今季の日本人ブンデスリーガーを評価 「日本代表で期待できそう」なアタッカーは?【前園真聖コラム】
日本人ブンデスリーガーの今季を「A+」、「A」、「B」にランク分け
ドイツ1部ブンデスリーガは5月18日に最終節を迎えた。残すのは今週末から始まる昇格プレーオフのみ。今シーズンも多くの日本人選手がプレーしたなかで、悲喜こもごものドラマが生まれている。今季のブンデスリーガでの日本人選手の活躍を、元日本代表MF前園真聖氏に評価してもらった。(取材・構成=森雅史)
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ヨーロッパのリーグも次々にレギュラーシーズンが終わりました。そのなかで特に僕がよく見ていたドイツのブンデスリーガでは、なんと言ってもレバークーゼンが優勝を飾ったことが一番の話題です。
バイエルンの12連覇を阻止しただけではなく、無敗で2位と勝ち点17の差を付けた圧勝でした。さらに、最終節ではそのバイエルンをかわしてシュツットガルトが2位に滑り込みました。
シュツットガルトは2021-22シーズン、2022-23シーズンと残留争いに巻き込まれました。ですが今季は補強も上手くいき、さらにこれまでの選手も成長して見事チャンピオンズリーグ(CL)の出場権を獲得しています。
このブンデスリーガでプレーする日本人選手について、今季の活躍ぶりを、「A+」、「A」、「B」のランク分けしておきます。なお、なかなか見る機会がなかった選手については「評価なし」としました。
【Bランク】
■板倉滉(ボルシアMG/DF/リーグ戦20試合3得点)
2023年10月下旬、左足首を手術するまでは非常に順調でした。ですが、手術のあとはなかなかコンディションが上がらず、さらにチームとしても調子が悪かったので、本来の力を示せないまま終わっています。板倉のパフォーマンスが悪かったと言うよりも、チームそのものの出来が足を引っ張ったという感じです。
浅野は昇格プレーオフ次第でさらに評価アップへ
【Aランク】
■堂安律(フライブルク/MF/リーグ戦30試合7得点)
アジアカップでチームを離れていた時期を除き、ほぼすべての試合に絡むなど監督からの信頼感を獲得して活躍を見せました。特に2月以降は尻上がりに調子を上げリーグ戦14試合で6点を挙げるなど、素晴らしい結果も残しています。ただ、チームが上手く機能していなかったため、プレーしていて難しさはあったでしょう。
■浅野拓磨(ボーフム/FW/リーグ戦29試合6得点)
チームが上昇することなく、ずっと守備的な戦いを強いられていて、浅野の良さはなかなか出せませんでした。ですが、そのなかで少ないチャンスをモノにする集中力を見せています。特にそれが現れたのが2月のバイエルン戦。先制点を奪われたものの、38分の浅野のゴールでまず同点。その後ボーフムはさらに2点を奪ってバイエルンの反撃を1点に抑え、3-2で勝利を挙げることができました。この一戦だけでも実力を証明できたと言えるでしょう。ただし、昇格プレーオフが待っています。そこで活躍できれば評価はさらに上がるでしょう。
■田中碧(デュッセルドルフ[2部]/MF/リーグ戦30試合7得点)
2021年にデュッセルドルフに移籍したあと、チームやドイツサッカーに馴染むまでに時間がかかりました。ですが、2023年の右膝の負傷が癒えた今シーズンはやっと実力を発揮し、チームを引っ張り、試合を決める力を見せました。ブンデスリーガ2部で3位になり、ボーフムとのプレーオフに昇格を懸けることになりましたが、今季の活躍ぶりを見れば田中に関してはその結果と関係なく、ほかの1部のチームに移籍する可能性があると思います。
■長谷部誠(フランクフルト/MF/リーグ戦8試合0得点)
40歳になった今シーズンは、さすがにあまり出番はありませんでした。ですが、出場した試合ではいろいろなタスクをこなすというクレバーさに衰えがないところを見せました。2008年にブンデスリーガ入りしたあと、17シーズンもブンデスリーガ1部でプレーし続け、クラブ、チーム、ファンから厚い信頼を獲得したのは、プレーだけではなく人間性の素晴らしさも大いに関係していたと思います。いつかブンデスリーガの監督として指揮してほしいと願っています。
伊藤はシュツットガルトの2位躍進に貢献
【A+ランク】
■伊藤洋輝(シュツットガルト/DF/26試合0得点)
今季、チーム躍進の原動力の1人になりました。伊藤の成長なくして、過去2シーズン残留争いをしていたチームが2位になることはなかったでしょう。3バック・4バックのどちらでも最終ラインを支えただけではなく、中盤に上がってパスを受け、組み立てる役割もこなすというプレーの幅の広さを見せています。ただ問題は日本代表に招集された時、まだその実力を発揮できていないこと。今後の代表でのプレーぶりに期待です。
■町野修斗(ホルシュタイン・キール[2部]/FW/31試合5得点)
正直に言えば、今季が始まる前にホルシュタイン・キールが昇格すると予想していた人はいなかったのではないかと思います。1963年のブンデスリーガ発足以来、下部リーグ、3部、2部と一度もトップリーグを経験していなかったクラブが、念願の昇格を決めたのはFWあるいはセカンドストライカーとして貢献した町野の活躍があったからこそ。2022年のカタール・ワールドカップ(W杯)では追加招集されたものの出番がなかった町野ですが、今後の日本代表では期待できそうです。
【評価なし】
原口元気(シュツットガルト/MF)、チェイス・アンリ(シュツットガルト/DF)、佐藤恵允(ブレーメン/FW)、福田師王(ボルシアMG/FW)、アペルカンプ真大(デュッセルドルフ[2部]/MF)、内野貴史(デュッセルドルフ[2部]/DF)、奥川雅也(ハンブルガー[2部]/MF)、室屋成(ハノーファー[2部]/DF)、奥抜侃志(ニュルンベルク[2部]/2部)、林大地(ニュルンベルク[2部]/FW)、伊藤達哉(マクデブルク[2部]/MF)
(前園真聖 / Maezono Masakiyo)
前園真聖
まえぞの・まさきよ/1973年生まれ、鹿児島県出身。92年に鹿児島実業高校からJリーグ・横浜フリューゲルスに入団。96年のアトランタ五輪では、ブラジルを破る「マイアミの奇跡」などをチームのキャプテンとして演出した。その後、ヴェルディ川崎(現・東京ヴェルディ)、湘南ベルマーレの国内クラブに加え、ブラジルのサントスFCとゴイアスEC、韓国の安養LGチータースと仁川ユナイテッドの海外クラブでもプレーし、2005年5月19日に現役引退を表明。セカンドキャリアでは解説者としてメディアなどで活動しながら、「ZONOサッカースクール」を主催し、普及活動を行う。09年にはラモス瑠偉監督率いるビーチサッカー日本代表に招集されて現役復帰。同年11月に開催されたUAEドバイでのワールドカップ(W杯)において、チームのベスト8に貢献した。