J2長崎、欧州クラブと親善試合計画 社長が明かす…最後の被爆地「世界に発信したい」

長崎の代表取締役社長を務める田河毅宜氏「長崎を世界で最後の被爆地に」
V・ファーレン長崎は8月9日、「長崎原爆の日」に初めてとなるホームゲームを開催した。平和祈念マッチとして北海道コンサドーレ札幌を迎え、試合前には福山雅治さんがサプライズ登場。平和の大切さを発信したなか、代表取締役社長の田河毅宜氏がインタビューに応じ、今後の展望を語った。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・工藤慶大/全2回の1回目)
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「V・ファーレン長崎は、創設時より平和の大切さをサッカーを通して世界中に発信していくという理念を掲げています」
このように語った田河社長。この理念を日本全国へ発信するには、今年はまたとない好機だった。
「偶然ですけど、奇跡的に今年は節目の年でした。被爆80年、クラブ創設20周年、そして初めての8月9日の当日の試合。それに加えて新しいスタジアムが長崎市にでき、色々なタイミングが一致しました。この最後の被爆地である長崎で、終戦から80年経った今、被爆地から程近いあの場所でサッカーの祭典が行われる。この事実を、より多くの人に知ってもらいたいと考えました」
今年1月に代表取締役社長に就任した田河氏は、数か月前から試合当日に向けて動き出していた。「何か特別なことをやるというよりは、この日にこの新スタジアムでサッカーの祭典が行われるということ自体を、多くの人に発信したい」というクラブの思いがあったという。
そして迎えた8月9日、試合前に派手な演出は行われなかった。しかし、福山さんの楽曲「クスノキ」の合唱が行われると、その直後に本人が登場。「スポーツは平和の祭典、平和の象徴だと思っています。こうやってスポーツで存分に戦える、今この瞬間こそが平和だと言えます」と挨拶し、会場を沸かせた。
この様子は全国ニュースでも報じられるなど、大きな反響があった。「メディアの力を借りて、発信していくという方向性で企画を考えました」と舞台裏を明かす田河社長。地元のスターで、平和への想いを歌った「クスノキ」を作詞作曲した福山さんの力を借り、V・ファーレンの取り組みを日本中に届けた。
「これに関しては我々クラブだけではなく、ジャパネットグループ全体の力で実現しました。非常に多くの反響もありましたし、何よりレギュラーシーズンの1試合を、サッカー関係のメディアさんだけではなく全国のメディアの方々にも取り扱っていただけたのは、一番大きな価値だったかなと思っています」
今回の平和祈念マッチは日本全国への発信だったが、田河社長は「これから先は海外のクラブとの親善試合を通して、長崎を世界で最後の被爆地に、というところを世界に発信していきたい」とすでにその先を見据えている。「いつになるかは分からないですけど」としながらも、その取り組みは始まっている。
今年4月、クラブはドイツ1部シュツットガルトとエリートフットボール・パートナーシップを締結。これはアカデミーやコーチの留学などを目的とするものだったが、提携の背景にはもう一つの狙いがあった。
「スポーツを通して平和のメッセージを届けていくという部分に、彼らが深い理解を示してくれました。その理念が一致しての提携だったのです。いずれ彼らを日本に招き、親善試合をやりたい。将来的にはそうした海外クラブとの活動を通して、最後の被爆地・長崎を世界に届けていきたいなと思っています」
そして、もう一つの大きなテーマは、「8月9日というその1日がフォーカスされがちですが、1年間を通してこの日だけではなく、サッカーを通して平和のメッセージを世界に届けていく」ということ。「年間を通して、大きな活動、平和のメッセージを発信する機会をたくさん作っていきたいなと考えています」と田河社長は力を込める。
そこで大きな役割を担うのは、やはりピーススタジアムだろう。「この新しいスタジアムが非常に注目されているなかで、チームも力をもらっているので、何とかクラブとしてはJ1昇格して、J1のステージでもっと全国の多くの人に、クラブの活動を届けていきたい」。長崎は大きな使命を胸に、昇格へ突き進んでいる。
(FOOTBALL ZONE編集部・工藤慶大 / Keita Kudo)





















