58歳カズは「いるだけでいい影響」 出番なしも円陣で鼓舞…大ベテランが食い止めた“崩壊”

2試合連続ベンチ入りも出番なく、試合を振り返るアトレチコ鈴鹿FWカズ【写真:荻島弘一】
2試合連続ベンチ入りも出番なく、試合を振り返るアトレチコ鈴鹿FWカズ【写真:荻島弘一】

アトレチコ鈴鹿のカズ、2試合連続ベンチ入りも今季初出場はお預け

 JFLアトレチコ鈴鹿に所属するFW三浦知良(カズ)の今季初出場はお預けとなった。カズは6月8日、ホーム三重交通Gスポーツの杜鈴鹿で行われたクリアソン新宿戦で2試合連続のベンチ入りを果たしたが、出番はなし。昨年11月のリーグ最終戦以来約6か月半ぶりの公式戦出場はならなかったが、チームの4試合ぶり勝利にベンチから貢献した。

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 ビブスを着てベンチで出番を待っていた58歳のカズだが、ピッチに立つことはなかった。それでも、後半に交代出場したFW田中直基のゴールを守り切り、勝利したことには満足そう。「トレーニングでやってきたことが生きた。いい試合でした」と振り返った。

 プロ40年目は苦しいスタートだった。オフの間にふくらはぎを痛めて、2月のチーム始動から別メニューの調整。筋肉系の負傷を繰り返して、戦列復帰が遅れた。懸命のリハビリを続けたことで、5月には練習試合で復帰。6月1日の前節・FCマルヤス岡崎戦で、ようやく今季初のベンチ入りにまでこぎつけた。

 もっとも、まだまだ本調子には遠い。カズ自身は「20、30%くらい」と慎重。20年以上専属トレーナーを務め、今も週4でカズの身体を見ている竹内章高氏も「動きの制限がなくなったということだけで、決して万全ではない」と話していた。

 起用を示唆していた山本富士雄監督は「使えなかったのは、私の監督としての技量の問題」と話し、終盤相手の攻勢にシステムを変更したことなどで機会を逸したことを説明。「まだベストではないけれど、試合に出て仕事ができる状態にはある。しっかり、仕事をしてもらいたい」と次節以降に向けて話した。

 山本監督が「カズがベンチにいるだけで、チームにはいい影響がある」と話したように、この2試合で1勝1敗。ベンチ入り前2試合で9失点と崩壊していた守備が踏ん張り、ゴールも生まれた。この日も試合前の円陣で「試合の入りが大事。3ポイント(勝ち点3)を取ろう」と声をかけ、試合中もベンチからチームメートを鼓舞した。

 チームは4勝3分4敗と星を五分に戻し、週1ペースで試合が続く勝負の6、7月を迎える。「次のY.S.C.C.横浜(6月15日)、3週後のティアモ枚方(6月28日)と同じような順位のチームとの試合が続く。今日勝ったのは大きいし、これを続ければ順位も大きく変わる」とカズ。「みんなの意識も変わってくると思う」と上位進出に向けて話した。

 スタンドの家族の前でベンチを温めたカズは、リーグ戦復帰がお預けになった悔しさを振り払うように「まだ次に向けて、しっかりと頑張るだけ」。次節、15日は横浜FC時代のホーム、ニッパツ三ツ沢球技場でのY.S.C.C.横浜戦。プロ40年目の「開幕」は迫っている。

(荻島弘一/ Hirokazu Ogishima)

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荻島弘一

おぎしま・ひろかず/1960年生まれ。大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。スポーツ部記者として五輪競技を担当。サッカーは日本リーグ時代からJリーグ発足、日本代表などを取材する。同部デスク、出版社編集長を経て、06年から編集委員として現場に復帰。20年に同新聞社を退社。

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