選手が起こしたアクション「厳しく言って」 J1町田に起きた変化…黒田監督「救われた」

町田の原靖FD【写真: 森 雅史】
町田の原靖FD【写真: 森 雅史】

チャレンジ真っ最中の町田、原FD「今の選手たちは十分に戦えるメンバー」

 J1・FC町田ゼルビアの原靖フットボールダイレクター(FD)は6月6日、今年のJリーグ前半戦を振り返る記者会見を開催した。町田は、これまでのような急激な大きな変化ではなく、別の考えで変わろうとしている。

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 昨シーズン、J1に初昇格した町田はそのままの勢いで首位に立つ。最終的には失速したものの、それでも3位で終え、2025-26シーズンのAFCチャンピオンズリーグエリート(ACLE)に出場することになった。ところが今シーズンは第19節を終えて10位。昨季は最も失点数が少なかった自慢の守備は綻びを見せてリーグ12位、得失点差も「-1」となっている。

 原FDは「そんなに簡単じゃない」というのは「想定内」だったとし、「(J1リーグ)1年目はJ2の延長で自分たちのサッカーを貫いたのですが、やはりいろいろなことができないとJ1の舞台では生き残っていけないだろう」という想定の下、今、自分たちで主導権を握れるようなサッカーにチャレンジしている最中だという。

 そして昨シーズン、一昨シーズンと大幅な選手の入れ替えがあったが、「今の選手たちは十分に戦えるメンバーであると思っている」としつつ、「補強も実施していきたい」と述べた。

 しかし、同時に今年の補強の難しさについても触れた。2025年のJリーグは登録期間(ウインドー)を3回設けている。通常ならウインドーは2回だが、今年は「特別登録期間」として6月1日から10日までのウインドーができたのだ。これはクラブワールドカップ(CWC)に出場するクラブのある国で特別に認められており、CWCに出場する浦和だけではなく、全クラブが対象となる。

 菊池流帆、中村帆高、中山雄太などの怪我人が相次いでいる町田は、この期間で補強を進めようとしていた。だが、補強する以上は現状保有する選手以上のレベルでなければならない。そこでヨーロッパで活躍する日本人選手を検討すると、「2026年アメリカ・カナダ・メキシコワールドカップまでは海外でプレーしたい」と考えていたり、あるいは高い移籍金が設定されていたりと交渉が難しかったという。

 また、ヨーロッパの移籍期間は8月末まで設定されている国が多いため、6月に獲得しようとすれば足元を見られてしまうため、より高い年俸でなければ成立しにくい。そうした諸々の条件から、6月は「国内にいる選手か、ポリバレントな選手でいろんなポジションができる選手」を1人獲得しようという動きを見せている。

欧州からストライカー獲得の可能性も…「黒田監督は守備をすごく求める」

 さらに、今回のウインドーには間に合わないようだが、ヨーロッパからストライカーを引っ張ってくるという動きもあるようだ。ただし、「黒田監督は守備をすごく求めるので、攻守両方できるか、あるいはとにかく点が取れる選手か」という選択肢があるということだった。

 一方で、今シーズンの町田で一番の変化は黒田剛監督の元気のなさだ。負け慣れていないということなのか、通常の囲み取材で声のトーンが低いし、何より声量が小さくなった。週刊誌のパワハラ報道の影響も考えられる。

 この点について原FDは、まず指導陣の体制が変わったことを要因として挙げた。昨シーズンまでは金明輝コーチ(現・アビスパ福岡監督)が前面に立って選手を叱咤鼓舞していたが、今シーズンからは黒田監督が直接選手に厳しく伝えなければならず、「一挙手一投足が、これがいわゆる(パワハラに)該当するんじゃないかと」考えながら指導しているという。それが元気のなさに見えているのかもしれない。

 だが、中山や相馬勇紀などから「もうちょっと厳しく言ってくれたほうがいいんじゃないか。いけないとこはいけないっていうところを指摘してくれないといけない」と直接伝えられ、黒田監督は「救われた」と語っていたという。

 町田はサッカーの方向性を変え、大型補強よりも的確な選手獲得を目指し、監督の指導も試行錯誤しているなかで、変化しようとしている。

 前半戦を終えて10位という順位だが、シーズン前に目標として掲げた「5位以内」は変えないのか。原FDは「(変え)ないです。上を目指してしっかりやっていきます」と語って会見を締めくくった。

(森雅史 / Masafumi Mori)

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森 雅史

もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。

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