三笘、堂安らが「全部刺激」 26歳日本人の揺るがぬ思い…欧州で目指す「絶対的な守備+攻撃」

26歳DF常本佳吾、欧州でプレーする日本人選手としての矜持
代表入りを夢見て欧州に渡った日本人選手がいる。DF常本佳吾、26歳。スイスの地で結果を残しながら、さらなる高みを目指している。「僕も本気でワールドカップ優勝という目標を信じています」と言い切る。ステップアップ移籍も思い描くなか、自身の現在地、理想の選手像、そして日本代表への揺るがぬ思いを語った。(取材・文=中野吉之伴/全4回の3回目)
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「日本代表について伺ってもいいですか?」
そう尋ねた時、常本佳吾の表情がぐっと引き締まったのを感じた。鹿島アントラーズからスイス1部セルヴェットFCに渡って2シーズン目。初年度はリーグ2位とスイスカップ優勝でベストイレブンに選出され、今季も36試合に出場するなど中心選手として活躍し、リーグ2位の好成績で終えた。
「もちろん自分のビジョンの中でずっと日本代表はある」
常本はゆっくり話し出すと、代表への思い、欧州でプレーする日本人選手としての覚悟を口にした。
「日本代表になるために欧州へ来ました。夢としてずっと掲げています。たとえ今、選考されなくても、自分のここでの活躍が誰かに影響を与え、日本サッカーに良い影響を与えられていると感じているし、そうでなければいけないと思ってやっています。もちろん代表に呼ばれたいし、その時のための準備をずっとしています。僕も本気でワールドカップ(W杯)優勝という目標を信じていますから。それは不可能じゃないし、そのために自分が今できることをして、積み重ねている途中というふうに受け止めてやっています」
明確な輪郭を伴って紡ぎ出された言葉にはグッとくるものがある。日本代表に選出される人数は限られている。リストアップされる選手が増え、その選手たちのクオリティーが上がってくれば、日本代表はさらに上のステージへチャレンジすることができる。
常本は次のステップについてどのように考えているのだろうか。
「そうですね。いろんな葛藤もありますが、移籍って人によって考え方はそれぞれだと思うんです。W杯を目指す人もいれば、CL(UEFAチャンピオンズリーグ)出場を最優先に考える人もいると思います。契約条件を考えることも当然あります。僕は欲張りじゃないけど、全部狙っています。お金はまあ置いといて(笑)。CL出場はやっぱりずっと夢として持っている。日本代表に入ってW杯優勝を目指すという夢もある。そこから逆算した時、自分に一番どこがいいかという部分で移籍先は決めたいなと思っています。できる自信もあるし、もっとハングリーさを求めてステップアップしたいです」
目指すは絶対的な守備+攻撃「アーノルド選手みたいな武器を持ちたい」
では、常本の行きたいリーグやクラブについてはどうなのか。
「今はプレミアリーグが一番レベル高いかなと思いますけど、その分もちろん難しいですね。チャンピオンシップ(英2部)もすごく難しいのは分かっています。日本人が一番苦労しているリーグなのかなって。でもハイレベルでできるというのは、すごい財産になると思うし、もしチャンスがあればしたいです。あとはCLなどのヨーロッパのコンペティション、プラスアルファで日本代表への道を考えて、そこからの逆算かなと思います」
高いレベルのクラブやリーグへ移籍してポジションを確保し、代表に招集される選手になるために、今向き合っている課題や改善点についてどう見ているのか。
「現代のサイドバックはやっぱり守備だけではない。チームとしてやりたいことと、自分のやりたいことの兼ね合いがあるなかで、チームとしてはタイトルを獲ることが大事だし、個人としては攻撃面で違いを見せることも大事。そこのバランスを大事にしなければいけないと思っています。絶対的な守備+攻撃での違いですね。それこそ(トレント・アレクサンダー=)アーノルド選手みたいな武器を持ちたい。持ちたいというより、持たなきゃいけない。クロスに関しては欧州に来てからかなり練習しています。ただ今季は3アシストしかできてない現状があるので、そこは改善し、よりアシストを増やさなければいけないと思っています」
アシストは数字に残るため分かりやすい。だがアシストにつながるプレーもチームにとっては貴重で、評価されるポイントだ。取材した試合では、常本のフィードで相手守備ラインを攻略し、それが起点となってゴールが生まれたシーンがあった。
「ああいうプレーはやっぱりすごく大事。数字には残らないですが、かなり増えた部分でもあると思います。日本にいた時よりもチャンスメイクや攻撃の起点になるパスは意識しているし、良くなっている手応えはあります。もっと味方が決め切れるボールを出さないといけないと思って取り組んでいます。そこに関わる回数が多ければ、自然とアシストもついてくるはずですから」

日本代表の3バックも日々勉強「新しい引き出しになっている」
日本代表では3バックシステムを採用し、両サイドにウイングバックを配備する試合も増えている。本来、攻撃的MFの堂安律や三笘薫らがウイングバックで起用され、結果を残している。代表における競争の激しさ、求められる要求の高さをどのように感じているのか。
「もちろん刺激ですね。全部刺激です。自分に足りないものは全部吸収するためのものだと思っています。今まで4バックでしかやっていないので、代表が3バックをやるようになってから、勉強目線で試合を見ることが増えました。自分が入った時にどういう視点で見えるだろうとか、その選手の視点に立って見るようにしています。これまで3バック目線で見ることはなかったので、それも新しい引き出しになっていると思います。日々勉強できているなという感覚はすごくありますね」
1対1の競り合いに強く、インテリジェンスや強烈な向上心も兼ね備えるなか、攻撃の引き出しも着実に増えている常本。日本代表で試してもらいたい選手の1人なのは間違いない。
(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)

中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)取得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなクラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国で精力的に取材。著書に『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。