日本戦を控えるU-23韓国代表が五輪に懸ける訳 母国記者は「出場51:敗退49」とアジア杯予想【コラム】

U-23韓国代表チーム【写真:Getty Images】
U-23韓国代表チーム【写真:Getty Images】

韓国のホン・ジェミン記者は大会期間中にベストメンバーをキープできるかを懸念

 U-23日本代表の大岩剛監督は4月4日、パリ五輪アジア最終予選を兼ねるU-23カタールアジアカップに臨む同日本代表メンバー23人を発表した。

【PR】ABEMA de DAZN、明治安田J1リーグの試合を毎節2試合無料生中継!

 インターナショナルマッチデーには当たらないため選手の派遣義務はなく、海外クラブで活躍する選手たちは招集できなかった。そのため日本代表の常連でもある久保建英(レアル・ソシエダ)や鈴木彩艶(シント=トロイデン)、さらにU-23日本代表の中核として期待された鈴木唯人(ブレンビー)などは招集できていない。

 一方で予選は厳しく、グループリーグでは韓国、アラブ首長国連邦(UAE)、中国との対戦で2位以内に入らなければならず、突破したとしても中東の国との戦いが待ち構える中、3位以内に入れば自動出場、4位になればギニアとの大陸間プレーオフを行う。

 同組で最大のライバルと目される韓国はこの予選にどう臨んでくるのか。英サッカー専門誌「Four Four Two」韓国語版の編集長を務めたこともあるホン・ジェミン記者は韓国の本気度合いをこう語る。

「ご存知のように、韓国サッカー界ではオリンピックとアジア大会の優先順位が非常に高いのです。U-23韓国代表チームは、韓国人選手が所属するヨーロッパのクラブを訪問し、招集問題について話をしました。幸い、多くのクラブがU-23アジアカップでのプレーを許可してくれました。U-23韓国代表チームには、プレーメーカーのペ・ジュノ(ストーク・シティ)、センターバックでブレンフォードBチームでプレーしているキム・ジス、そしてKリーグの各クラブの先発を務めている選手たちなど、質の高いプレーヤーがいます」

 だが、気になる点はある。

「能力の高い選手はいますが、しかし、黄善洪(ファン・ソンホン)監督が言ったように、クラブはいつでも考えを変えることができます。例えば、今年3月のU-23西アジア選手権に参加していた時、ペ・ジュンホはストーク・シティから呼び戻されました。ファン・ソンホン監督は、今回のU-23アジアカップが終わるまでベストメンバーをキープしたいと願っているのですが……」

ホン・ジェミン記者【写真:本人提供】
ホン・ジェミン記者【写真:本人提供】

グループリーグで何位になるかも重要

 実際、さっそくメンバーは変更を余儀なくされた。韓国サッカー協会は4月5日、セルティックがヤン・ヒョンジュンの派遣を拒否したため、代わりにホン・シフ(仁川)を招集したと発表している。日韓ともにU-23の選手も多くヨーロッパに渡っており、その影響が出ていると言えるだろう。

 ホン・ジェミン記者もグループリーグがタフな戦いになると思っている。日本に対しても、「2022年U-23ウズベキスタンアジアカップでは0-3で日本に負けています」と警戒を怠っていない。だが、それよりも心配しているのはグループリーグで何位になるかということだ。

「もしU-23韓国代表がグループBで2位になった場合、非常に厳しいトーナメントになることでしょう。その場合、グループBの2位は準々決勝でグループAの1位、おそらくU-23カタール代表と対戦することになります。カタールは開催国であり、U-23韓国代表は2023年11月、ホームで0-2と敗れているのです」

 もしもグループで1位になったらグループAの2位と対戦する。だが、それでも安心できない。U-23カタールがグループAの2位になる可能性もあるだろう。グループAにはほかにU-23オーストラリア、U-23ヨルダン、U-23インドネシアがいるのだ。年代が違うとは言え、ヨルダンは今年のアジアカップで2位になったことも忘れてはならない。

 それでも、ホン・ジェミン記者は「私の予想は、出場51:敗退49でオリンピック出場です」とギリギリの戦いを予想しながらも自信を見せた。そして、「もし出場を決めることができたら、ファン・ソンホン監督は韓国代表チームの監督として非常に有利になります」と、現在は暫定で務めている韓国代表監督に正式就任する可能性もあるという。

 ただし、「もし失敗すれば、監督としてのファン・ソンホンは終わりでしょう」と厳しい目があることも指摘した。そして「彼(ファン・ソンホン監督)は誰よりもオリンピックに行きたいはずです」と、韓国の意気込みの源流がそこにあるとも分析している。一見、自信があるように見えるU-23韓国代表も、大きなプレッシャーがかかるなかでの戦いなのだ。

(森雅史 / Masafumi Mori)



page 1/1

森 雅史

もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング