なでしこ守備戦術を覆す行動…「彼女ならしても良かった」 代表OG提言、求めた強引な発信【見解】

長谷川唯が見せたパフォーマンスへ見解【写真:早草紀子】
長谷川唯が見せたパフォーマンスへ見解【写真:早草紀子】

【専門家の目|岩清水梓】MF長谷川唯が見せたパフォーマンスへ見解

 なでしこジャパン(日本女子代表)は現地時間8月3日にパリ五輪の準々決勝でアメリカ代表と対戦し0-1で敗戦。これにより大会から姿を消した。今大会なでしこジャパンの戦いぶりをFOOTBALL ZONEで解説する元代表DF岩清水梓は、常に対戦相手から警戒され厳しいマークを受けたMF長谷川唯について「名前が世界に売れたら必然だと思う」として、「これから自分が背負うんだという気持ちを出して、それをみんなに伝染させてほしい」という期待も話した。(取材・構成=轡田哲朗)

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 日本はアメリカに対して5-2-3、あるいは5-4-1とブロックを作って守備から入った。アメリカにボールを持たせてのカウンターを狙うような形だったが、互いに大きなチャンスを作れないまま試合は延長戦へ。そして延長前半の終了間際にFWトリニティ・ロッドマンに決勝ゴールを奪われてしまった。

 今大会を通じて、期待が大きかったものの攻撃面の良さを出す機会が限られてしまったのが長谷川だった。ダブルボランチの一角でプレーするなかで、相手から厳しく寄せられる場面もあった。日テレ・東京ヴェルディベレーザ時代のチームメイトだった岩清水は「せっかくボールを奪ったあとも、(長谷川)唯のところを2人で狙われて、奪われる回数も多かった。奪ったあとに何とか味方につなぐのが任務だったのかなと思うと、それに関して不足したところはあると思う。それは本来のプレーではないのかもしれないけど、そこをかわして味方につないでゲームを落ち着かせてほしかった」と話した。

 ベレーザから海外移籍した長谷川はイタリア、イングランドで活躍し、現在は名門マンチェスター・シティで中心選手としてプレーする。それだけに「名前が世界に売れるとそうなる(厳しいマークを受ける)のは必然だと思う。それでもなお、そこを掻い潜れるのがスペインのアイタナ・ボンマティ選手とか。名前が世界中に売れてプレッシャーを掛けられても奪われない実力がある。(長谷川にも)そこまでいってほしい」と期待を込めた。

「彼女が日本代表という責任を背負えれば、もっと強くなっていくと思う」

 今大会は苦しい戦いが多くなったが、今後のチームでも長谷川は絶対的な中心になると見込まれる。岩清水は「彼女が輝くのは、日本がボールを持っている時。それを奪いに来られてもかわせるのが良さ」と話す。それだけに「間違いなく影響力があるし、サッカーへの理解力も高い。だからこそアメリカ戦でも、『もっと奪いにいこう』と発信しても良かったと思う。『自分はボールを持ちたい、奪いにいこう』と。自分が背負うんだという気持ちを前面に出してみんなに伝染させ、積極的なプレーをしてほしい。なおかつ彼女が日本代表という責任を背負えれば、もっと強くなっていくと思う」と話す。

 特にアメリカ戦は守備的な戦術だっただけに「フラストレーションはあったと思う」と気遣ったが、「その考えを彼女なら発信しても良かったと思う。(田中)美南と仲がいいなら、もっと前から行かせて自分も付いていく、うしろが来ないなら『もっと付いてきて』とするとか。ピッチ上で指揮官となりタクトを振って、彼女が走ってとやっても良かったのではないか、多少の自分勝手さがあってもいい方向に転んだのではないかと、終わってみれば思う」と、誰もが一目を置く存在だからこそチームを引っ張っていく姿を期待した面もあったとした。

 女子サッカーで次の主要国際大会は2027年の女子ワールドカップ(W杯)になる。そのサイクルで中心選手になることが確実な長谷川だが、よりチームの中心として周りを動かしていくような姿に岩清水は期待を込めていた。

[PROFILE]
岩清水梓(いわしみず・あずさ)/1986生まれ、岩手県出身。2001年に日テレ・ベレーザ(現日テレ・東京ヴェルディベレーザ)でリーグ戦デビュー。なでしこジャパンには06年に初選出され、女子W杯メンバーに3度、五輪メンバーには2度選ばれ、11年W杯の優勝を経験した。20年3月に第一子を出産し、“ママさん戦士”として現役を続ける。

(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)



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