鄭大世氏、日本戦後に明かした北朝鮮代表への思い「裏切り者になった」「死ぬほど後悔」

日本代表と北朝鮮の一戦で解説を務めた鄭大世氏【写真:Getty Images】
日本代表と北朝鮮の一戦で解説を務めた鄭大世氏【写真:Getty Images】

3月21日の日本対北朝鮮戦を解説

 北中米ワールドカップ(W杯)アジア2次予選を戦う日本代表の北朝鮮戦を、“複雑な心境”で見守っていた人物が改めて自分の思いをSNSで吐露。元北朝鮮代表FW鄭大世氏が涙のワケを語った。

 鄭大世氏は3月21日の国立競技場開催の一戦を「日本テレビ」の解説者として観戦。日本とも関りが深い立場の苦労など、コメントで試合をさらに引き立てさせ「中立な解説でとても聞きやすかった」「両方にリスペクト持った解説でやっぱり鄭大世さん最高」とファンから好評だった。

 試合後には「全体的にマジで面白かったです」と自身の公式X(旧ツイッター)上で試合を総括した鄭大世氏だが、22日に再びXを更新。「まだ思いが熱いうちに。心を書き綴る」と、現役時代の苦労や後悔も踏まえ、涙を流したことを明かした。

 韓国籍の父と、朝鮮籍の母を持つ鄭大世氏は日本の川崎フロンターレで2006年にデビュー。ドイツのボーフム、FCケルンと欧州でプレーしたのち、水原三星ブルーウィングス(韓国)、清水エスパルス、アルビレックス新潟、FC町田ゼルビアと渡り歩き、2022年シーズン限りで現役を引退した。

 鄭大世氏は07年より北朝鮮代表に選出され、33試合15得点の輝かしい成績を記録している。しかし2013年、水原三星へ移籍する際に韓国のパスポートを取得したため、事実上で北朝鮮代表の活動を引退することになった。

「2013年に韓国のパスポートを取得し事実上の北朝鮮代表を引退。代表引退当時は北朝鮮代表は弱いし報酬ももらえない。ユニフォームもカッコ悪い。環境も劣悪だし代表選手としての価値に意味はない。と自分に言いきかせて韓国へ渡った」

 この選択を当時「大正解だと思った」と振り返るが、24年3月21日の日本対北朝鮮の試合で解説を務め、さまざまな思いが巡ったという。

「韓国籍の自分は北朝鮮代表になるために針の穴を通すような作業、過程を経て多くの関係者に大変世話になった。しかし2013年に韓国パスポートを取得。この時は誰にも相談しなかった。ひとりで決めた。もちろんのこと北朝鮮代表幹部にまで衝撃を与え、いわゆる『裏切り者』になったと思う。選手は契約のたび、特に移籍の際は究極の選択に迫られる」

 こうした背景も踏まえ「当時は水の流れのように気ままに流されるだけで周囲に義理や礼節を尊重した行動、態度を取れなかったことを今、死ぬほど後悔している」と吐露。代表引退から12年、解説で訪れた日本戦で見た北朝鮮の「かっこよさ」に感動し「帰りのタクシーの中で自然と嗚咽が止まらなかった。泣きじゃくった。運転手に気付かれないように泣いた。涙が止まらなかった」と実感した思いを綴っている。

「今回のワールドカップ予選は自分に本当に多くのことを気付かせてくれた(一部抜粋)」

 さまざまな国を経験してきた鄭大世氏の投稿は、公開から1日で1万2000以上の「いいね」、1600ものリポスト(旧引用リツイート)で反響が広がっていた。

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