中国18歳が日本でトライアウト挑戦 サッカー環境、レベル、文化に何を感じた?【インタビュー】
【中国サッカー考察】日本へのサッカー留学、クラブ入りを目指す選手が増加
日本のサッカーファンのみなさま、こんにちは。久保田嶺です。先日、中国の18歳のサッカー選手が日本へトライアウトを受けに来ました。日本サッカーの成功と中国サッカーの失敗から、「日本のクラブに入りたい」「日本へサッカー留学したい」という中国人選手は年々増えています。今回の受け入れ先は関西サッカーリーグ2部のおこしやす京都AC、選手は中学時代から中国のサッカー学校に通い、昨年は中国2部済南興洲サッカークラブのサテライトチームで活躍していたアルタイ選手です。私も同行しましたので、彼が肌で感じた日中サッカーの違いなどを訊きました。
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「豚肉が食べられないので、日本のラーメンはダメです。すみません」
アルタイ選手は中国でも最西端の新疆ウイグル自治区の出身で、また宗教上の理由から豚肉を食べないカザフ族です。このトライアル期間中、京都で一緒にお寿司やそば、うどんなど日本の美食を楽しみましたが、私の大好物でもある日本のラーメンだけはどれも豚肉が乗っており、一緒に楽しむことはできませんでした。
「僕の街には日本のお寿司やうどんのお店はありません。僕は中学生の時から河北省にサッカー留学へ行ったのですが、その時に初めて街で日本食を見ました。僕もうどんやそばを食べれば、伊東純也選手(スタッド・ランス)や遠藤航選手(リバプール)のようになれるでしょうか」
元々アルタイ選手は日本へ強い興味があったわけではなく、近年の日本サッカーの発展から行きたい気持ちが抑えられなくなり、昨年彼のマネージャーである兄を通じて弊社(日中スポーツに関する広告や選手/指導者のマネージメントを手掛ける「Rouse Shanghai Co.,Ltd.」)へ連絡、そこから今回のトライアルが実現しました。彼のプレースタイルは中盤でテクニックを生かしてチャンスを作るもので、その理由からもスペインか日本が良いだろうと周りから推薦されたようです。
「僕の周りにも日本へ行きたい選手は数多くいます。その理由はレベルが高いこと、サッカー文化が成熟していること、安くて近いこと。そのほかにも、今中国ではチームの解散が数多くあります。僕の過去所属したチームも今はすべて解散してしまっています。それに嫌気がさしている選手が多く、日本の安定しているクラブでチャンスを掴みたいとみんな思っています」
6部相当の環境、選手レベルに驚き
「日本の6部相当のチームでこの環境、選手のレベルなのですね。中国では考えられないです」
結果的に、今回のアルタイ選手のトライアルは不合格。要所要所でいいプレーはありましたが、全体的にチームのプレッシャーについていくのが難しく、悔しさはあるものの彼も納得の結果でした。
「まず中国では6部のチームがこのように毎日練習があり、クラブスポンサーがいて、そしてこのレベルでというのは考えられません。僕個人的に今回参加させてもらったおこしやす京都ACは、中国では2部レベルだと思います。
中国との違いで言うと、技術的な部分ではプレッシャーや切り替えの速さ。しかし、これは僕自身の問題だと思います。それ以上に衝撃だったのは、週末に数多くのレベルの拮抗した試合を組めること、そして選手のモチベーションの高さです。6部なのに、と言うと失礼かもしれませんが、全選手のモチベーションが高く、まさに僕が求めていた環境でした。これは中国と差があるなと思います。必ずいつか日本でプレーできるように今後も頑張りたいです。この環境にいれば必ず成長できます」
今回はこのように残念な結果となりましたが、私も近くで見ており感じたことがあります。それは彼のように日本へトライアルや留学に来る中国人サッカー選手は今後も増え続けるだろう、ということです。
たとえ合格できなくとも、サッカー先進国である日本を肌で感じることができ、また費用面ではヨーロッパに行くより安価、そして日本には中国人が数多くおり生活面での情報などいくらでも手に入り、安心です。
日本サッカーとしてはこの需要を上手く取り込み、クラブやリーグの発展、強化につなげていけるチャンスだとも思いました。日本の化粧品や家電が中国でも簡単に買える時代になり、爆買いがなくなったとニュースで見ますが、今後爆買いがあるのは日本サッカーかもしれません。
(久保田嶺 / Rei Kubota)
久保田嶺
1991年生まれ、埼玉県出身。「Rouse Shanghai Co.,Ltd.」代表。日系企業の中国インバウンド事業やマーケティング、中国サッカー選手/指導者のマネージメントを手掛ける。自身の中国SNSフォロワー数も40万人と中国サッカー界で一番有名な日本人としても活躍。日本へ中国サッカー情報を発信する。