代表で国内組より海外組を選ぶ理由「訳が違う」 稲本潤一が重要視する“能力”「生き抜いていけない」

稲本潤一氏が日本代表の強化ついて話した【写真:Getty Images】
稲本潤一氏が日本代表の強化ついて話した【写真:Getty Images】

Jリーガーを呼んだら面白いポジションを指摘

 日本代表は3月20日に行われた北中米ワールドカップ(W杯)アジア最終予選のバーレーン戦に2-0で勝利し、8大会連続のW杯出場を決めた。2002年の日韓大会から、2010年の南アフリカ大会まで、日本代表として3大会に出場した元日本代表MF稲本潤一氏は、「FOOTBALL ZONE」のインタビューに応じ、初のベスト8進出を目指すチームについて、自身の強化論を語ってくれた。(取材・文=河合拓/全3回の3回目)

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 新たに招集された選手が、ある程度完成されたチームでアピールして自分の居場所を獲得することは決して簡単なことではない。特に日本代表は各選手の所属クラブでの活動とは異なり、一年のほとんどの時期を稼働しているわけではなく、主にFIFAデイズのみの活動となる。稲本氏は、そこにも現在の日本代表選手が欧州でプレーする選手たち中心になっている理由があるのではないかと読み解く。

 U-17日本代表から年代別の日本代表に選ばれ続けていた稲本氏は、日本代表に招集された時も、すでにチーム内には過去にプレーした経験のある選手たちがいた。2000年から2010年という長期にわたって日本代表に入っていた稲本氏は、所属クラブで結果を出しても、日本代表ではチャンスをモノにできなかった選手たちも見ている。

 年代別の日本代表にも招集されず、フル代表に招集された選手がチームに馴染むことの難しさも見てきた稲本氏は、「だから僕は森保監督が、海外でプレーする選手を多く選んでいるんじゃないかと思ったりもしているんです」と切り出し、持論を展開した。

「これは僕のキャリアの価値観の上での話なので必ずしも正解とは限らないですが、やっぱり全く知らない場所に行って、言葉も通じないなかで自分を出すことって、日本に居続けて日本のチームに移籍するのとでは訳が違うと思うんです。やっぱり海外の選手の方が自己主張していかないと生き抜いていけない世界にいると思うので、自分の力の発揮の仕方が変わってきます。Jリーグの選手にも素晴らしい選手はいると思うんですけど、同じ力を持ってるのであれば、海外でプレーしている選手を選ぶというのには、少なからずそういうところがあるのかなと。短い時間で戦術を理解すること、結果を出すことは、やっぱり難しいですからね。例えばそういった意味でいうとドイツ1年目で評価されている佐野海舟選手は問題なくできると思います。日本代表に行けば、同じ日本人のなかで言葉も通じて、細かいところまで意思疎通は出来ますから、まったく問題ないのかなと思っています」

稲本氏は佐野海舟を高く評価【写真:徳原隆元】
稲本氏は佐野海舟を高く評価【写真:徳原隆元】

「攻撃的と守備的とか複数のパターンが必要になる」

 現在の森保ジャパンは、アジアを圧倒してW杯の出場権を得た。しかし、W杯で戦う相手は確実にこれまで以上に強くなる。また32か国から48か国に参加国が増えたW杯では、勝ち上がるためにこなさないといけない試合数も増える。

「ここから守れる選手の重要性は増してきます。また参加国が増えているので、もしかしたら圧倒する試合もあるかもしれないので、チームとしても攻撃的と守備的とか複数のパターンが必要になるでしょう。あとは試合数も増えますし、3カ国でやるので移動時間も長くなるので、選手層の厚さは絶対に必要になります。なのでやっぱり佐野選手のように強くて、真ん中で戦える選手は、すごく必要だと思うし、(本大会に)入れてほしいですね」と、稲本氏なりの意見を述べた。

 2023年11月に日本代表デビューを果たしていたMF佐野海舟(マインツ)は長らくA代表から離れており、6月シリーズ前までで4試合156分の出場にとどまっていた。欧州移籍後は1度も森保ジャパンに招集されていなかったが、しっかり新天地でも自分の良さを発揮すると周囲の評価も高まり、6月シリーズで久しぶりの招集となった。

ワールドカップでゴールを決めてブレイクを果たした【写真:Getty Images】
ワールドカップでゴールを決めてブレイクを果たした【写真:Getty Images】

「点が取れている選手を入れるのも面白い」

 J1の川崎フロンターレの下部組織で指導者をしている稲本氏は、「とはいえ国内からも日本代表選出してもらわないと、Jリーグも盛り上がらないんですけどね」と言い、国内から選手を選んでも良いポジションがあると語った。

「例えばディフェンスラインであったり、中盤であったりを選ぶのは、ヨーロッパにも多くの選手がいるので難しいかもしれません。けれども、やっぱり点を入れるっていうところで言うと、その時に調子の良い選手、点を取っている選手は、やっぱり自分の感覚が鋭くなっていると思います。だから来年のW杯の時期にコンスタントに試合にも出場して、しっかり点が取れていたり、良いパフォーマンスをしている選手を入れてみるのも、ラッキーボーイじゃないですけど、面白いのかなと思いますし、そこに選ばれるのがJリーグの選手であれば、Jリーグが盛り上げっていくと感じます」

 稲本氏も2002年大会の時には2ゴールを決めて、日本のラッキーボーイ的な存在となった。当時は世界的スター選手が集まったアーセナルで出場機会を得られていなかったが、「試合に出られなかった悔しさが、代表での活躍につながったのかなと思いますし、(監督のフィリップ・)トルシエさんとは、それこそユース年代からフル代表まで一緒にやっていたので、戦術の部分も問題なくできたことが大きかったと思います。なかなか3世代の監督を務める日本代表監督はいませんし、その全部に関わらせてもらったので、ほぼほぼやりたいことが練習からわかっていたので、それは大きかったです」と、日本中を熱狂させた活躍の秘訣を明かした。

 日韓W杯で活躍した稲本氏は、その後、フルハムに移籍してからもゴールという結果を残した。その活躍が評価され、バロンドール候補の50名にもノミネートされた。「あの数か月だけ、本当に短期間ですけど、結果が出ていて点は取っていましたからね」と言い、「点が取れる人は、点が取れる雰囲気がわかるっていうことが、あの1、2か月でわかりました。特にFWとかで、ノっている人は体も動きますし、やっぱり点が取れるんだろうなと感じました。僕の場合はフルハムでトップ下をやっていて、『ここでいいのかな』『ダイヤモンドの中盤のもう一個下のポジションがいいんじゃないかな』と、葛藤しながらプレーしだすようになったら、やっぱり点は取れなくなってしまいました。だから点が取れている時は、迷わずやるほうがいいんだと思います」と、好調の時こそ、無我夢中にゴールへ向かうことが重要だと説いた。

 海外で実績を積んでいる選手、そしてJリーグで好調を維持してゴールを量産している選手。世界最速でW杯出場を決めた日本代表には、こうした選手を加えることが強化につながるのではないかと稲本氏は指摘した。

(河合 拓 / Taku Kawai)



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