ボルシアMG板倉滉の苦悩「じゃあどうすんの?」 ファンからブーイング…味方へのもどかしさ【現地発コラム】

ボルシアMGでプレーする板倉滉【写真:Getty Images】
ボルシアMGでプレーする板倉滉【写真:Getty Images】

フライブルク戦で見せた果敢なドリブル「何か変えたいなって見ながらやっていた」

 ブンデスリーガ第27節終了時で13位に沈んでいるボルシアMG。日本代表DF板倉滉はどうにかチームを立て直そうと奮闘しているが、なかなか上手く自分たちのリズムを作り出せないのが苦しいところだろう。

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 0-3で敗れた第27節のフライブルク戦では、現状打破を狙ってうしろからドリブルでボールを持ち運ぼうとするシーンもあった。そこには1つのプレーでどうにかするだけではなく、そうしたプレーをきっかけにチームが少しでも前向きにプレーできるようにという板倉の思いもあった。

「3-0というビハインドがあったからっていうのもありますけど、ただ1つ何か変えたいなって思いをうしろから見ながらやっていた。ドリブルで最後まで行けるわけじゃないんで難しいけど、局面をああやって一個打開できるところはしていかないといけないなというのは感じた」

 ドイツカップ準々決勝で3部リーグのザールブリュッケンに敗れたショックは少なからずまだ尾を引いている。辛抱強くサポートしたいとファンも思っているが、リアクションが感じられないとさすがに納得でもできない。フライブルク戦では後半途中からファンのブーイングが増えていく。

「これだけ勝てていないし、こういうスタジアムの雰囲気になると、ちょっとポジショニングを取るのが遅くなったり、ちょっとボールを受けるのを怖がって、1歩タイミング早く来れるところを来ないとか、そういうのはやっていて感じる」

 なんとかしたい思いがないわけではない。だが頭と身体がかみ合わずに時間だけが過ぎてしまうことがある。板倉も仲間の様子をそのように観察していた。だからこそ、少しずつでも前向きになれるプレーを示すことが大切だった。

「前への選択というのが全然できていなかったから、もうちょっと前に前にいかないとなという思いを持ってやってましたね。調子いい時だったらみんないっぱい動いて、顔を出してくれたり、どんどんボールを呼び込んでくれるのが、こういう状況になるとなかなか難しくなってくるというのは、しょうがない現象ではあるとは思うから。『じゃあどうすんの?』というところをもっとやっていったほうがいいかなと思いますね」

味方がチャンスにつなげれば…板倉の「隠れたファインプレー」と呼ばれるアクション

 チームとしてのバランスが崩れたなかでプレーするのは簡単ではない。全体的にマンツーマンで付き、そのままワンツーパスではがされるシーンが多いのは気がかりな部分だ。板倉にしても相手に引き寄せられてスペースを空けてしまったり、1対1で寄せ切れない場面が見られた。それでも要所では鋭い寄せでボールをカットし、的確なブロックでシュートを阻止した。

 攻撃でも前述のドリブルチャレンジのほかに、前半23分にはこぼれ球を拾ったあとに短いドリブルからのシュートは惜しいチャンスとなったし、終了間際の後半43分にはコーナーキックから高い打点でのヘディングシュートを枠内に飛ばしている。

 こんなプレーもあった。後半27分、相手からのロングボールをダイレクトでボランチへ丁寧なパスを送った。結果としてそこからの攻撃につながらなかったので目立ったプレーにはならなかったが、味方選手がそこから攻撃をスピードアップしてチャンスにつながっていたら、隠れたファインプレーと呼ばれるアクションだった。

「前半はチャンスもいっぱいあったと思うし、そういうところで決め切れていればなと思いつつ。ただ、こういう結果になったし、ああいうスタジアムの雰囲気になっちゃうのは、今までの流れがそのままあるから。気にせずやり続けるしかない」

 試合後に語っていた板倉の言葉にあるように、チームとして1つ1つやるべきことに全力で取り組んでいくことで、勝利へと結び付けていきたいところだ。

中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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