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街中でも「浦和」の声 高額でスター“爆買い”のサウジ、クラブW杯開催で見せたポテンシャル【現地発】
国際的なサッカーイベントを招致…運営には発展途上の部分も散見
サウジアラビア開催のクラブ・ワールドカップ(W杯)は12月22日に最終日を迎え、欧州王者マンチェスター・シティ(イングランド)の優勝で幕を閉じた。10日間ほどだったが、サウジアラビアの持つポテンシャルを感じさせる大会でもあった。
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サウジアラビア・プロリーグのクラブは、昨年のカタール・ワールドカップ(W杯)を終えたあたりから大きな話題をさらった。まずはアル・ナスルが冬の移籍市場でポルトガル代表FWクリスティアーノ・ロナウドを獲得した。そして、今夏の移籍市場ではアル・ヒラルがブラジル代表FWネイマール、アル・イテハドが元フランス代表FWカリム・ベンゼマや同代表MFエンゴロ・カンテ、ブラジル代表MFファビーニョを獲得。「サウジアラビアのクラブが超高額年俸で世界的な有力選手にオファー」というテンプレートは、世界中で多くのニュースになった。
その理由の一端に、サウジアラビアがW杯の招致を目指していたこと。そして、実際に2034年の開催が事実上、決定したことがあるだろう。アジア王者を決める大会として再編されるAFCチャンピオンズリーグエリート(ACLE)では、2024-25、25-26シーズンと連続してファイナルステージを行うことが決まっている。批判も根強いが、国際的なサッカーイベントを次々に招致しているのは紛れもない事実だ。
今大会ではさまざまなところで発展途上な部分は見られた。シティが登場した準決勝以降と以前ではセキュリティーなどの真剣味は全く違うものであり、大会スタッフがスタジアム内の場所を分かっていないことも多々あった。初開催ということもあり、日本開催やアラブ首長国連邦(UAE)で開催されていた時の慣れた感じとでも言うべきか、スムーズさは明らかに欠けていた。地元のメディアや関係者も気にしている部分があるのか、折に触れて外国人記者やチームに「この大会の運営をどう思うか、施設をどう思うか」という質問をしていた。
カンテも「現地の人たちが浦和のファンは本当に凄いと話してくる」と証言
そのあたりは、サウジアラビアが一部外国人に向けた観光客へのVISA発給を解禁してからまだ4年ほどだというのも理由にあるのかもしれない。紅海沿岸の都市ジッダで開催された大会だったが、メイン会場になったスタジアム周辺は荒涼とした空き地のような状態で、スタジアムだけが綺麗にライトアップされて大きく存在感を放っている。ただし、建設途中になっている建物が周辺を囲んでいたのも事実であり、それらが完成すると一気に印象は変わりそうだ。おそらく、34年W杯までにはスタジアムを中心にした大きな区画になるのだろう。
一方で、市内を公共交通機関で移動するのが難しくタクシー移動がメインになったが、とにかくどのドライバーもサッカーが好きなことに恐れ入った。17年、19年、22年と浦和レッズがACL決勝でアル・ヒラルと対戦していることもあってサウジアラビアでは知名度が高い。「どこから来たんだ、浦和か(実際にはオラワに聞こえる)」と話しかけられることが多かった。そして、例外なく自分はアル・ヒラルなり、地元ジッダのクラブであるアル・イテハドを応援していると言うなり、サッカーの話をしてくる。滞在中に「自分はサッカーに興味がない」と言ってくるドライバーはいなかった。
街中や空港でも「オラワ、オラワ」と話しかけてくるのは不思議な感覚だったが、浦和のFWホセ・カンテも「特に現地で、外でコーヒーを飲みに行っても、現地の人たちが浦和のファンは本当に凄いよねという話をしてきます」と話していた。この環境は日本ではなかなか体験できないかもしれない。インフラやホスピタリティーなど解決すべき問題が多かったとしても、サッカーの大きな国際イベントを招致するにあたってベースとなる国民のサッカー人気の高さはサウジアラビアのポテンシャルを示していそうだ。
国策レベルで国内リーグにスターを集めての強化を図っているサウジアラビアだが、10年強で迎えるW杯の時にどんな姿になっているのか楽しみだ。
(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)