父はブラジル人&海外育ち「桐生第一でサッカーしたい」 プロ入り先輩を追う背番号5

桐生第一のゼイダム小田孟武【写真:FOOTBALL ZONE編集部 】
桐生第一のゼイダム小田孟武【写真:FOOTBALL ZONE編集部 】

桐生第一のゼイダム小田孟武「桐生第一の5番を背負う責任は重いと思っています」

 インターハイ群馬県予選決勝、これまで多くのJリーガーを世に輩出し、プリンスリーグ関東1部で戦う桐生第一は、昨年度の選手権王者の前橋育英と激闘を演じた。

 一進一退の攻防が続くなか、桐生第一の2年生CBゼイダム小田孟武は182センチのサイズを生かしたヘッドと対人の強さ、スピードを生かしたカバーリング能力を駆使して、最終ラインを統率。相手のプレスに対しても動じることなく、正確なボールコントロールとパスでビルドアップの起点になるなど、攻守両面で存在感を放った。

 後半17分にセットプレーから先制を許し、後半アディショナルタイムに痛恨の追加点を許したが、80分間を通して前橋育英を相手に一歩も引くことなく個人としても、チームとしても堂々たるプレーを見せた。

「桐生第一の5番を背負う責任は重いと思っています。だからこそ、2失点は悔しいです」

 試合後、彼はこう唇を噛んだ。桐生第一の5番と言えば、中野就斗(サンフレッチェ広島)と中野力瑠(ザスパ群馬)の中野兄弟、昨年は原田琉煌(産業能率大)とサイズもあって運動能力に長けたCBが君臨し、守備の要となっていた。その5番を彼は2年生で引き継ぐこととなった。

 ブラジル人の父と日本人の母を持つ彼は日本で生まれ、2歳から7歳までシンガポールで過ごした。中学生になるとAZ’86東京青梅ジュニアユースでプレー。クラブOBに中野兄弟がいた。

「当時、僕はボランチとしてプレーしていて、正直、そこまでいい選手というわけではなかったので、高校や大学で活躍する中野兄弟の存在を知って憧れるようになりました。その2人が大卒、高卒でプロになったのは刺激を受けましたし、2人がプレーした桐生第一でサッカーがしたいと強く思うようになりました」

 2人の背中を追うように桐生第一に入ると、ボランチから2人がこなしたCBにコンバート。ポジションが変わったことで、「新たな自分を高校で発揮しようと思えた」と心機一転のスタートを切ることができた。

 ジャンプ力、スピード、キック力、フィジカルを兼ね揃えた彼は、CBでその才を伸び伸びと発揮するようになり、前述したとおり、2年生で待ち望んだ背番号を手にすることができた。

「(5番を背負って)改めて感じたのは、ただいいプレーをしていればいいというわけではないことです。5番はもっと声を出したり、大事なところで身体を張ったりと、責任感が必要だと感じています」

 そして、迎えた前橋育英とのライバル決戦。この試合、スタンドには前日にアウェーでの鹿島アントラーズ戦を戦い終えた中野就斗が後輩たちの応援に駆けつけていた。憧れの存在の前で敗れはしたが、桐生第一の5番は今年も頼れる存在であることをアピールすることはできた。

「僕のプレーをどう見てくれたのかは分かりませんが、恥じないプレーをしないといけないと思いました」

 もちろん、最大のライバルの前に屈し、全国大会出場を逃した事実は変わらない。それに対してゼイダムの心は静かに燃えていた。

「正直、群馬県の高校サッカーと言えば、僕のなかでは前橋育英という認識でした。桐生第一に進学すると決めた瞬間に、絶対に倒したいと思ったので、今日負けてしまったことは本当に悔しいです。内容もまだ育英に圧倒されてしまっていたところがあるので、自分の力が足りないと思いましたし、この分厚い壁を絶対に打ち破りたいとより強く思いました」

 偉大な5番・CBの先輩たちの背中を追いかけながら、ライバルを倒し、チームを全国に導く存在になるべく。注目の2年生CBはこの経験をエネルギーに力強く前に踏み出した。

(FOOTBALL ZONE編集部)

page 1/1

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング