慣れないキャプテンが「歴史を変えるために」 24年前の記憶…南野拓実が“憧れ”を超えた夜

反撃の狼煙を…仲間を奮起させた円陣「親善試合じゃない」
歴史を変えるーー。日本代表MF南野拓実が放った一言が現実になった。日本代表(FIFAランク19位)は10月14日、東京スタジアムで行われたブラジル代表(同6位)戦で3-2の大逆転勝利を挙げた。14戦目の対戦で挙げられた初勝利。0-2から後半7分に南野が反撃の狼煙を上げた。「シュートしかない」。迷わず振り切った右足で記憶に残る国際Aマッチ25点目を奪った。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小杉舞)
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この瞬間を何度願っただろう。ワールドカップ(W杯)5度の優勝を誇るブラジルに一瞬の隙を突かれて2失点。ビハインドを負ってハーフタイムに突入した。王国を、ブラジルを破るためにはどうすれば……。「そこはもうみんな一致して、もう行こう、と」。後半からギアを上げ、前線からプレスをかけた。同7分、相手のパスミスを見逃さなかった南野がボールを奪って右足を一閃。「シュートしかない。うまく相手のミスをつけてよかった」。スタジアムを包んだ一瞬の静寂の後、約4万5000人が歓喜に沸いた。2017年以来8年ぶりにブラジルから挙げた歴史的なゴールだった。
「ただの親善試合だけど僕らにとっては親善試合じゃない。歴史を変えるために戦おう」
MF遠藤航が不在で、2試合連続で巻いたキャプテンマーク。ブラジル戦前の円陣で南野はそう話した。幼少期にも主将経験はほとんどない。所属のASモナコで巻いていたが、パラグアイ戦が日本代表での初腕章だった。それでもFW町野修斗が「もちろん響いた」と話したように、チームのため、日本のため、W杯のため、思いを乗せた言葉はチームを奮い立たせた。
「今まで1回も勝っていなかったし、ここ最近の僕らの成績的にもここで勝てたら自信につながると思ったので、そういうふうに言いました」
あれからもう24年ほど経つ。過去には13度の対戦で、5人しか得点できていなかったブラジル戦。当時、南野少年が擦り切れるほど見ていたのはブラジル代表のビデオテープだった。食い入るように何度も何度も目に焼き付けたのは怪物ロナウドのシザース。ドリブルしながら学校へ通い、ブラジル代表に憧れた。今、日の丸を背負い、主将マークを巻き、そのチームからゴールを奪った。“憧れ”を自ら超えていった。
3月、日本は北中米W杯出場権を獲得した。歓喜とともに周囲の目線は1年先のW杯本大会へ向いた。そのなかで切符を掴んだアジア最終予選バーレーン戦後、南野はつぶやいた。「ここからサバイバルが始まる」。誰よりもW杯の苦しさを知っている。誰よりも日本代表の重みを知っている。だから今を見続けてきた。カタールW杯後、落選が続き、復帰したのは23年10月。謙虚に、それでいてギラギラと日の丸に向き合ってきた。もう1度あの舞台に戻るため。“重圧”を自ら超えていった。
ただ本番は8か月後。後半の逆転劇は日本の“お得意”として世界に示すこととなった。「W杯では分析されて、カタールでやっていたような戦い方は警戒されるかもしれない。後半パワーを持っていくためにも前半は0-0で終える方がチームとしてはいい」。森保ジャパンに緩みは一切ない。越えるべき壁がある。再び歴史を変えるため、背番号8は今と向き合い続ける。
(FOOTBALL ZONE編集部・小杉 舞 / Mai Kosugi)





















