746日ぶり一撃「苦しい2年間だった」 背中押された“相談役”遠藤保仁「愚痴も聞いてもらえた」

約2年ぶりの公式戦ゴールを決めた食野亮太郎【写真:ZUMA Press/アフロ】
約2年ぶりの公式戦ゴールを決めた食野亮太郎【写真:ZUMA Press/アフロ】

G大阪の食野亮太郎はターン→技あり左足弾で復活

 746日――。ガンバ大阪MF食野亮太郎が10月2日のAFCチャンピオンズリーグ2(ACL2)のグループステージ第2戦ラーチャブリー戦(2-0)で約2年ぶりの公式戦ゴールを決めた。度重なる負傷に苦しんだ食野にとって復活の一撃。“らしい”ひと振りの裏には見上げるほど高かった壁に立ち向かい、努力を諦めなかった本人の姿と、支えた家族、MF遠藤保仁コーチらの姿があった。

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「本当に、長かった」

 天を見上げ、噛み締めるように両手をゆっくり下した。1点リードの後半アディショナルタイム、ペナルティーエリア右で受けた食野は華麗なターンで相手をかわし左足一閃。ボールがネットを揺らすと、ゴールを背にして喜びに浸った。駆けつける仲間たちにもみくちゃにされ、芝に手をつく。実に746日ぶり、2023年9月17日のアルビレックス新潟戦以来となるゴールだった。

 度重なる負傷、復帰しては離脱を繰り返しここ2シーズンは苦しんだ。コンディションも上がりきらず、ピッチが遠かった。自問自答を繰り返す日々。サッカーが楽しいのか、試合は楽しいのか。2019年にはプレミアリーグの強豪マンチェスター・シティへ完全移籍し、スコットランドやポルトガルでの経験を積んだ食野を焦らせたのは同世代の活躍だった。

「周りの選手が活躍して、同世代の選手が試合に出て、代表で活躍している姿も見て。悔しかった気持ちは正直ありました。でもサッカー選手としてご飯を食べさせてもらっている以上、サッカーに向き合わないといけない。試合に出られない中でも練習後にやれることがある。苦しい2年間やったけど人として成長できたと思う」

 代表で活躍……。飛び級でユースから昇格したため、入団は食野より1年早かったが同期の日本代表MF堂安律の姿はずっと刺激だった。比べられることもあった。だからこそ食野が自ら堂安の話題を切り出すことはあまりなかった。27歳になり、サッカーとの“距離”が変わった。

「若い時の自分やったら試合に出られへんかったら腐っていたと思いますし、人のせいにしていた。どれだけ自分にフォーカスしてやれるかをこの2年間ひたすらやってきた。それが人として成長しているところかな」

 もちろん1人ではなかった。家族の存在は支え。加えてピッチ内で鼓舞してくれたのは遠藤コーチら、G大阪OBの豪華コーチ陣だった。

「ヤットさんは自分の中では大きい。自分みたいに試合に出られない選手にも声をかけてくれて、ACL2でのゴールもすごく喜んでくれた。シュート練習に付き合ってもらったり、ああだこうだサッカーの話をしながら、愚痴も聞いてもらえた。(高木)和道さんや明さん(明神智和)も。そういう存在がチームにいてくれて助かった」

 すべての答えはラーチャブリー戦、ピッチに立った瞬間にあった。湧き出た気持ちは「サッカーが楽しい」。どうしてボールを追い続けているのか、実感した。「試合が楽しかった。そしたら頭も整理されてゴール前でいい形に入れた。自分らしいゴールだったんじゃないですかね」。食野は闘志を燃やしている。「残りのシーズンでどれだけ自分の価値を証明できるか。自分に矢印を向けてやっていきたいです」。ここからもう1度。G大阪を背負うアタッカーの挑戦が始まる。

(FOOTBALL ZONE編集部・小杉 舞 / Mai Kosugi)



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