藤、守田英正の主力も不在のなか、穴を感じさせないパフォーマンスだった。
奇跡が生んだ勝利ではない。これが勝ち筋だった。1本の光を全員で導き出し、突き進んだ。森保ジャパンのすべてが詰まった一戦。歴史的な1日は必然で生まれていたーー。




















