高校サッカー強豪校卒業→ドイツ行き逸材タレントの“今” パリ五輪出場、A代表入りに期待も「今は全然気にしてない」【コラム】

シュツットガルトのBチームで経験を積むチェイス・アンリ【写真:Getty Images】
シュツットガルトのBチームで経験を積むチェイス・アンリ【写真:Getty Images】

尚志高から独シュツットガルト入り、DFチェイス・アンリの現在地

 来春にカタールで開催されるパリ五輪予選も兼ねたU-23アジアカップで日本は、韓国、中国、UAE(アラブ首長国連邦)と同組になった。「死の組」とも言われる過酷なグループ。メンバー入りに向けて飛躍が期待されるのはDFチェイス・アンリ(シュツットガルト)だ。「FOOTBALL ZONE」ではパリ五輪世代にスポットライトを当てた特集を展開。異国で奮闘する19歳に迫る。(取材・文=林遼平)

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 日本から遠く離れたドイツ、シュツットガルトの地で日々研鑽を積む日本人選手がいる。尚志高校時代、全国高校サッカー選手権大会で大会優秀選手に選出されるほどのインパクトを残したチェイス・アンリだ。

 ポテンシャルの高さに太鼓判を押されることの多いチェイスは、高校卒業後の昨年7月にシュツットガルトに入団。日本のトップリーグを経験することなく、現在はレギオナルリーガ・ズートベスト(4部相当)を主戦場とするセカンドチームでプレーをしている。

 加入した最初のシーズンは、なかなか出場機会を得ることができなかった。これまでとは全く違う環境に慣れるのにも時間が必要だった。加えて、怪我も重なり、先発出場は5試合のみ。“経験”という意味では価値あるシーズンだったが、“結果”で見れば悔しい形でシーズンを終えることになった。

 ただ、今年の5月に行われたU-20ワールドカップ(W杯)で結果は振るわなかったものの、日本代表として3試合に出場して自信を得ると、新シーズンは3試合目からスタメンに定着。3バックの一角としてコンスタントに出場機会を得ることができている。

 昨季までとは違う環境に、チェイスも確かな歩みを感じている。

「今年のほうが試合にも出ることができているし、やはり試合に出たほうが経験もより増えていい。センターバック(CB)は試合に出ないとポジショニングや試合の流れに慣れていけないところが多いので、今年は試合にずっと出させてもらっている分、そのへんは掴んできたなと思います」

パリ五輪行きやA代表入りよりも「今はトップに上がることしか考えてない」

 ただ、チャンスを得て経験を重ねている分、自身の課題も如実に現れてきている。フィジカルやスピード面では通用するところを見せているが、ポジション取りやプレー判断といった面で遅れを取ることも。トップチームに入っていくためには、そこを改善していくことが必要だとチェイスはハッキリと口にする。

「ボールを持つところだったり、ミスをしてもそんなに気にしないメンタルみたいなものは相当強くなったと思います。ただ、今の課題はポジショニングですね。いい立ち位置を取っていないと相手にボールを触られてしまうし、カウンターを止めるためにも良いポジションにいないといけない。そこは直さなければいけないなと感じています」

 そういった課題をより明確に感じることができているのは、トップチームのトレーニングに参加する機会が増えていることも1つあるだろう。時にはブンデスリーガで得点量産中のチームのエースストライカーであるセール・ギラシと対峙することも。そこで何ができるかを示すことが重要だと強調している。

「あの人はやばい。ゴリゴリ行くように見えて、そんなことはなくて、ポジション取りなどがすごく上手いんです。(そういう選手と対峙することもあるから)そこにいられる時間を無駄にしないようにしたい。今は結構トップも成績が良くてすごくいい練習になる。失うものもないので、無駄にしないように頑張るしかないです」

 目標としてはパリ五輪やその先の日本代表といった舞台が挙げられるが、「今は全然気にしていない。トップチームに上がらないと結局のところ代表に入れないと思っている。とりあえず今はトップに上がることしか考えてないです」と言い切ったチェイス。欧州での戦いに苦闘しながらも着実に階段を上がっている男は、来年のトップチーム入りを目指して前進を続けていく。

(林 遼平 / Ryohei Hayashi)



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林 遼平

はやし・りょうへい/1987年、埼玉県生まれ。東日本大震災を機に「あとで後悔するならやりたいことはやっておこう」と、憧れだったロンドンへ語学留学。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることになった。帰国後、サッカー専門新聞『EL GOLAZO』の川崎フロンターレ、湘南ベルマーレ、東京ヴェルディ担当を歴任。現在はフリーランスとして『Number Web』や『GOAL』などに寄稿している。

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