アジア杯敗退は「自分の責任」 板倉滉の無念と覚悟「僕らの世代がここから引っ張っていく」【現地発コラム】

板倉滉がアジア杯ベスト8について言及【写真:Getty Images】
板倉滉がアジア杯ベスト8について言及【写真:Getty Images】

アジア杯後、「頭の中は完全に整理されたのでしょうか?」の質問に板倉が回答

 2月3日、日本代表はイラン代表の前に屈し、アジアカップをイメージしていた以上に早く去らなければならなかった。ドイツのサッカー専門誌「キッカー」では、「優勝候補だった日本がベスト8で敗退。イランが大きなサプライズを起こした」という見出しで記事を展開。代表選手はそれぞれに思いを抱いて所属クラブへと戻ったことだろう。

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 日本代表DF板倉滉はボルシアMGへと戻り、また新たな戦いに身を投じている。第24節マインツ戦(1-1)のあとに「アジアカップから戻ってしばらく経ちましたが、頭の中は完全に整理されたのでしょうか?」という質問に対して、板倉はすぐはっきりとした声で答えた。

「そうですね、切り替えはもうすぐできました。もうね、やるしかない。考えていても、次がすぐ来るんで。すぐ切り替えて、チームのほうにアダプトできてるかなっていうのあります。直後は、もうやっぱり自分の責任という思いが強かったので。悔しかったですけど、落ち込んだっていうよりは、考えることがありました。でも、ここからだと思うし、より一層強くならないといけないって素直に感じた。次は日本代表を救える立場になれるようにね、まずはこのチームでやってかないといけない。そういった意味では、スムーズに切り替えてチームでできているかなっていうのはありますね」

 試合後にはさまざまなことが脳裏をよぎったことだろう。いくつもの「なぜ?」と向き合わなければならなかったことだろう。切り替えろと言われて、すぐに心をリセットできるものではない。だが、自分を見つめ、これまでに思いを馳せ、そして未来を考えた時に、「もっと強くなりたい」という力を自分の中に見つけたのだろう。

 板倉はいつも報道陣と丁寧にやり取りをしてくれる。どんな時でも嫌がらずに、自分の言葉で語る。負けたあとでも可能な限り冷静に言葉を探し出す。そして矢印は自分へと向けられる。だからその言葉の奥にはいつも、自分への信頼ともっといい選手になりたいという渇望が感じられるのだ。将来を見据えて、もっと自分は成長できる、もっと頼りになる選手になれるという思いが、板倉の成長を支えているのではないだろうか。

今取り組むべきことに集中「ああいう経験があって良かったって数年後に言えるように」

 期限付き移籍でシャルケにいた頃、こんな話をしてくれたことがあった。あれは昇格を決め、最終節ニュルンベルク戦後に2部優勝も確定した時だった。日本代表での自分の立ち位置について話題が移った時に、覚悟とともに「僕たちの世代が活躍していかないといけないと思っている」と語った。

「日本代表で試合に出て、日本を引っ張っていく存在にならないと、と思っています。そういう気持ちにもさせられた1年でした。目の前の試合をやることによって代表につながっていくと思うので、そこはブラさず、これからもやっていきたいと思います。ただ僕らの世代がここから引っ張っていく存在にならないといけないという強い気持ちは持っています」

 その思いは今も変わらず、さまざまな経験を積み重ねることでさらに輪郭がくっきりしてきているはずだ。より具体的で、明確なビジョンを抱き、自分がやるべきことに取り組んでいく。

「ああいう経験があって良かったって数年後に言えるようにね、今に取り組まなきゃいけない」

 強い覚悟とともにより高いステージへ。板倉の挑戦は続いていく。

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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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