三笘薫をイタリアで紹介、17歳を日本代表推薦 才能発掘の慧眼…日本は「人材の宝庫」

日本代表でアシスタントコーチをコラウッティ氏「大学サッカーは重要な存在」
アルベルト・ザッケローニ氏が率いた日本代表チーム(2010年~14年)でテクニカルアシスタントコーチを務めたイタリア人のジャンパオロ・コラウッティ氏。印象に残っている日本人選手との出会いについて、「大学在籍中から能力が際立っていた」「目を奪われた」と振り返る。そんなイタリア人コーチは日本の育成力を評価し、「人材の宝庫」と称賛している。(取材・文=倉石千種)
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――現在の日本で注目している選手は?
「三笘薫、久保建英、遠藤航……いずれも非常に優秀な選手たちです。タイプはそれぞれ異なりますが、全員が素晴らしい。三笘に関しては、大学在籍中から能力が際立っていました。当時の彼は大学選抜の一員としてイタリアでの遠征や試合に参加し、その時から優秀さはすぐに分かりました。彼にとってもイタリアでの経験は良い糧になったはずです。大学選抜の試合は、Jリーグや欧州でプレーできる準備が整っているかどうかを見極める絶好のチャンス。三笘は当時から高いレベルにありました。だから、今の彼の活躍も納得の結果だと感じています。実際、イタリアの関係者に紹介しましたが……頭が硬かったです」
――若い才能を見極めることは大切だと思いますが、印象に残っている日本人選手との出会いはありますか?
「2011年に日本で仕事をしていた時、天皇杯の準々決勝から決勝まで観戦しました。日本代表のイタリア人スタッフはみんな母国に帰っていた時期でしたが、私は東京に残って試合をチェックしていた。当時、京都サンガF.C.の久保裕也に目を奪われました。彼が入ったことで試合の雰囲気がガラリと変わり、アシストとゴールで勝利を呼び込んだ。まだ17歳の若さでしたが、私はすぐザッケローニ監督に電話して、彼を日本代表に推薦しました(2012年2月24日のアイスランド戦に18歳で初選出)。ネイマールだって、ブラジル代表初選出は18歳。準備ができている選手はすぐに分かる。年齢は関係ない。様々な成功と失敗を経験し、成長につなげていくことが大切です」
――大学選抜という日本独自のシステムについては、どう捉えていますか?
「非常にポジティブに見ています。高校卒業後、そのままJクラブに入らない選択肢もありますし、大学には才能のある選手がたくさんいる。大学サッカーは日本サッカーの未来にとっても、非常に重要な存在だと思います。すでに数多くの才能が、そこからしっかり育っています。大学も含めて日本には優秀な選手が本当に多くいますし、未来の代表を支える人材の宝庫だと思います」

大学→プロの道「それは素晴らしいこと。ただ…」
――日本の大学は分かりやすい例ですが、イタリアと日本では育成のシステムが異なりますね。
「それにはポジティブな面も、ネガティブな面もあると思います。私が日本代表の仕事をしていた時、五輪代表(ロンドン世代・リオ世代)も追っていました。大学でプレーしている有望株もいて、『大学を終えてからプロになる』という方針で、それは素晴らしいことだと思います。学業も非常に大切ですから。ただプロ選手としては、その時期は成長のチャンスであるのも事実。そういう意味では、様々な捉え方ができるかと思います」
――イタリアではピラミッド型のスカウトシステムがあって、どこからでも這い上がれると聞きます。
「確かに、イタリアではスカウトが全国に散らばって、広い裾野で選手を拾い上げる仕組みがあります。ただ今では逆にスカウトが多すぎるくらいで、正直あまり優秀じゃない人もいる。だからこそ、スカウトの質を見極める姿勢が大切です。私としては、子供の時はまずは楽しみながら、いろんなポジションを経験させるべきだと思っています。成長していくなかでプレーの幅やサッカーの奥深さを知り、楽しさの中で技術を学び、そこから専門性やポジションを徐々に見出していくのが理想。段階的に、監督やクラブが選手の適性を見ながら方向性を定めていく。それが自然な成長の形だと思っています」
(倉石千種 / Chigusa Kuraishi)

倉石千種
くらいし・ちぐさ/1990年よりイタリア在住。1998年に中田英寿がペルージャに移籍した時からセリエAやイタリア代表、W杯、CLをはじめ、中村俊輔、本田圭佑、長友佑都、吉田麻也、冨安健洋など日本人選手も取材。バッジョ、デル・ピエロ、トッティ、インザーギ、カカ、シェフチェンコなどビッグプレーヤーのインタビューも数多く手掛ける。サッカーのほか、水泳、スケート、テニスなど幅広く取材し、俳優ジョルジョ・アルベルタッツィ、女優イザベル・ユペール、監督ジュゼッペ・トルナトーレのインタビューも行った。




















