森保J、連覇の鍵を握る“六人衆”「質を証明したい」 最大勢力が誓うダブル優勝→W杯切符

E-1の初戦に出場した広島の選手たち【写真:Noriko NAGANO】
E-1の初戦に出場した広島の選手たち【写真:Noriko NAGANO】

E-1選手権第2戦へ、連覇の鍵は広島勢

 7月12日に行われるE-1選手権第2戦・中国戦(龍仁)が目前に迫ってきた。前回大会に続く連覇を狙う日本代表の森保一監督は「できるだけ多くの選手を使いたい」と繰り返しコメントしており、10日のトレーニングでも、8日の初戦・香港戦から主力組のメンバーを全員入れ替えていた。

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 この日は古賀太陽(柏レイソル)が下肢の疲労でホテル調整となった影響もあってか、大ベテランの長友佑都(FC東京)が3バック左に入るという異例の配置も確認された。また、追加招集の原大智(京都サンガF.C.)、田中聡(サンフレッチェ広島)もメンバー入りし、彼らを含めた5人が代表デビューを飾る見通しだ。

 まず、長友や植田直通(鹿島アントラーズ)らワールドカップ(W杯)経験者がチーム全体を引き締め、中盤では田中と宇野禅斗(清水エスパルス)のフレッシュなコンビに統率力が求められる。試合のテンポを握るうえで、中盤の働きは大きな鍵を握る。

 今回の代表には田中を含め、ジャーメイン良、川辺駿、荒木隼人、大迫敬介、中村草太と広島勢が6人も選出されている。

 森保監督はメンバー発表会見の際、「チームではなくて個々の特徴のある選手、力のある選手を選考している。結果的にどこかのチームが多いという状況になっているが、チームとしてではなく、個人を見て絞り込んでいることを理解してほしい」と説明したが、古巣である広島の選手たちに急造チームを託したいという思いがどこかにあるのかもしれない。

「1チームからこんなに多く選んでいただいているのは、個の質の高さの1つの証かなと感じています。だからこそ、このチームで広島の選手が活躍することで、チームの価値が上がる。それぞれが各々のポジションで自分の役割を全うし、サンフレッチェ広島、選手の質を証明していければと思います」

 2019年韓国大会、2022年日本大会に続き、3大会連続でE-1参戦中の大迫が力を込めたように、ある意味、今大会の成否が広島勢に懸かっていると言っても過言ではない。

注目はジャーメイン&中村、問われる決定力と持続性

 実際、初戦ではジャーメインがA代表デビュー戦で4ゴールという95年ぶりの快挙を達成。後半から登場した中村も持ち味のドリブル突破から豪快な一撃を決め、6得点中5得点を広島勢が叩き出した。もう1点を決めた稲垣祥(名古屋グランパス)も、かつて広島に在籍し、森保監督の指導を受けた選手だ。

 中国戦では、田中の先発が濃厚。ジャーメインや中村は途中出場の可能性もあるが、勝負どころは15日の最終戦・韓国戦だ。E-1選手権では毎回、日韓戦がタイトルの行方を左右する。指揮官も大一番には間違いなくベストメンバーを送り出す。ここまでの流れを踏まえれば、GK大迫、3バック中央に荒木、中盤に川辺、前線にジャーメインと、広島勢がセンターラインを形成する形が有力視される。

 韓国戦で勝負強さを発揮し、タイトルを手繰り寄せられれば、大迫の言うように「広島の質」を証明できる。ミヒャエル・スキッベ監督体制4年目の今季J1では、勝負弱さが垣間見える部分もあるだけに、代表戦では勝ち切る力を見せてほしい。

 特にポイントとなるのが、決定力の部分だ。初戦で4ゴールを決めたジャーメインには、より重圧のかかる場面でも結果を残す“持続性”が問われる。

「1回だけの爆発で終わりたくないですし、継続していきたいという思いがあるので、得点だったり、チームに求められていることをやりたいと思います」と本人も意欲を語る。さらに「あと1、2点取れれば(大会)得点王を取れると思う。あと2試合あるので、出場できれば両方のゲームでしっかりネットを揺らしていきたい。インパクトもデカくなると思うので、狙いたいです」と野心も覗かせており、それが前向きな方向に出ればベストだ。

 一方、大卒ルーキー・中村も“勝負強さ”が光る。ここ一番の決定力はジャーメイン以上かもしれない。大迫も太鼓判を押す。

「彼(中村)はゴールの嗅覚を持っていて、周りに生かされるのも上手いし、自分で持っていける力もある。それを香港戦の最後に証明してくれたのは、チームメイトとしても嬉しかったですね。それに勝負強い。チームでは大事な逆転ゴールだったり、先制点っていうのを決めてくれる。本当に代表デビュー戦とは思えないような彼らしいゴールだったと思います」

ジャーメインや中村が代表でブレイクの兆し…期待される好循環

 残る2戦でそのアグレッシブさが発揮されれば、中村もまた“連覇請負人”となる可能性は十分だ。中盤から後方の広島勢がそれを後押しできれば、日本の大会連覇がより現実味を帯びてくるうえ、後半戦のJ1にも弾みがつくのではないか。

 J1リーグは現在23節を消化し、首位は勝ち点44の柏。広島は同39の5位。広島の総失点18はリーグ最少だが、総得点27は上位陣で浦和レッズ(26)に次ぐ少なさ。スキッベ監督も「点が取れなすぎる」と嘆くことが少なくない。

 その意味でも、ジャーメインや中村が代表でブレイクの兆しを見せているのはチームにとって朗報である。川辺や田中は強烈なミドルシュートを武器としており、荒木もセットプレーからの得点力に定評がある。彼らにも今大会中のゴールが期待される。これだけ多くの選手が代表で貴重な経験を積んでいるのだから、その蓄積を今後に活かさない手はない。

「本当にここで結果出して、また所属チームで結果を出して、広島を優勝に導くような活躍をして初めて、1年後の(2026年北中米)ワールドカップへのチャンスが生まれる」とジャーメインは静かに話した。そうした好循環を築くことが肝心だ。まずは目の前の一戦一戦に集中し、注力してほしい。

(元川悦子 / Etsuko Motokawa)



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元川悦子

もとかわ・えつこ/1967年、長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに転身。サッカーの取材を始める。日本代表は97年から本格的に追い始め、練習は非公開でも通って選手のコメントを取り、アウェー戦もほぼ現地取材。ワールドカップは94年アメリカ大会から8回連続で現地へ赴いた。近年はほかのスポーツや経済界などで活躍する人物のドキュメンタリー取材も手掛ける。著書に「僕らがサッカーボーイズだった頃1~4」(カンゼン)など。

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