電波の無いスマホも…厳重注意で「呼び出されました」 田中パウロ淳一が曲げない信念

YouTubeなどの収益の使い道「無駄に自分に使っているわけではないです」
J3で昇格争いをしている栃木シティで、一際注目を集めるのがFW田中パウロ淳一だ。今でこそインフルエンサー系サッカー選手としての地位を確立したが、ここまで辿り着くには様々な試行錯誤があったという。過去の失敗談やサッカー界への思い、収益の使い道にも迫った。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・工藤慶大/全6回の3回目)
【PR】DAZNを半額で視聴可能な学生向け「ABEMA de DAZN 学割プラン」が新登場!
◇ ◇ ◇
「新しいことをやるタイプなので、怒られたこともめちゃめちゃあります。チームがやったことないこととか、Jリーグで経験ないことは、もう全部怒られたというか、止められてきたので。ここに来て全部解放している感じです」
2012年に川崎フロンターレに入団し、キャリアを踏み出した田中。明るいキャラクターでファンからも愛されてきたが、「例えば日本代表レベルだったら許されるけど、あまり無名のやつがやるなっていうことはけっこうありました」と振り返る。
2019年3月に当時マルセイユに所属していた元イタリア代表FWマリオ・バロテッリが、ゴール後にスマートフォンで自撮りして話題に。直後のジェフユナイテッド千葉戦でゴールを決め、これを真似した田中がスマートフォンを手に持ってパフォーマンスしようとしたが、審判員によって静止されてしまった。
「厳重注意ですね。電波の無い携帯でやれば大丈夫だと思ったんですけど、呼び出されました。例えば暴力とか差別とか、そういうのはダメですけど、それ以外なら目立ってナンボだと思っていました。子供たちに悪影響にならないことをやろうと取り組んでいました」
では、ここまでして目立つことにこだわるのは、なぜなのだろうか。胸に秘めているのは、幼き日に憧れたJリーグのスター選手たちだ。「僕のイメージとしては、一時代前のJリーグ選手はテレビにも出て、試合でも活躍していました。それがあったから、ラモス瑠偉さんとかはすごく知名度があったわけで。ああいった集客の仕方をしたいなとは思っています」と熱い思いを明かす。
「今は時代的にDAZNさんなどが中心です。テレビだけではないですけど、SNSや違う形でも露出する機会を増やしていかないと。それでまたスタジアムとかに見に来てもらえたり、サッカーを見たときに普段と違う一面を見せられたら、もうちょっと子供たちに影響を与えられるかなという感じですね」
サッカー界への熱い思いを語る真剣な眼差し。すると、ふと我に返ったように「いやいや、真面目じゃないっす!」と笑顔を見せるのがパウロ流だ。残りのサッカー人生を逆算して、「あと5年できるかできないかだと思うので、無駄にしたくないのと。あとは今までこれやりたい、あれやりたいというのは全て封じ込められてきたので、それをただただ解放しているだけですね」と語る。
ホームゲーム全試合で小学生を招待
風向きが変わったのは2023年2月3日、当時は関東1部だった栃木シティへの加入だ。選手としてのパフォーマンスはもちろんだが、発信力にも大きな期待を寄せられた。TikTokでバズるようになると、田中の本業をJリーガーだと知らない人たちも増えてきたが、本人は「いや、嬉しくないですね」と否定する。
「でも、それがなかったらただの無名な選手と考えたら、すごくありがたいことだと思っています。別に他のチームに行きたいと思っていないので、このまま栃木シティが大きくなるのと一緒に、僕も大きくなれればなと思っています」
一方、SNSを通じて興味を持ち、スタジアムまで足を運んでくれる人たちも現れた。そのことについては、「嬉しいですね。サッカーのときは真剣にやっているので、それを見てファンになってもらえる人とかもいるんです。それを考えるとやりがいを感じています」と話す。地道な発信が実を結び始めている。
今季のJ3で旋風を巻き起こしている栃木シティだが、J1やJ2のクラブと比べると、豊富な資金力があるわけではない。「お金があったら、別にSNSもやらないです(笑)。僕たちはお金があるわけではないので、お金では買えないようなやりがいを作るしかない」と田中が語るように、様々な企画を駆使している。
そのなかの一つが、「パウロシート」だ。栃木シティのホームゲーム全19試合で、小学生のサッカーチームを対象に毎試合20人を招待。「無駄に自分に使っているわけではないです」とYouTubeの収益などを充てていると明かす。一見ふざけているように見える発信も、すべてはサッカーにつながっているのだ。



















