衝撃弾の24歳…指揮官絶賛「日本にいない」 苦しんだ今季に涙寸前「自分がいなくても」

京都の福田心之助が後半ATに決勝点「正直、ちょっと泣きそうだった」
京都サンガF.C.は5月7日に行われたJ1第15節のFC町田ゼルビア戦に2-1で勝利し、連敗を2で止めて3位に浮上した。決勝点は後半アディショナルタイム5分、右サイドバックを務めたDF福田心之助が豪快な左足のミドルシュートで決め、アウェーのスタジアムに駆け付けたファンを熱狂させた。
90分以上の時間、サイドで上下動を繰り返したなか、最後まで攻め上がってこの試合のヒーローになった福田は「チャンスだと思ったので、思い切って上がりました。ボールがこぼれてきたときは、あそこのシュートレンジは自分でも得意としていたので、しっかり振りぬけて決まって良かったです」と笑顔を見せ、「シュートに関しては右でも左でも遜色はないというか、逆に左のほうがリラックスして打てたのかなと。あの瞬間、良い意味で無だったというか、枠に入れることだけを意識していたので、それが良い形に出たかなと思います」と、そのシーンを振り返った。
直前には町田がビッグチャンスを迎えていた。それでもDF岡村大八のシュートをDFパトリック・ウィリアムがブロックしてしのぐと、勝ち点1を勝ち点3にすべく、多くの選手が町田のゴールを目指していた。「交代選手がチームに勢いをもたらしてくれましたし、あの時間帯にボックスに入っていけるのが、今年のサンガの強みだと思う。今年は後半の得点がけっこう多いのですが、走力はどこにも負けないと思う。そこに自信をもってやれているので、結果的にきょうは僕でしたが、僕じゃなくても誰かしらゴールできていたんじゃないかなと思います」と、福田はチームに勢いがあることを感じさせるコメントをしている。
この日、福田はキャプテンマークを巻いてピッチに立ったが、試合当日の朝に曺貴裁監督に言われたという。「曺監督に『キャプテン頼むな』ときょうの朝、言われてから、けっこう自分のなかでは(やるべきことを)整理したというか。Jリーグで初めてキャプテンマークを巻いてチームを引っ張っていく、そういうチームを鼓舞してというよりは、プレーでチームを引っ張る。僕が一番勝ちにどん欲になって、そういう熱量をチームに伝染させることができれば、おのずとよくなっていくと思うし、僕自身も良いプレーができると思ったので、そこに関してはできたかなと思います」と、胸を張った。
ゴールが決まった瞬間は「正直、ちょっと泣きそうだった。やっとチームに貢献できたというのが、一番あった」と福田は言う。昨季は34試合に出場して、ほとんどの試合がフル出場だった福田だが、今季は負傷で出遅れたこともあり、ピッチに立てない時期も続いた。初のフル出場は前節のC大阪戦(3-2)だったが、「去年一年、ほとんどの試合に出てきて、今年は外から見ていて自分がいなくてもチームがうまくいっているもどかしさというか、そこに自分のなかにギャップがあったのですが……。でも、僕は振り返ってもそういう良い人生じゃなかったというか。そんなに簡単にレギュラーを奪えて上り詰めていくというより、たくさんの壁をのぼって気づいたらそういう立ち位置にいただけなので、また乗り越えなきゃいけない壁が来たと思って、毎日必死にやっていました。それが今、形になって少しずつ出てきたのかなと思います」と、振り返った。
周囲からの期待も高い。曺貴裁監督は「(今季は)少し出遅れた感があって、試合に使っても彼らしいプレーがなかなか見られないところがありました。でも、彼はそこの反発力をもっている選手です。人間、そういうところで苦しまないと、次の道が見えてこないというのは、彼を見ていたらすごく分かります」と、試合に出られずに苦しみながらも、中3日で今季2度目のフル出場をした右サイドバックが成長した過程に言及した。そして、「ただ、あのタイミングで、あの時間帯で、左足であのくらいの振りで(ゴール)マウスに持っていける選手は日本にそんなにいないと思う。そういう意味では非常にこれからが楽しみな選手」と、そのポテンシャルに大きな期待を寄せていることを明かした。
連敗を2で止められたことはもちろん、そのゴールを決めたのが福田だったというのも、京都にとっては大きいだろう。今季初めてJ1で首位に立つなど、前半戦を盛り上げている京都は、怪我人を多く出しながらも、しっかりと選手層を厚くしてピンチをチャンスに変えている。