38歳長友佑都はもう代表ピッチに立てないのか? 「自分が必要になる」…鉄人の逆転シナリオ

日本代表の長友佑都【写真:徳原隆元】
日本代表の長友佑都【写真:徳原隆元】

アウェーのオーストラリア戦は新戦力をテスト、ベンチ外は長友ら4人

 6月5日のオーストラリア戦(パース)を0-1で落とし、2026年北中米ワールドカップ(W杯)アジア最終予選初黒星を喫した日本代表。森保一監督はあえて遠藤航(リバプール)や久保建英(レアル・ソシエダ)、鈴木彩艶(パルマ)ら主力級を外し、代表経験の少ないメンバーを軸に挑んだ。それには「新戦力の底力を試す」という意味合いがあった模様だ。

【PR】DAZNを半額で視聴可能な学生向け「ABEMA de DAZN 学割プラン」が新登場!

 しかし、堂々と実力を発揮したように感じられたのは、平河悠(ブリストル・シティ)と鈴木唯人(フライブルク)くらい。俵積田晃太(FC東京)も縦への仕掛けを積極的に出そうとしていたが、緊張感が強すぎて空回りした印象もあった。やはりガラリとメンバーを変えるというのは、こうした結果になりがちだ。指揮官も底上げの難しさを再認識したのではないだろうか。

 今回のオーストラリア戦でベンチ外になり、スタンドで戦況を見守ることになった選手が4人いた。18歳の佐藤龍之介(ファジアーノ岡山)、初招集の鈴木淳之介(湘南ベルマーレ)、パリ五輪世代のエースFW細谷真大(柏レイソル)、そして38歳のベテラン・長友佑都(FC東京)の4人である。

 若手の佐藤と鈴木の扱いはやむを得ないとして、細谷のベンチ外は意外だった。今季はリカルド・ロドリゲス監督体制でスタメン出場が少ないうえ、森保監督の中で「欧州組の若手を優先して試したい」という思惑があってのことではないか。6月10日の次戦・インドネシア戦(吹田)はベンチに入ってくるだろう。

 そして注目の長友は、またしても登録メンバーから外れた。2024年3月シリーズで代表復帰してから、彼は一度も試合に出ておらず、最終予選は9試合連続ベンチ外。今回も「コンディション面の問題が影響したのではないか」と見る向きもあったが、筆者は代表活動直前の5月30日にFC東京の練習場を訪ね、本人に状態を確認している。

「5月21日のルヴァンカップ(湘南戦)で軽い脳震盪になったので、25日の(サンフレッチェ)広島戦は様子を見るためにベンチ外になったけど、もう問題ない」と長友は発言。5月31日の京都サンガF.C.戦の登録メンバーにも入り、勇んで遠征に出かけていったのだ。

 その京都戦ではラスト3分間の出場。チームは0-3で敗れたが、彼自身がピッチに立てる状態なのは証明された。つまり、森保監督の中で「今の長友は使いどころが難しい」という位置づけになっているのだろう。

泰然自若の長友「今は自分の出番じゃない。自信はある」

 実際、最終予選突入後の日本代表左ウイングバック(WB)を見ると、三笘薫(ブライトン)を筆頭に、中村敬斗(スタッド・ランス)、前田大然(セルティック)、今回の俵積田という面々で、FWや2列目を兼務するようなアタッカーばかりだ。

 アジア相手だと、日本が主導権を握る展開が多くなり、当然、サイドプレーヤーは個ではがせる人材を配置するのが相応しい。次のインドネシア戦も同じ考え方でいくのなら、中村、森下龍矢(レギア・ワルシャワ)、あるいは三戸舜介(スパルタ・ロッテルダム)のようなタイプが送り込まれる確率が高い。

 このままだと長友のベンチ入りは高いハードルということになってしまう。本人は「今は自分の出番じゃない。強豪相手になり、1対1でガッチリ守らなければいけなくなった時、自分が必ず必要になる。自信はあるので、今は落ち着いている」と繰り返し語ってきたが、そのタイミングはメキシコ代表戦(9月7日)、アメリカ代表戦(9月10日)などW杯出場国とのテストマッチが続く9月以降。その時点までにどれだけ状態を引き上げられるかが、5度目のW杯行きを大きく左右することになりそうだ。

 今季の長友は、J1リーグ18試合を終えて11試合に出場。先発は5試合にとどまっている。松橋力蔵監督は彼の豊富な経験や強靭なメンタル、真のプロフェッショナリズムを買っているようだが、右は白井康介や安斎颯馬、小泉慶、左では遠藤渓太、安斎らを重用している。

 しかも、FC東京は夏の移籍ウインドウで室屋成を補強しており、サイドの人材がさらに増えたのだ。室屋の加入によって、安斎がより前のポジションで使われると見られるが、長友にとって厳しい状況になるのは間違いない。

 ここから夏場に試合出場数を増やし、コンスタントに活躍しなければ、代表入りの道が険しくなる。呼ばれ続けたとしても出番を得られない試合が続きかねない。それはW杯5大会出場を目指す大ベテランにとっては屈辱だろう。そうならないように、今は1日1日のトレーニングで存在感をアピールしていくしかないのだ。

原口元気が語った「やっぱりサッカー選手は出てナンボ」の重み

 30代半ばになると、チームで苦境に追い込まれるベテランは少なくない。昨年9月に10年間のドイツ挑戦に区切りをつけて、古巣・浦和レッズに戻ってきた原口元気もその1人。なかなか序列を上げられずに苦しんでいる。

「佑都君が代表でチームを鼓舞したり、引っ張る姿を見て感じるところ? いや、ないです。やっぱりサッカー選手は出てナンボだから。佑都君が代表でやってることはすごい大切なことだし、自分も試合に出られないんだったら、同じことをやりますけど、あくまでピッチに出て活躍することを考えてやっています。プレーヤーである以上、ピッチで勝負したいというのは誰もが思うこと。佑都君だってそう考えているはずです」

 6月15日に開幕するFIFAクラブW杯という大舞台を前に、原口は自らを奮い立たせるように、こう語っていたが、長友も同じように「ピッチで勝負したい」「自分の存在を見せつけたい」と願い続けているに違いない。38歳という年齢を跳ねのけ、代表にいる意味を示すためにも、どこかで出番を勝ち取らないといけない。それが次のインドネシア戦になれば一番いいが、果たしてどうなるのか。森保監督の思惑が気になるところだ。

 ただ、今は最終予選初黒星を喫した直後ということもあり、長友に気合を入れてもらうべきタイミングではある。彼をベンチに置いたほうがチームにとってプラスになるという考え方もある。町田浩樹(ロイヤル・ユニオンSG)と渡辺剛(ヘント)がオーストラリア戦で負傷し、DF陣が手薄になったのを踏まえると、久しぶりのベンチ入りは十分考えられる状況だ。

「久しぶりに長友が代表のピッチで躍動している姿を見たい」と熱望するファン・サポーターも少なくないはず。筆者ももちろんその1人だ。そんな期待を込めて、次の大阪でのゲームを楽しみに待ちたいものである。

(元川悦子 / Etsuko Motokawa)



page 1/1

元川悦子

もとかわ・えつこ/1967年、長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに転身。サッカーの取材を始める。日本代表は97年から本格的に追い始め、練習は非公開でも通って選手のコメントを取り、アウェー戦もほぼ現地取材。ワールドカップは94年アメリカ大会から8回連続で現地へ赴いた。近年はほかのスポーツや経済界などで活躍する人物のドキュメンタリー取材も手掛ける。著書に「僕らがサッカーボーイズだった頃1~4」(カンゼン)など。

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング