前年比増で好調…V字回復のJリーグ 過去最高も視野…それでも残る一抹の不安

Jリーグがマーケティング関連のデータ公開、売上げや露出量など増加傾向
Jリーグはマーケティングに関する2025年上半期のデータを報道陣向けに公開した。
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2024年のクラブ売上げは1649億円に達し、前年比114%と伸長した。その中でも、入場料収入と物販収入はともに前年比118%、また2025年は1月から5月までの在京キー局における露出量(中継を除く)が前年比150%、上半期の入場者総数も前年比109%と増加傾向のデータが示された。
Jリーグでは今後、夏休み期間のキャンペーンや中規模施策などの「観客獲得型施策」に加え、「話題化・関心想起型施策」として露出強化などの取り組みも計画しているという。
また、地上波ローカル試合中継も好調で、3月2日のJ1リーグ第4節、アルビレックス新潟vsセレッソ大阪(テレビ新潟)は世帯平均15.1%、瞬間最高視聴率21.5%を記録。また、J2リーグでも3月9日の第4節、モンテディオ山形vsブラウブリッツ秋田、6月15日第19節の山形vsベガルタ仙台(いずれもNHK山形)が、それぞれ世帯平均11.2%と12.7%、瞬間最高視聴率15.5%と21.5%に達するなど、好成績を挙げている。
下半期、そして2026年に控えている大改革、シーズン移行に向けて順調に見えるJリーグだが、その実、心配な面も残っている。それはJ1リーグの平均観客数だ。
2025年は第21節終了時点で1試合あたりの平均観客数が2万299人。これは前年同時期の1万9479人を上回っている。2020年、新型コロナウイルスの影響で無観客試合や収容人数の制限が導入され、J1の平均観客数は5796人まで減少した。そこから2021年は6661人、2022年は1万4328人、2023年は1万8993人と徐々に回復してきた。
だが、コロナ禍前の2019年、J1リーグは過去最高の1試合平均2万751人を集めていた。わずかとは言え、現状はその時の数字を下回っている。
この点について、Jリーグは下記の2点が要因であろうと説明した。
まず、今年はここまで土日に雨が多かったこと。確かに2019年の第21節までのゲームで、雨または雪が観測されたのは34試合に対して、今年は40試合で雨または雪に見舞われている。天候によってどれくらい観客動員が変化するかはチームによって差があるものの、全体として見ればマイナス要素だっただろう。
余談だが、雨中で開催されたのが何試合あったかなどのデータはJリーグのサイトで検索することができない。すべての公式記録を1つずつ見て計算しなければならないのだ。さまざまなデータが活用できるようJリーグはシステムを考えるべきだろう。400試合以上調べたのがたった数行にしかならなかったので、あえてここで苦言を呈しておきたい。
Jリーグが指摘したスタジアムのキャパシティ問題
閑話休題。次にJリーグが指摘したのは、スタジアムのキャパシティの問題だった。2019年にJ1に所属していて2025年は降格しているチームは北海道コンサドーレ札幌、仙台、松本山雅FC、ジュビロ磐田、サガン鳥栖、大分トリニータの6クラブ。この6クラブのホーム合計収容人数は14万6037人、1クラブ平均は2万4340人になる。
一方、2019年はJ1に所属しておらず、2025年にJ1所属のクラブは、柏レイソル、東京ヴェルディ、FC町田ゼルビア、横浜FC、新潟、京都サンガF.C.、ファジアーノ岡山、アビスパ福岡の8クラブ。この8クラブがホームとして使うスタジアムの合計収容人数は19万4070人で、1クラブ平均では2万4259人と、今年のほうがわずかに下回っている。
あとは、それぞれのクラブがキャパシティに対してどれくらいの割合で集客できるかということになる。その意味では、例えば収容人員1万5479人に対して現在平均1万4370人、収容率93%という大人気を誇る岡山が、もっと大きなスタジアムで開催していたら平均観客数は伸びたのかもしれない。
そう考えると、天候が落ち着き、今後夏休みに向けてさまざまなキャンペーンを打つことで収容率が向上すれば、今年は2019年の記録を塗り替えることができる可能性がある。
それでも指摘しておきたいことがある。それは現在、平均観客数を伸ばすのに貢献している国立競技場開催試合は、問題点を隠してしまう可能性があることだ。2019年は改築中だった国立競技場は使えなかった。それだけ各クラブはホームスタジアムに集客できていた。
国立競技場の使用は新規観戦客獲得に貢献することを考えれば、ドーピングまでとは言えないにしても、国立競技場開催の試合を計算に入れない数字も把握しておくことは重要だろう。それこそが本当にJリーグが回復したという検証に使えるデータになる。あえて厳しい数字にも目を向けてこそ、本当の前進ができるはずだ。
(森雅史 / Masafumi Mori)

森 雅史
もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。