日本の大学生がセリエA撃破も「驚きではない」 ザック右腕が称賛…来年は「さらに重要な試合を計画」

ジャンパオロ・コラウッティ「みんなにとって有益で重要な試合ができた」
2010~2014年にアルベルト・ザッケローニ氏が率いた日本代表で、テクニカルアシスタントコーチを務めたジャンパオロ・コラウッティ氏。現在は、イタリア・ペルージャを拠点にサッカー指導者、経営者として活動しており、2019年よりSES Perugia Academy ASD会長を務めている。また2020年からは Sport Events SocietyのCEO としてスポーツイベントの企画、運営を主導し、全日本大学選抜が8月4日~16日に実施したイタリア遠征にも携わった。遠征中にはイタリア・セリエAのフィオレンティーナとの親善試合に2-1で勝利。日本の大学サッカーのリアルな評価を聞いた。(取材・文=倉石千種)
【PR】DAZNを半額で視聴可能な学生向け「ABEMA de DAZN 学割プラン」が新登場!
◇ ◇ ◇
――全日本大学サッカー選抜がイタリアに遠征することになった経緯は。
「JUFA(全日本大学サッカー連盟)は今回僕たちのところへ来るのは2回目です。初めて来たのは、ユニバーシアード・イタリア2019年の1年前、2018年に我々のところに来ました。ユニバーシアードと同じ時期でした。雰囲気、環境を満喫するために、2018年に体験しました。その時にも、プロ選手との対戦とプリマベーラとの対戦のプログラムでした。JUFAの中野雄二理事長からこのグループは毎年、とても強く成長していることを聞いていたので、今回はさらに対戦相手のレベルを高めて、オーガナイズし、トップチームとのみ対戦を計画しました。ジェノア、チェゼーナ、ヴェローナ、ミランのフトゥーロ・ミラネッロ(2024年創設ACミランの2軍・未来のミラン)最後にフィオレンティーナと対戦しました」
――2018年にオーガナイズする経緯となったのは。
「JUFAと我々は、とてもいい信頼関係があります。中野雄二理事長、櫻井専務理事と、とてもいい関係が築けています。オンラインで会議を重ねて、エージェント会社としてだけでなく、技術的にも、いろいろな意見交換、私の視点を説明してきました。ザッケローニ監督のアシスタントコーチを経験しており、日本のサッカーをよく理解できているので、お互いの関係を深くつなげています。大学生のサッカー選手たちが、イタリアへ遠征することは、とてもいいチャンスだと思います。イタリアのトップチームと親善試合することは、最高のテストだと思います。JUFAにとっても、10-0、12-0で勝つ練習試合をするのは、そんなに意味がないので、彼らにとって実力を図るいいテストとなるし、セリエAのトップチームにとっても、フィジカルの準備期間であるこの時期に対戦するのは、いい練習試合になります」
――実際に日本の大学生は、どんなレベルだと感じているか。今年のチームは特に強かったのか。
「日本の大学サッカーは常に高いレベルでした。過去にも、すでに高いレベルでしたし、日本のサッカーのカンテラ(育成組織)として、プロ選手を発掘する場だと思います。日本代表にも選手を引き上げており、ここ最近では、三笘薫、上田綺世のような選手を発掘しています。だからこの全日本選抜はとても重要な選手たちです。日本にいる時にも、多くの選手たちをよく見ていましたし、大学生たちのプレーもよく見ていました。私にとっては、驚きではないのです。私が長年、日本の大学生について思っていたことが、そのまま結果になっている。大学生たちは、成長できる要素を持っており、指導者たちも優秀なのでどんどん成長できるのです」
――日本の大学生たちを初めて強いと確認したのはいつだったか。
「日本人選手たちと一緒に仕事をする幸運を得たのは、1998年でした。27年前です。日本人選手たちに大きな可能性、ポテンシャルを持っていると感じていました。その後も、大学生と常に関係を続けて、指導を続けて、ザッケローニ監督と一緒に仕事することもできました。日本サッカーの成長のポテンシャルを私は常に信じていました」
――この遠征での成果、周囲からの反響は。
「中野理事長に聞いてみる必要がありますが、選手たちはとても満足していました。ミラン・フトゥーロとの親善試合には、トップチームのアッレグリ監督も試合を見に来て、クオリティーの高さを賞賛していました。ジェノアのパトリック・ヴィエラ監督、ヴェローナのザネッティ監督、そしてフィオレンティーナのピオリ監督も、みんなが満足していました。セリエAのトップチームも、競争力のある対戦相手と親善試合ができたことを喜んでいました。ジェノア戦とチェゼーナ戦は引き分けで、チェゼーナの得点はPKだったので、勝つこともできた試合でした。ヴェローナ戦は最後の3分に得点を許して負けました。ミラン・フトゥーロには4-1で勝ち、2フィオレンティーナには2-1で勝ちました。イタリアのリーグはこの時期は準備期間の段階で、フィジカルが完全ではない時期ではありますが、日本の選手たちは、シーズン真っ只中なので一番いい時期でした。それでもテストマッチとしてはみんなにとって有益で重要な試合ができました」
――イタリアのサッカーと日本のサッカーの違いをどう感じているか。
「イタリアのサッカーは戦術的により難しいリーグです。ヴェローナには負けましたが、ザネッティ監督は、後半は全体のラインを下げて、チャンスを待っていました。攻撃の転換で、戦術的な工夫の勝利だったと言えるでしょう。このステージ、この試合はみんなに役に立つ有益な体験となりました。来年はさらに重要な試合を計画します。今回も計画はありましたが、オーガナイズの段階で実現できなかったクラブもありましたから」
――選手たちは言葉の面はどうしていたか。
「チームに通訳はいましたが、何人かは英語を話していました。このグループは、98年の選手たちに比べて、もっとオープンで、よりとても溶け込みやすい雰囲気でした。そういうことも関係性を築くためには有利になります」
――実際に選手のレベルも上がっているか。
「確実に上がりました。ベースはすでにあったけれど、みんなとても優秀な選手たちでした。日本人の選手たちはみんな優秀で、技術的に優秀ではない選手は一人もいません。アスリートの面でも、戦術的にも、レベルが上がっています。フィジカル的にもみんな体格がよくなっています。常に持続して成長しています。毎年、毎年、日本は確実にレベルが高くなっています」
(倉石千種 / Chigusa Kuraishi)

倉石千種
くらいし・ちぐさ/1990年よりイタリア在住。1998年に中田英寿がペルージャに移籍した時からセリエAやイタリア代表、W杯、CLをはじめ、中村俊輔、本田圭佑、長友佑都、吉田麻也、冨安健洋など日本人選手も取材。バッジョ、デル・ピエロ、トッティ、インザーギ、カカ、シェフチェンコなどビッグプレーヤーのインタビューも数多く手掛ける。サッカーのほか、水泳、スケート、テニスなど幅広く取材し、俳優ジョルジョ・アルベルタッツィ、女優イザベル・ユペール、監督ジュゼッペ・トルナトーレのインタビューも行った。




















