久保建英は「人間であり機械ではない」 スペイン人記者が状態懸念「これはとんでもない数だ!」【現地発コラム】

マジョルカ戦に出場した久保建英【写真:Getty Images】
マジョルカ戦に出場した久保建英【写真:Getty Images】

国王杯準決勝第2戦マジョルカ戦、アジアカップ後6試合連続で先発出場した久保

 決勝進出を懸けた国王杯準決勝第2戦。古巣マジョルカとの一戦に久保建英は先発出場するも、PK戦までもつれ込んだ末、レアル・ソシエダの敗退が決定した。

 プロキャリア初タイトルを目指した久保だったが、この大一番に臨むためのコンディションとしては全くいい状態とは言えなかった。

 アジアカップを準々決勝敗退という不本意な結果で終えたあと、替えの効かない戦力としてすぐさまチームに合流した。そのまま公式戦5試合連続でフル出場するも、怪我人続出と決定力不足という大きな問題を抱えるチームのパフォーマンスの悪さも手伝い、その成績は1勝1分3敗。唯一結果が伴ったのは、8試合ぶりに得点を挙げた久保が今季8回目のマッチMVPに輝いた、ラ・リーガのマジョルカ戦(2-1)のみだった。

 ソシエダ自体も昨年末から調子を崩し、国王杯は準決勝に辿り着いたが、ラ・リーガは7位まで後退している。さらに、昨年11月26日のセビージャ戦を最後に、ホームでの公式戦に6試合連続で勝てていない状態だった。

 このように、個人、チームともに良い状態とは言えず、さらに負傷者5人を抱えながら、4季ぶりの決勝進出を目指す戦いに臨むこととなった。しかし3大会を並行して戦い、すべての試合が重要なイマノル・アルグアシル監督に主力選手を休ませる余裕はない。3日前のビジャレアル戦からの変更はわずか2人のみ。久保はアジアカップ後、6試合連続で先発し、再び4-3-3の右ウイングでプレーした。

 対するマジョルカもラ・リーガでわずか4勝しか挙げられておらず、降格圏手前の16位と苦戦を強いられている。さらにソシエダとのアウェーゲームを大の苦手とし、2003-04シーズンの勝利以降、公式戦12連敗中だった。

 クラブに2回目の国王杯優勝をもたらせたいアギーレ監督は、今季3度の対戦で一度も勝てていない相手との一戦に万全の状態で臨むため、3日前のアラベス戦から9人を入れ替える大幅なローテーションを実施し、先発メンバーをリフレッシュした。

スタジアム併設のオフィシャルショップで売られていたマジョルカ戦のマフラー【写真:高橋智行】
スタジアム併設のオフィシャルショップで売られていたマジョルカ戦のマフラー【写真:高橋智行】

久保がチャンスメイク、交代で大きな拍手 潰えた“プロキャリア初”の夢

 雨の降るスリッピーなピッチコンディションのなか、試合は満員の観衆に後押しされたホームチームがボールをキープし、マジョルカが守備を固めて虎視眈々とカウンターを狙うという、いつもどおりの展開で進んでいく。

 久保はマジョルカの5バックに手を焼きながらも、右サイドでチャンスメイクを試み、前半45分にクロスを入れて、ハンドのPKを獲得したマルティン・スビメンディにパスを供給。しかしキッカーのブライス・メンデスが失敗し、先制点とはならなかった。

 後半、ジョバンニ・ゴンサレスの得点で劣勢の状況になるなか、久保は同9分にペナルティーエリア外からこの日唯一のシュートを放つがDFにブロックされる。その後はクロスを次々と入れていき、同26分に同点弾を記録したミケル・オヤルサバルにスルーパスを出したブライス・メンデスとの壁パスで、得点に間接的に関与した。

 同点後、拮抗状態となり、2試合合計スコアが1-1だったため延長戦に突入。久保は疲労の色が濃くなるなか、前半開始早々に右足を蹴られて痛みを感じていたがプレーを続行。延長前半5分に決定的なクロスを入れるも、ミケル・メリーノがファーポストで合わせたヘディングシュートはサムエル・コスタにゴールライン上でクリアされてしまった。その後、同14分にウマル・サディクと交代し、大きな拍手を受けながらピッチをあとにした。

 試合は延長戦でもスコアが動かずPK戦へ。ソシエダは最初のキッカーを務めたオヤルサバルが外したことで敗退が決定した(1-1/PK戦4-5)。この瞬間、久保のプロキャリア初タイトル獲得の夢が潰えることとなった──。

久保建英について語ったスペインラジオ局「カデナ・コペ」のマウリシオ・イディアケス氏【写真:高橋智行】
久保建英について語ったスペインラジオ局「カデナ・コペ」のマウリシオ・イディアケス氏【写真:高橋智行】

スペイン人記者が久保に言及「パフォーマンス低下の理由をこれ以上探るのはやめたい」

 この日の久保に対するスペイン各紙の評価は全体的に高くはなかった。クラブの地元紙「エル・ディアリオ・バスコ」は、「シーズン最初の3分の1に見せたような輝きがなく、相手を突破するのに苦戦したが、チャレンジを止めず、ザハリャンへのファーポストのクロスなどのチャンスを作り出した。また、中央突破したブライス・メンデスとの壁パスで同点ゴールにつながるプレーにも絡んだ」と寸評し、3点(最高5点)をつけた。

 もう1つの地元紙「ノティシアス・デ・ギプスコア」紙は、「トライするもほとんど運がなく、精度も欠いた。しかし決して消えることなく、ラ・レアルの大きな希望となり、メリーノに素晴らしクロスを供給した」と評し5点(最高10点)。全国紙「マルカ」紙の評価は2点(最高3点)、「AS」紙は1点(最高3点)となっている。

 マジョルカ戦後、スペインのラジオ局「カデナ・コペ」でこの試合を実況した、ソシエダの番記者を務めるマウリシオ・イディアケス氏に久保のパフォーマンスを分析してもらったが、試合数蓄積によるフィジカル面を大いに懸念していた。

「疲れ切っている久保に対して、パフォーマンス低下の理由をこれ以上探るのはやめたい。彼はこれまでずっとラ・レアルのベストプレーヤーの1人だった。今日はラ・レアルにとって、今季の公式戦40試合目だ。ラ・リーガ26試合、チャンピオンズリーグ7試合、国王杯7試合……これはとんでもない数だよ!」

「アジアカップから戻ってきたあとの久保は、以前と同じような輝きがなく、スピードも半減しているように見える。彼も人間であり機械ではないんだ。今日だって何度もトライし続けていたけど、上手くいかないこともある。さらに今日は(アンドレ)バレネチェアもいなかった。チームで最も違いを作り出せる久保とバレネチェアという2人が欠場したり、本調子でないとすると……奇跡など起こらない。怪我人が続出し、疲労困憊の今のラ・レアルは、チャンピオンズリーグで好調だった2か月前と比べると戦力は半分程度だと思っていい」

スタジアム併設のオフィシャルショップで売られていたPSG戦のマフラー【写真:高橋智行】
スタジアム併設のオフィシャルショップで売られていたPSG戦のマフラー【写真:高橋智行】

ソシエダが勝ちきれなかった2つの要因をスペイン人記者が指摘

 またイディアケス記者は、ソシエダが勝ち切れなかった大きな原因として、2つの理由を挙げている。

「0-0の時にPKを外したことが鍵となった。そしてマジョルカのベンチにはモルラネス、ダルデル、ムリキなどがいて、アギーレ監督が投入した選手たちは我々よりはるかに良かったと思う。ラ・レアルのベンチにいたのはトゥリエンテスやオラサガスティなどだ。その選手層で延長戦に突入した熱戦を制するのはとても難しいと思う」

 初タイトルを逃した久保だが、悔やんでいる暇などない。まずは、来季の欧州カップ戦出場権を獲得するためにも絶対に勝たなければならない、ラ・リーガ第27節セビージャとの非常に難しいアウェーゲームが3月2日に控えている。

 さらにその3日後、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)ラウンド16第2戦でパリ・サンジェルマン(PSG)をホームに迎える。アウェーでの初戦、マークを外してキリアン・エムバペに先制点を許し、0-2の敗戦の責任の一端を担った苦い思いを払拭しなければならない。

 おそらく今季、サン・セバスティアンで最も重要となる戦いで、久保がリベンジを果たし、チームの救世主となれるかに大きな注目が集まる。

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高橋智行

たかはし・ともゆき/茨城県出身。大学卒業後、映像関連の仕事を経て2006年にスペインへ渡り、サッカーに関する記事執筆や翻訳、スポーツ紙通信員など、スペインリーグを中心としたメディアの仕事に携わっている。

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