米国遠征が持つ「計り知れない価値」 キャンプ地選定へ…教訓にすべき宮本会長の「しんどかった」経験

W杯開催前年、9月の米遠征は現地を「体験できる」
北中米W杯まで残り約9か月。森保一監督率いる日本代表は8大会連続のW杯出場権獲得を決め、悲願のW杯制覇に向けた試金石となるアメリカ遠征を実施中。「日本サッカー界の未来を考える」を新コンセプトに掲げる「FOOTBALL ZONE」のインタビューに、日本サッカー協会(JFA)の宮本恒靖会長が応じ、アメリカ遠征の意味を熱弁。主将として日本代表を牽引した宮本会長ならではの視点で展望を明かす。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小杉舞)
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森保ジャパンが活動するのはアメリカ西海岸。広大な土地に昼夜で激しく変化する気温、日本との時差……。北中米W杯まで残り1年を切り、本大会に向けた準備も着々と進められる。森保一監督率いる日本代表は開催国の1つであるアメリカに遠征し、同国代表、メキシコ代表と対戦する。この遠征は次のW杯で優勝を目指す日本代表にとって単なる強化試合以上の意味を持っている。
メキシコとは西部のカリフォルニア州オークランド、アメリカとは東部のオハイオ州コロンバスで対戦する。W杯に出場する両国と力試しができるのももちろん、それと同時に重要なのは選手たちが本番の環境を肌で感じることだ。宮本会長は自身の現役時代を重ね合わせてこう語る。
「環境面、時差……。やっぱりそこに本大会の前年に行けるというのが大事だと思います。(西部と東部での試合で現地の)移動も、変わる気候も体験できる。メジャーリーグサッカー(MLS)でやっている選手は日本にはそんなにいないので。自分のことを思い返すと、コンフェデレーションズカップをやって、ドイツの雰囲気を知れたのはすごく大きかった」
現在の日本代表の多くは欧州でプレーしているが、北中米での経験はほとんどないに等しい。2006年のドイツW杯の前年に、同国で行われた「FIFAコンフェデレーションズカップ2005」にも出場した宮本会長自身、本大会の前年に開催国の環境に触れた経験が活かされたという。事前に環境を知れること、情報を収集できることは、計り知れない価値を持つ。
ベースキャンプ地を決める上でも価値ある遠征になる。すでに協会スタッフが候補地の情報収集を重ねている。正式なキャンプ地の選定は12月の組み合わせ抽選の結果によるが、その前に監督、選手らが現地の環境に触れることも大きな意味がある。キャンプ地選定には様々な要素を総合的に判断する必要がある。宮本会長は環境の重要性を説く。
宮本会長がドイツW杯時代に痛感「しんどかった」
「移動、ストレス、宿泊施設のクオリティーとか、いろいろ総合的に判断すべきだなと思います。もちろん過去のW杯の教訓を活かしながら、2006年の自分たちのドイツのこともちゃんと残っている。さらに2010年の良かったこと、2014年のこと、それぞれ蓄積はあると思っています」
自身が出場した日韓W杯、そしてドイツW杯のベースキャンプ地をこう回顧する。
「ドイツはちょっとだけ集中しにくい環境ではあったかな。(日韓W杯のときは)北の丸でやった時は、すごくクローズドなところでやらせてもらえて、集中できた。それに比べると、ドイツのボンは、スタジアムが解放されているし、ホテルに帰ってちょっと散歩しても人が寄ってくるし。(集中をするという意味では)やはりしんどかった。それは考えないといけない」
選手が集中して調整を行い、コンディションを上げていくために最適な環境を用意することが、日本サッカー協会として果たすべき役割であることを、宮本会長は十二分に理解している。アジア最終予選でチャーター機を用意したように、必要なところには、投資を惜しまない考えでいる。
「やはりワールドカップってお金がかかるもの。例年の予算とは違うものを組まないといけない部分もある。ちゃんとパフォーマンスを発揮できるように、しっかりとした予算を組まなければいけないと思っています」
米国内の物価や人件費の高騰、そして円安もあり、支出が膨らむことは避けられそうにない。それでも、宮本会長は「間違いなく増えると思いますけど、パフォーマンスにつなげてもらうというのが一番大事だと思います」と断言する。
9か月後に迫るW杯本大会に向けて、このアメリカ遠征は、単なる強化試合を超えた戦略的な意味を持つ。現役時代の経験を持つ宮本会長だからこそ見える視点で、日本代表の北中米W杯での躍進への道筋を描いている。



















