前向きではなかった古巣との“対戦” ブーイングも…助っ人が「思っていた以上に嬉しかった」理由

浦和戦に出場したFC東京のアレクサンダー・ショルツ【写真:徳原隆元】
浦和戦に出場したFC東京のアレクサンダー・ショルツ【写真:徳原隆元】

アレクサンダー・ショルツは古巣の浦和レッズと初対戦だった

 ミックスゾーンに笑顔で現れたのは、勝利ができたからではなかっただろう。7月19日のJ1リーグ第24節でFC東京は浦和レッズと対戦し、3-2で勝利した。この試合、4バックの一角に入ったDFアレクサンダー・ショルツにとっては、かつて所属した古巣との一戦。かつてのチームメイト、思い入れのあるチームとの対戦に決して前向きではなかったが、試合開始から試合終了までFC東京の勝利のために全力で戦った。

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 ミックスゾーンで、浦和の番記者との再会を喜んだショルツは、「振り返るには、あまりにも多くのことが起こりすぎた試合だった。見ているキミたちにとっては、楽しい試合だったに違いないね。多くのゴールが決まった。僕は試合前に『そんなに多くのゴールは決まらないだろう』と言っていたが間違っていたね」と、90分を振り返った。

 前半6分、MF遠藤渓太がDF長友佑都のクロスからヘディングで先制点を決めた場面では、ショルツがボールを持ち上がって長友にパスを出して得点の起点となった。「FC東京が僕を欲していたのは、これが理由だろうね。これを求められていると思うから、もっとやっていきたい。今日、チームはボールを持って良いプレーができたし、中盤の選手を中心に流動性を生み出せていた。多くのチャンスを作れていたから、そこはすごく満足ができるね」と、3ゴールを挙げたチームの攻撃面に満足を見せた。

 守備面では2失点と満足いく結果にならなかったが、2点目の場面ではボールのないところで浦和のFW渡邊凌磨と接触して倒れ込んだ。すぐに立ち上がってMFマテウス・サヴィオからボールを受けた渡邊を追ったが、間に合わずに1-2と逆転されるゴールを許した。

 この場面について聞くと「あなたは、どう見えた?」と逆に聞き返し、接触があったからファウルだったと思うと伝えると「私も完全にあなたに同意する。100%だ」と言い「主審からは、あれが意図的だったか、意図的ではなかったかの問題だと言われたんだ。でも、ファウルをした時に、そこに意図があったかどうかは重要ではないはずだ。僕には理解できなかったし、僕は10回同じ事があったら、10回ファウルになる事象だと思っている。相手には終盤まで、ほとんどチャンスを作らせていないなかでの失点だったから、とても残念だったよ」と、自身の考えを口にした。

 その渡邊とは試合終了直前にも、コンタクトシーンがあった。ショルツが振り切られそうになり、背後からタックルを仕掛けた場面だった。背後からの危険なタックルで、スタンドからは一発レッドになってもおかしくないかと思われたが、そこにはショルツなりの気配りもあった。

「あの状況では、ああせざるを得なかった。その前のプレーで凌磨からボールを奪えると思ったが、トントントンと抜かれるような形になり『これはマズい。今、ここで行かせてはいけない』と思って、自分のプレースタイルではないけれどタックルをした。ただ、足をなるべく高く上げて、怪我にはつながらないようにしたから、イエローカードだろうなと思っていた」

 そして、古巣に対しての勝利について「自分が思っていた以上に、勝利が嬉しいよ。今、僕はこのチームでプレーしていて、この試合に本当に勝ちたいと思っていた。チームメイトたちもこの試合に向けて僕を助けてくれたし、素晴らしい試合を作ってくれた。彼らに感謝しているし、これ(古巣と対戦することがあること)もサッカーだよ」と語った。

「試合後には、浦和へのリスペクトとして、喜びすぎないようにもしていたんだ。でも、サポーターから勝利の『シャー!』を求められて、FC東京のサポーターへのリスペクトもあったし、嬉しかったからやらせてもらった。あまりうまくできなかったから練習をしないといけないね。試合後には浦和のサポーターの前にも行って、日本式のお辞儀で挨拶をしたよ。彼らをリスペクトしていると示したかったからね」と、古巣サポーターからのブーイングを理解しながらも自身の思いを語った。

 約10分間、報道陣の質問に答えたショルツは、「この試合が終わって、本当に嬉しいよ。少なくともリーグ戦では、もう浦和と対戦しなくて済むからね」と、この日一番の笑顔を見せた。

(河合 拓 / Taku Kawai)



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