あえて選んだ”後攻”…味方から言われた「え?」 U-20主将がW杯へ懸ける思い「中心でやらないと」

U-20W杯主将の市原吏音【写真:アフロ】
U-20W杯主将の市原吏音【写真:アフロ】

U-20W杯で日本代表の主将を務める大宮DF市原吏音

 いよいよ9月27日にU-20ワールドカップ(W杯)チリ2025が開幕を迎える。日本はエジプト(9月28日)、チリ(10月1日)、ニュージーランド(10月4日)と同組に入り、初の優勝を目指すこととなる。この大会の予選となっていたU-20アジアカップでキャプテンを務め、U-20W杯のメンバーにも選出されたDF市原吏音(RB大宮アルディージャ)に大会へ向けた思いを聞いた。(取材・文=河合拓/全4回中の第1回)

【PR】DAZNを半額で視聴可能な学生向け「ABEMA de DAZN 学割プラン」が新登場!

   ◇   ◇   ◇  

 7月7日に20歳になった市原だが、生活にも自身にも大きな変化はないと話す。それでも20歳という年齢制限のある世界大会に懸ける思いは強い。

 すでに対戦相手も決まっているが、「自国開催のチリが同じグループにいるのは本当に嬉しい」と、楽しみな対戦相手として開催国となった南米の強豪国をあげ、「そのなかでどういうパフォーマンスができるか。南米の選手は絶対に強いですし、楽しみたいです」と、圧倒的アウェーの環境で行われる一戦を心待ちにした。

 対戦相手の情報については「あんまりどういうチームかはわからない。向こうに入ってスカウティングを聞いてからになると思う」という市原は「僕個人としては、やっぱりやるべきことをしっかりやることが大事だと思います。相手どうこうよりも、自分たちがやってきたこと、やるべきことを出せればいいんじゃないかなと思っています」と、まずはここまで積み重ねてきたことや自分たちの最大限を出すことに集中する考えを示した。

 チームとして大きな積み重ねの機会となったのが、今年2月から3月にかけて行われたU-20アジアカップだ。日本は準決勝でオーストラリアに0-2で敗れてベスト4で大会を終えたが、準々決勝では強豪のイランに1-1の末に迎えたPK戦で4-3と勝利してU-20W杯の出場権を獲得した。ここでチームとして積めた経験を「大きかった」と市原も振り返る。

「本当に簡単な大会ではなかったですし、これまでも『日本代表はずっとU-20W杯に出場してきた』と言われていたので、プレッシャーもありました。イランはイヤな印象もあったのでグループステージを2位で突破した後に『これ勝たないとだけど、大丈夫かな?』という不安もありました。でも、結果的にイラン戦がみんな一番良かったんじゃないかなと思います。PKも経験できましたし、本当に良い大会になったと思います」

コイントスに勝ち後攻を選んだ市原

 このイラン戦のPK戦にはちょっとしたエピソードがある。日本のキャプテンの市原は2度のコイントスに2度とも勝ち、先攻と後攻を選ぶことができた。そして迷わず後攻を選択した。

「特に理屈とかはないんですけどね。コイントスは2回やるんです。最初のコイントスでエンドを決める。それに勝って日本側でやることになり、もう一回やって、また勝って。その時に先攻、後攻を選ぶんですが、特に理由はないのですが後攻で勝てるフィーリングがあったので、後攻にしました」

 すでにPKのキッカーの順番も決まっており、自分が5番手を務めることになっていた市原は「あの時、本当に降ってきました。言葉では表しにくいのですが、勝てる気がしたんですよね。でも、『ヨッシャ、勝った。後攻やで!』ってみたいなことを言ったら、龍之介に『え?後攻?』みたいに言われました」と、舞台裏を明かした。

「後攻の方が有利だと思っていたんですよね」と苦笑する市原だが、一般的にPK戦は先に成功した場合、相手にプレッシャーをかけられるため、先攻が有利だとされている。

 そんな定説もあるが、市原の感覚は間違っていなかった。日本はPK戦で無事に4-3の勝利をおさめ、最後のキッカーを務めて勝利の輪の中心に位置することとなった。U-20W杯の出場権を得た、この試合後には「後攻は取るな」と釘を刺された市原だが、勝利したうえでPK戦のセオリーを学べたことに「良かったと思います」と安堵する。

 来るU-20W杯。再びキャプテンを務めることが濃厚な守備の要は、今大会における自身の役割について、「U-20は確実に自分が中心となってやんなきゃいけないなと思ってますし、なるべく一つでも良い順位に自分が引っ張っていきたいなって思ってます」と決意を語る。この大会を戦って、日本代表のレギュラーに定着した選手や欧州に渡った選手も多い。高いポテンシャルに大きな期待が寄せられている市原が、世界を相手にどのようなパフォーマンスを見せるか注目だ。

page1 page2

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング