J2クラブが“3年連続表彰”の快挙 高齢化問題のロールモデルに「我々が最初に気づいた」

山形がシャレン!クラブ選考賞を受賞、担当者の荒井薫さんが明かす思い
モンテディオ山形はJクラブのホームタウン活動・社会連携(シャレン!)活動を表彰する「Jリーグシャレン!アウォーズ」において「“声”のチカラを起点に高齢者が輝き活躍する地域へ O-60(60歳以上)モンテディオやまびこ」で3年連続となるクラブ選考賞を受賞した。担当者の荒井薫さんは「他のJクラブの代表の方々が真似をしたいと思ってくれて選考いただいた。単純に他のどの賞よりも嬉しい」と笑顔を見せた。クラブがこの活動にかける思いや今後の展望について話を伺った。(取材・文=石川 遼)
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「シャレン!アウォーズ」には「ソーシャルチャレンジャー賞」「パブリック賞」「メディア賞」「明治安田 地元の元気賞」「クラブ選考賞」「ファン・サポーター選考賞」と6つの部門に分かれており、そのなかで「クラブ選考賞」はJクラブ(実行委員)の投票によって決定する。山形は2023年に「高校生マーケティング探求」、24年に「U-23マーケティング部」と若い世代へのアプローチで同賞を連続受賞。そこから一転し、25年は高齢者の課題に向き合い、見事に3年連続の受賞を果たした。
山形県は全国でも高齢化率(人口に対する65歳以上の人口の割合)が5番目に高く、高齢化問題は喫緊の課題となっている。「Jリーグの観客の平均年齢は平均40歳。それは山形だけで見ると44、5歳とどんどん上がっている。年齢層が高い方々に向けてのサービスはこれから求められます。我々の集客のメインターゲットはファミリー層ではありますが、これからはシニア層にもアプローチしていく必要がありました」(荒井さん)。
そうしたなかで、県内在住の60歳以上を対象とした「O-60モンテディオやまびこ」を立ち上げ、そこで「声磨きトレーニング」と称したボイストレーニングに取り組み始めた。声を出すことで、脳の活性化、口腔環境の改善、心身の活性など健康課題の解決につながるだけでなく、チームの応援にも生かすことができると参加者からも好評だった。
“声磨き”によって得られる変化は決して数値で測れるようなものではなかったが、荒井さんは「みなさんの表情が明るくなったり、声が出るようになったりと見た目で分かる部分もありました。ただ、我々が最初に気づいたことは、ファンが1人ではなくコミュニティーとして活動することの重要性でした」と活動を通して重要な気づきがあったと話す。
「我々を個々に応援してくれているファンやサポーターのみなさんが、コミュニティーのような形で活動することはこれまでにありませんでした。今回は『声』を1つの軸としてみなさんに集まってもらいましたが、こうやって1つのコミュニティーができあがり、会話が生まれ、みんなの表情が明るくなって、元気になっていく。そういうことが本当に大切だったと思います。これは今後の活動に向けても大きなヒントになりました」
高齢化問題に取り組むロールモデルに、「O-60」活動がこれから目指すもの
そして、何よりも「O-60」の世代には、まだまだエネルギーに満ちあふれた人が多いということ。荒井さんは「私たちも数字だけを見て、勝手なイメージを持ってしまっていたと思います。定年退職の年齢も65歳に引き上げられたりしているように、まだまだバリバリ働ける世代。60歳以上イコール高齢者という目線を変えていかなきゃいけない」と活動の幅を広げていく必要性を感じていたと語った。
ニーズをヒアリングしていくなかで、もっと身体を動かすコンテンツを増やしてほしいという声も多く、今シーズンからはボイストレーニング以外にも、田植えや稲刈りの体験、和菓子作り体験、ヨガやピラティスなど活動のバリエーションは大きく広がった。また、昨年はホームゲーム数試合の活動だったものが、すべてのホームゲームで行われるようになった。自治体からの依頼も着実に数を増やしているという。
この「O-60」の活動は、山形だけでなく日本全国で高齢化問題に対する取り組みのロールモデルの一つになることがクラブの目指すところ。荒井さんは「高齢化というのは山形県だけの課題ではなく、これから日本全国のどの地域にとっても課題になってくるものだと思います。我々のこの活動を一つのモデルとしてしっかりと作り上げることができれば、山形県の自治体にとってもそうですし、サッカー以外のプロスポーツチームなどにも横展開できるはずです。今後はそういったとこを次のフェーズとして進めていきたいです」と山形から全国への展開を期待していた。
(石川 遼 / Ryo Ishikawa)





















